fromz-vol32
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18さて、イノベーションとウェルビーイングの関係についてはいろいろな研究が行われています。ハーバードビジネスレビュー「幸福の戦略」(3)には、幸福度の高い人はそうでない人に比べて創造性が3倍高い、という研究結果が報告されています。幸せだとアイデアが3倍ひらめき、新規事業を考える力も特許を書く力も改善提案をする力も3倍高い、と言えるかもしれないのです。まさに、ウェルビーイングとイノベーションは関係していることを表しています。また、私は因子分析という統計解析手法を用いて、幸せな人の特徴を表す「幸せの4つの因子」を導き出しました。「やってみよう因子」「ありがとう因子」「なんとかなる因子」「ありのままに因子」の4つです。すなわち、「やってみよう!」と主体的にアプローチする人、ビジョンやパーパスが明確で大きな夢・目標を持っている人は幸せ(やってみよう因子)。「ありがとう!」と感謝する人や、人間関係が良好で、思いやりや優しさのある人は幸せ(ありがとう因子)。「なんとかなる!」と前向きかつ楽観的にリスクを取ってチャレンジする人は幸せ(なんとかなる因子)。「ありのままに!」自分の個性を発揮し、人の目は気にせず独創的なことをする人は幸せ(ありのままに因子)。実は、この幸せの4つの因子は、創造性発揮の条件と似ています。まず、「やってみよう!」と主体的に挑むことは、まさに新しいことを目指す、創造性やイノベーションの条件です。次の「ありがとう因子」には、多様な仲間がいる人は幸せ、という条件が含まれています。前では、どうすればいいのでしょうか? まずは、幸せに働けばいいのです。やってみようとやる気を出し、ありがとうと多様な人とのつながりに感謝し、なんとかなるとチャレンジし、ありのままに個性的なアイデアを推進する。「幸せに働くのは嫌だ」と言う人はいないと思います。だから、に述べたように、ブレーンストーミングを行う際には、多様な仲間とともに行うことが有効です。つまり、ブレーンストーミングの条件と幸せの条件はよく似ています。3つ目の「なんとかなる因子」はリスクを取ってチャレンジすることですから、これもまた創造性発揮やイノベーションの条件と言えそうです。そして、最後の「ありのままに因子」は、人の目を気にせず独創性を発揮することですから、こちらもまさしく創造性発揮やイノベーションの条件そのものです。いかがでしょう。幸せの4つの因子は、そのままクリエイティビティやイノベーションの条件と言ってもいいのではないでしょうか。最近の我が国は失われた30年と言われ、日本全体の経済成長が鈍化しています。企業では、最近イノベーションが生まれない、新規事業が育たない、デザイン思考が定着しないといったような声をよく耳にします。同時に、日本の幸福度は先進国中最下位であるとか、国際比較をすると働きがいを感じている社員が日本は他国に比べて圧倒的に少ないとか、幸せとの相関が高い自己肯定感が日本人は低いなど、日本人の幸福度が低いということに関するデータも目白押しです。つまり、イノベーションが起きず、幸福度の低い、最近の日本。不幸せだから創造性が低いのか、創造性が低いから不幸せなのか、因果関係は調べてみないとわかりません。しかし、いずれにせよ、両者が足を引っ張りあっていることは間違いありません。まず幸せから始めればいいのだと思います。実際、武蔵野大学教授の芝哲也さんと私が共同代表をしている一般社団法人クリエイティブ思考協会では、イノベーションの講座を行なっていますが、ここでは、まず参加者のウェルビーイングを整えてから、イノベーションを目指しまイノベーションとウェルビーイングの関係幸せにイノベーションを起こす方法

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