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Conve rsation江草■大介株式会社図研技術本部 EL開発部部長1995年図研に入社。10年間基板設計ソフトウェアの開発に従事。その後、PDMの開発部門に異動し、環境構築・カスタム開発の部署でリーダーとして活躍。2013年よりPDMの開発部門のマネージャーとして高木とともに数多くのPDM導入プロジェクトを経験。2022年4月より現職、基板設計ソフトウェアの開発部門責任者。12たデータベースを作っておく必要はあると考えます。いざという時にスムーズに対応するためにも、製品ライフサイクルにおける環境情報を社内で管理しておき、いつでも情報を出せる準備をしておくことが重要なのです。江草 製造業が環境負荷の情報開示、またCFPやTMRのコントロールを進める上で、図研だからこそ貢献できることは何でしょうか。山末氏 先ほども申し上げたとおり、やはり「見える化」はとても重要です。製品情報に加えて、CFPやTMR、また地政学的リスクなど調達に関するリスクなどもPDMシステムで管理できるようにするといいのではないでしょうか。またCADのアプリケーションなども、それを見越した設計にしておくことが大事だと思います。高木 当社は、部品のライフサイクル情報の「見える化」に注力しており、情報の内容は設計時の部品選定に必要となる詳細スペックから、その部品が生産中止になっていないか、代替となる部品は何か、そしてその部品がどの基板に採用されているかなど多岐にわたります。これらの情報は通常の設計のみならず、BCPの観点で、震災や洪水などの自然災害や紛争などによる供給停止の際に事業を止めない情報として活用できるようになっています。実際に2011年に発生したタイ洪水の際に、迅速に対応することができたとお客様から大変感謝されたこともあります。山末氏 CFPやTMRのコントロールにおいても、電子部品レベルで製品ライフサイクルにおける環境情報を管理できる環境を持っていることは大変重要です。それに加えて現代では、ほとんどの製品にプリント基板や電子部品が入っているため、基板自体のCFPやTMRの数値化も必要になると考えます。まずはそういった値を格納できる箱をPDMに用意するだけでも十分意義があると思います。これについては図研が取り組みを始めることで、他に波及していくのではないでしょうか。図研にはその点でもぜひ、エレクトロニクス産業を牽引していっていただきたいですね。高木 図研のPDMは、電子機器設計に特化したデータベースとして、電子部品のライフサイクルに関する情報の蓄積やトレース、集計、チェックなどへ利活用できるシステムになっています。先述したように、その仕組みを利用してBCPの観点で有用だったケースもあります。しかし、環境に関しては、以前製造業でRoHS対応の必要性が叫ばれた際に、苦労した経緯があります。どこまで詳細な情報をどのような構成で登録すべきか、どう収集すべきか、どの部門が対応すべきか、どう活用すべきかという運用上の視点が必要となるからです。いま欧米の先進企業で始まっているCFPやTMRの管理に関しても、運用上の視点を考慮すると、誰もが利活用できる環境のデータベースの存在が鍵になると思います。データベースとどのように連携すれば、より設計に付加価値のある情報へと昇華できるのかを模索し提示できれば、図研の製品を環境情報管理に活用できるようになります。そうなると日本でも飛躍的に環境情報の利活用が進むのではないでしょうか。江草 データベースが充実すれば、材料属性、重量などのパラメータをもとにCFPやTMRを算出できるので、必要なデータの試算やシミュレーションをCAD上で簡単に計算して設計者に見せることも可能です。製品設計段階におけるグリーンイノベーション対応をより進める上で、今後そういう機能も求められるかもしれませんね。高木 我々もこの資源パラドックス問題や情報開示のためのデータベースという視点を、今後の製品開発やアップデートに活かしたいと思います。また製造業全体の機運の醸成のためにも、山末先生には今後も資源パラドックス問題を発信していただくとともに、多くの製造業企業が適切かつ迅速に対応できるTMRデータベースの充実もぜひ担っていただきたいと期待しています。今日はありがとうございました。環境負荷の「見える化」に寄与するデータベース構築が必要

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