fromz-vol31
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※1 MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)…磁気抵抗ランダムアクセスメモリと呼ばれ、読み書きを高速で行えます。加えて、集積度が高く、高耐久性、低消費電力、耐放射能など多くの長所を持つ不揮発性メモリ※2 圧縮技術…後工程の半導体パッケージ加工にモールド封止(樹脂封止)する際に圧縮するものがある※3 TSV(シリコン貫通電極)…高性能の垂直相互接続技術であり、1つのチップ内の貫通孔を通して、複数の積層チップ間の信号と電源の伝送に用いられる5ITRIが台湾の半導体産業を支えていると言われる理由は4つあります。1つは、ITRIには官民連携を促進する部門が存在することです。例えば、ITRIは産業界と連携してMRAM※1の研究を推進し、高速なだけでなく高効率なMRAMを開発しました。 また、海外からの資金を受け、海外の大学と共同でMRAMの研究を行い、消費電力の低減に成功しています。2つ目の理由は、ITRIは政府による資金提供を受け入れ、先端半導体パッケージング技術などの、先進的な研究により多くの技術と知的財産を蓄積していることがあげられます。我々にはソフトウェア、ハードウェアの領域で非常に多くの知的財産があり、そのノウハウを業界に還元することで台湾半導体業界全体の技術向上を図っています。3つ目は、人材供給があげられます。これは他の方はあまり触れることがありませんが、私は非常に重要なことだと考えています。ITRIで主要な技術研究に携わり実績を積んだエンジニアが独立することで、そのノウハウが還元され、産業全体を盛り上げています。業界の経営者にはITRIの出身者が数多く存在します。特許総数は30,000件以上、毎年の技術譲渡は650件を超えています。そして独立した企業は計240社あり、卒業した研究者は6,000人以上います。最後に4つ目の理由ですが、多くの産学連携アライアンスの存在です。アライアンスは産業界、学術界、研究開発機関の三者が多くの協力、技術交流を行う場を提供します。横方向の技術交流だけではなく、例えばシステム会社と部品会社間の協力のように縦方向の交流も図れるのが魅力です。ITRIでは、IC設計、マイクロLED、ディスプレイ関連のほか、化合物半導体関連など、少なくとも10を超えるアライアンスに参画して、産業界、学術界と連携しています。この中には当然、最近話題のヘテロジニアスインテグレーションやチップレットのパッケージングに関するアライアンス、自動運転車に関するアライアンスも含まれています。台湾を代表する研究機関である我々が主体的にアライアンスというエコシステムを促進することが、半導体研究開発をよりスピーディに、より多くの潜在的技術を発展させることにつながると考えています。近年、先端パッケージング技術の進歩が大変速くなっており、2.5D、3D、ファンアウト一体型パッケージといったテクノロジーをよく耳にするようになっています。設計やプロセスの複雑さが各段に増している状況で、パッケージングに関わるエンジニアが抱える課題とその解決を目的とした研究の成果についてお話しします。新しい設計手法を用いる場合、高密度化および高精度化への対応が求められるので、それに応じた圧縮技術※2とコストの課題が出てきます。TSV※3の製造が高価であることに加え、最初のうちは歩留まりが高いとは限らないためです。さらに放熱の課題もあります。チップを1つのパッケージに集積するため、熱をいかに処理するかは重要な課題となります。これらの課題に我々がど台湾半導体産業とITRI注目が集まる半導体先端パッケージ実装技術開発での課題と成果

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