1. 下記URLより(左)湿した和紙を見当に合わせる。(中)見当は版木の2ヶ所にあり、右下の隅にあるのがカギ見当、左寄りの下側にあるのが引き付け見当と呼ばれる。(右)バレンを細かく動かしながら、和紙の繊維の間に色を含ませる。輪郭線を摺ったもの。職人の早田憲康氏によれば、異なる条件のもと同じレベルの作品に仕上げなければいけないため、紙の扱いには特に気を遣うという江戸の庶民が気軽に楽しむためのフルカラー印刷物として大流行した江戸木版画(浮世絵版画)。ここで作品が出来るまでの工程を紹介しよう。絵師が描いた絵を元に、版画の原板となる「版木(はんぎ)」を作るのが彫師の仕事だ。輪郭線となる「主版(おもはん)」、色ごとの「色版」など、作品によって5~20枚ほどの版木を彫っていく。摺る上で重要となる見当もここで刻まれる。こうして出来た版木を使い、色を重ねて作品を仕上げるのが摺師である。和紙と絵の具を準備したら、水を含ませた刷毛を和紙に軽く滑らせる「湿し」を行う。これは和紙が乾燥していると色がつきにくくなるのを防ぐためだ。そしていよいよ摺りの工程へ。版木に絵の具をのせ、刷毛で広げ、絵柄がずれないよう見当に紙を置き、バレンで摺り上げる。まずは主版の輪郭線、次いで色版。色版は面積の小さな色、薄い色から順に重ねていく。作品によって、十数回から三十回程度の色を摺り重ねて作品を完成させる。グラデーションをつくる「ぼかし」、絵の具をつけずに摺り凹凸を作る「空摺(からずり)」、立体感を出す「きめ出し」など、作品によって独自の技法を駆使することも。「摺師は彫師が作った形を絵に仕上げるのが役目。版木を何度も掛け合わせて深みや遠近を出すなど、絵の中に表情をつけなければなりません。そのためには常に五感を研ぎ澄ませていることが大切。自然の素晴らしさには勝てませんので、職人には道端に咲く野の花を見るなど、四季のうつろいを感じて欲しいといつも言っています」(高橋氏)摺師は200枚を同じレベルに仕上げられて1人前だという。ただ、紙や絵の具の加減次第で、ほんのわずかに違うこともあるのだとか。「海外のお客様は何枚か見て、ぼかし加減などで気に入ったものを選ぶ方が多いです。自分と縁のあった1枚を選ぶことができて楽しいと思います」(高橋氏)浮世絵の復刻版画はもちろん、作家とのコラボ、オリジナルプロダクツの制作などさまざまな活動を続ける高橋氏に今後の展望を聞いた。「3つのプロジェクトが進行中です。ひとつは歌川広重の“東海道五十七次”。絵師を招いて日本橋から京都まで、ところどころにコンテンポラリーな作品を織り交ぜていく“コンテンポラリー東海道五十七次”を制作します。もうひとつは、伝統工芸の職人とデザイナーなどのコラボで新商品を開発する“東京手仕事”プロジェクトへの参加です。どんなデザイナーさんが江戸木版画に興味を持っていただけるか期待しています。最後は新たな絵師のプロデュースです。その方の描く絵があまりにも素晴らしく、ここ数年ずっと買い上げていました。版元として、ぜひ作品を発表したいです」(高橋氏)高橋工房東京都文京区水道2-4-19☎ 03-3814-2801 営業時間 10:00~17:00、定休日 土・日・祝・夏季・年末年始URL https://takahashi-kobo.com/応募期間:2023年12月11日(月)受付分まで。なお、プレゼントの当選は発送をもって代えさせていただきます。https://onl.bz/zSJizFu「神奈川沖浪裏」 1名様Bookshelfコーナーで紹介した本 2名様Editor's note今号の取材で一番興味を惹かれたのは、株式会社リコー様の「SDGsキーパーソン制度」です(P12参照)。SDGsは近年かなり広く浸透している言葉ですが、組織の枠を超えて自らがキーパーソンとして課題に取り組む方々が多くいらっしゃることに感銘を受けました。遠くからただ眺めるだけではなく自分事として捉え、積極的に動くことが結果につながる早道なのだろうと思います。今号の制作でも、大勢の皆さまにご協力をいただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。 【from Z編集部】『デジタル列島進化論』発行◦株式会社図研 2023年8月編集/制作◦図研 from Z 編集部〒224-8585 横浜市都筑区荏田東2-25-1TEL◦045-942-1511(代) FAX◦045-942-3245https://www.zuken.co.jp/◎ご希望の方にはfrom Zを無料でお届けいたします。図研ホームページよりお申し込みください。また、本誌に関するご意見、ご質問などもお待ちしております。◎本書内容の著作権は、執筆者の記載があるものに関しては執筆者、特にないものに関しては株式会社図研に属します。内容の全体か一部を問わず、著作権者の許可なく転載・複製することを禁じます。© 2023 Zuken inc. 誌面充実のため江戸木版画23応募方法アンケートプレゼント摺師の極意は彫った形を絵として昇華させることアンケートにご協力ください!アンケートに回答していただいた方に、抽選でプレゼントを差し上げます。ふるってご応募ください。Vol.31
元のページ ../index.html#23