アンバー組織は、統率型組織。例えて言うなら、統率の取れた厳しい軍隊のような組織です。命令は絶対。上の言うことには徹底的に従う。昔の典型的な体育会組織もこんな感じだったと言えるかもしれません。きちんと統率が取れているので、トップの判断が正しく、組織人が正確に言われた通りに動けば、目標達成のために適しています。オレンジ組織は、合理的組織です。機械のメタファー。上からの統率も大事ですが、それ以外の点も論理的に考慮して、機械的・合理的に考えましょうよ、というのがオレンジ組織です。合理的なので、組織の目的達成の最大化が可能です。それに対して、もっと人間味があったほうがいいのではないか、と考えるのがグリーン型組織です。例えるならば、家族。単に血も涙もない合理主義ではなく、人間味を加味して、信頼関係、尊重、承認、感謝、エンカレッジなどの人間らしさを加えたほうがいいのではないか。一見、合理的組織であったオレンジ組織よりも効率が落ちそうですが、そうではありません。軍隊式アンバー組織、合理的オレンジ組織、家族的なグリーン組織、自由な自立人から成るティール組織。どれがイノベーティブでしょうか。これまでの連載で述べてきたように、イノベーティブなアイデアを出すための条件とは、心理的に安全でフラットな関係性の中、皆が個性を発揮してポジティブにさまざまなアイデアを出せるような場です。議論を戦わせて他人の間違いを指摘するようなあり方よりも、傾聴し、判断を保留し、互いに尊重し合いながら皆が行動経済学や経営行動科学、ウェルビーイングの研究結果によると、幸せな社員は創造性・生産性が高く、欠勤率・離職率が低いことが知られています。つまり、グリーン組織とは、人間の心も考慮した合理的組織経営なのです。そして、ティール組織とは、自由な組織。例えるなら、自然のエコシステムです。誰かがトップダウンで統率しているわけではなく、メンバーは皆自分勝手に生きているようですが、全体として調和が取れている自然生態系。社員を幸せにする経営で著名な会社のひとつであるネッツトヨタ南国のように、経営者は社員のやりがいだけをチェックし、管理はしない組織。社員は伸び伸びとやりがいを追求するので、創造性を発揮して成果を出すことができます。グリーン組織は人間的だったけれども家族のような上下関係は残っていた。これに対して、親子のようなヒエラルキーもない、自立したメンバーによる組織。これがティール組織です。では、これらの考え方とイノベーションとはどのような関係にあるのでしょうか。声を出せるような対話的なあり方です。あるいは、ブレーンストーミングの条件。ワイルドなアイデア大歓迎、質より量、批判厳禁。スティーブ・ジョブスがスタンフォード大学の卒業式の祝辞で引用した「Whole Earth Catalogue※」の言葉、“Stay hungry. Stay foolish.”(ハングリーであれ。フーリッシュであれ。)も、ウェルビーイングの条件に近いですね。以上より、各人が創造性を発揮するタイプのイノベーションのためには、軍隊式アンバー20成人発達理論・組織論とイノベーション
元のページ ../index.html#20