「ライスレジン」とは、非食用の国産米を原料にしたバイオマスプラスチック。独自の混練技術により最大70%まで米を混ぜることができ、石油系プラスチック含有量の大幅な低減を実現。CO2の排出抑制に加え、通常は破棄されてしまう粉砕米や事故米に新たな価値を見出すことでフードロス問題にも貢献している。なぜ米に着目したのか、その理由を株式会社バイオマスレジンホールディングスのCTO 坂口和久氏に伺った。「トウモロコシやサトウキビといったバイオ燃料として利用されている作物だと輸入に頼る必要があり、価格や量も世界情勢に大きな影響を受けます。しかし、日本の主食であり国内での生産量が多い米であれば安定した供給が期待できます。また、食用に適さない古米や菓子メーカーなどから発生する粉砕米、食の多様化で需要が減ったことによる余剰米などをどうにか活用できないかと考えたのも理由のひとつです」(坂口氏)ライスレジンは、ポリプロピレンまたはポリエチレンに米と水を加え混練して作られるが、タイやベトナムなどで多く生産されている長粒米より、日本の短粒米のほうが糊状にしやすく原料に適しているという。ただ、同じ短粒米でも品種などによって製造の工程や条件が異なるため、それぞれに合った製造方法を確立するのに苦労したと坂口氏は話す。「品種もそうですが、古米や粉砕米、台風などで水を吸ってしまった事故米など、原料によって含まれるアミロースやアミロペクチン、水分などの量は違います。それによって製造時の加熱温度や加える水分量を変える必要があるため、まず原料となる米を分析し、特性をしっかり把握することが重要です。また、着色やニオイも課題でした。ライスレジンでは透明なものは作れないのですが、なるべく着色を抑えつつ、米を炊いたときのようなニオイを抑えるため、製造時の加熱温度はかなり試行錯誤しています」(坂口氏)同社はライスレジンの製造だけではなく、農業が抱える課題解決への取り組みも行っている。約1年以上耕作が行われていない耕作放棄地を水田に戻すため、自社でもライスレジンの原料となる米の生産に着手。東日本大震災で被災した農家などを支援し、2022年12月時点で福島と新潟に2か所ずつ、約30haに作付けしている。「休耕地や耕作放棄地を活用し、農業を支援するために株式会社スマートアグリ・リレーションズを設立しました。将来的にはIoTやAIを活用した無人農業の実現も目指しています。また、若い人達にも農業に興味を持ってもらうために、米作り体験なども実施しています」(坂口氏)レジ袋有料化の影響から、日本郵便のレジ袋や自治体指定のごみ袋に採用されるなど、ライスレジンを導入する企業は着実に増えている。そんな中、新たに京都大学と協力し、米由来の生分解性プラスチック「ネオリザ」を開発。すでに三洋化成工業株式会社が開発した肥料被覆材に採用されており、2027年の実用化を目標に実証実験を行っている。土壌汚染や海洋汚染の問題解決にも取り組む同社が今後、どのように事業を展開していくのか、そのビジョンを伺った。「すでにベトナムに製造拠点がありますが、アジアでの展開に注力したいと思っています。米以外にもキャッサバなどの芋類もライスレジンの原料になるため、各地で余っている畜産物を有効利用し、日本以外でもサーキュラーエコノミーの実現を目指します」(坂口氏)1ライスレジンは、古米や保管時に水濡れなどで食用に適さなくなった事故米、菓子製造時に出る粉砕米といった、非食用の米を利用。また、食用に適さない米を自社で生産することにより、農業にも新たな価値を産んでいる。2同社のオフィシャルオンラインストアで販売されているライスレジンで作られたクッキングセット(離乳食セット)。3京都大学と共同開発した米由来の生分解性プラスチック「ネオリザ」の実証実験結果。米の含有率が高いほど生分解のスピードが速くなることがわかる。株式会社バイオマスレジン ホールディングスCTOURL◦https://www.biomass-resin.com17脱炭素への機運の高まりに加え、プラスチック資源循環促進法の施行が後押しし、植物などの再生可能な有機資源を 原料とするバイオマスプラスチックのニーズが高まっている。欧米ではトウモロコシなどが原料に採用されているが、 日本ならではの米に着目したバイオマスプラスチック「ライスレジン」を製造しているのが株式会社バイオマスレジン ホールディングスだ。脱炭素だけではなく、耕作放棄地の再生など農業分野への貢献も目指す同社が今後どのように 事業を展開していくのかその展望を追った。坂口 和久氏[ビジネス新潮流]Vol.19米由来のバイオマスプラスチックで米由来のバイオマスプラスチックで脱炭素と農業再生を実現する脱炭素と農業再生を実現する
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