サプライチェーン全体の環境負荷低減に向けた取り組みについてどのような活動をされていますか? 今後の日本の製造業において地球温暖化ガスの排出削減のためにどのような取り組みが必要だと考えていますか?サステナブルな製品づくりにおいてEDAなどの設計ツールやそれらを提供するベンダーに求められることは何だと考えていますか?16当社の営業担当が客先へおもむく際には、顧客製品の基板製造工程にエレファンテック製法を採用した場合の環境負荷のシミュレーションを行い、そのデータを可視化して説明しています。最近はこうした説明を歓迎されるシーンが確実に増えてきています。顧客の周辺でCO2削減など環境負荷低減の手段に関する議論が積極的に起きているからではないかと思います。また、当社が用意した環境負荷低減のデータが社内の稟議を通す手助けにもなっているのでしょう。 サプライチェーン全体の環境負荷低減を考えた場合は、当然1社の力だけでは成し得ず、業界全体、ひいてはコンシューマーユーザーも巻き込んで取り組まなければなりません。我々も本格的にその取り組みを行うのはこれからといったところです。その取り組みの大前提として、「トレーサビリティ(追跡可能性)」と「トランスペアレンシー(透明性)」が重要です。CO2排出量の議論を本気でするとなれば、この2つのキーワードは絶対に外せません。それがなければ、いくら工程を工夫し努力しようとも優れた設計ツールを使おうとも、全く意味がないものになってしまうでしょう。世の中のルールが変われば行動変容が起こります。例えば日本ではレジ袋が有料化したことにより、2019年から2021年で国内流通量が半分になりました※4。レジ袋のように気候変動に伴う規制強化も後押しとなって「環境負荷に配慮しているサステナブルな製品でないと購入の価値がない」という意識変革が起こります。その結果として購買選択という行動変容が近い将来に日本でも起こってくると思います。世界を見渡せばすでにその兆候は見え始めています。コロナ禍ではなかなか現場に赴きづらいということがありましたが、今後は国内外の現場に赴き、今、この世界で起きていることを感じて納得するという活動がより大事になってくると思います。日本の製造業においては業界標準や規制、潮流がいつの間にか変わってしまうことが今までにもよくあったと思います。常に現場にいれば業界の大きな変化の兆しにいち早く気が付くことができ対応できるのではないでしょうか。※4 参照サイト…https://www.env.go.jp/content/000050376.pdf製造業で広く使われているシミュレーションツールですが、これまでのような設計にかかわる技術計算をするだけではなく、 製品ライフサイクルやサプライチェーン全体にわたるCO2の排出量やリサイクルにまつわる計算まで対応可能にするべきだと思います。もちろん、プリント基板の設計や製造に関しても同様であり、図研が提供するEDAについてもCFPのシミュレーション機能に関する需要が今後、確実に増えてくると考えられます。そして、トレーサビリティとトランスペアレンシーを確保する上では、現在のように各社各様のデータ形式のままでは難しいので、CADデータの統一化・標準化もいよいよ重要になってくると思います。せめて書き出すところのデータ形式だけでも統一してほしいです。エレクトロニクス設計CADで多くのシェアを占めている図研にも期待しています。みんながひとつにならなければサステナブルな社会の実現は成し得ないFeature Article
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