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東京工業大学異種機能集積研究ユニットWOWアライアンス教授大場隆之氏 5※2 スパッタ成膜形成したい配線金属などの組成をターゲットと呼ばれる1枚の円盤から、配線金属の原子を真空中でたたき出し、たたき出した金属原子をウェーハ表面上に形成する成膜法。たたき出すためのパチンコ玉のような役割を果たすのがArという不活性ガス。プラズマを発生させて不活性ガスをプラスにイオン化し、マイナスに印加させたターゲットに強制的にたたきつけ、金属を取り出す術「BBCube(Bumpless Build Cube)」のレシピでは、能力を最大限に引き出すために、バラつきやサーマルバジェット※1などのデータを基に、モジュールや装置のあるべき姿を追求します。こういった要求仕様がないと各工程がばらばらになり、プロセスインテグレーションにはつながっていきません。ウェーハの超薄化とバンプレスでWOWの常識を破る大場氏 トランジスタが発明されてから75年、半導体はプレーナ技術を基本とし、すべてのプロセスをウェーハ表面から行えるようになって大量生産の道が開かれました。WOWも実はウェーハ表面から三次元配線できるので、この点においては基本技術を踏襲しているともいえます。 ロジックLSIなどは14層や16層などの多層配線技術を使っていますが、WOWはミクロンレベルに薄くしたウェーハを張り合わせているので、1枚のウェーハを多層配線技術の層間絶縁膜、TSVを多層配線のビアホールに見立てることができます。これは、従来のモノリシックなシリコンプロセス技術とは異なり、技術の進化として重要なポイントになります。また、垂直接続配線の形成にスパッタ成膜※2を利用するので、原子レベルで一様な接続界面がウェーハ全面で形成されます。これを機械的圧着(例えばハイブリットボンディング)で形成しようとすると、高コストの原子レベルの平たん化、高圧あるいは高温プロセスが必要になり多層積層には不向きです。 従来のTSV(Through Silicon Via)では、TSVの深さ、すなわちチップの厚さは50µm程度ありますが、私たちの中核レシピであるBBCube技術では10µmまでチップを薄くすることができます(図1)。CMOSトランジスタを構成する層は3µm程度なので、多層配線とシリコンを合わせて10µmまで薄くしても回路は動作します。津田氏 一般的に300mmウェーハの厚さは775µm程度ですが、ダイシングのしやすさなどで100~150µmに薄く削られてきました。WOWアライアンスの薄化技術では、どこまで薄くできますか?大場氏 薄化はデバイスに損傷を与えない限界まで可能です。シリコンウェーハの厚さの0.5%、つまり4µm程度まで薄くすることができます。かつては、裏面の厚さはFe(鉄)など不純物の拡散長を超えてはならないといわれていました。鉄などの重金属によって半導体内の電子トラップとなる深い準位を形成してしまうのを避けるためです。電子がトラップされるとICの先端実装技術開発のために半導体サプライチェーン企業が集結大場氏 我々の目的は、「3次元(3D)実装した集積回路(IC)を社会に提供する」というものです。3D-ICといっても量産できなくては産業になりません。WOW アライアンスは3D-ICの量産性と次世代低消費電力システムを実現するためのアライアンスです。ウェーハ同士を接着するWOW(Wafer on Wafer)技術と、チップをウェーハに積層するCOW(Chip on Wafer)技術を用いて、前工程からシームレスで画期的なウェーハレベル3D実装技術を開発しています。 量産時における3D実装の生産性を上げ、コストを最小にするためには設計段階からプロセス、材料などサプライチェーン全体を考えながらアーキテクチャを作っていく必要があります。ですので、製造装置や材料メーカー、設計、検査を含めた総勢40社以上の企業がアライアンスに参画し、同じテーブルで実現性の検討を重ねています。 国から資金提供があるプロジェクトでは、当初決めた計画の変更手続きに時間がかかってしまいますが、このアライアンスは企業・団体からの資金で運営しているため、量産までの軌道修正をアジャイルにできるというメリットがあります。 アライアンス参加企業には、シリコンバレーや台湾の企業も参加しています。約10%が海外勢です。我々は、まず3Dウェーハプロセスから実装までの手順など、検証されたレシピを作ることを狙っています。これを短期間で成し遂げ、社会に提供していく。ここを通らずにいきなり超先端プロセスの開発はあり得ません。 レシピは、単一の技術ではなく、モジュールをひとつのブロック単位として材料やデバイスのメーカーと協議し、COWとWOWを組み合わせながらインテグレーションを行い、ターゲット仕様を作りこんでいきます。例えば、いま我々が取り組んでいる三次元集積化技

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