fromz-vol30
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ProfileTakashi Maeno21SDM慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科。現代世界が直面する環境・安全・健康・平和・幸福などに関わる複雑な問題をシステムとして解決し、より良い世界を築く、文理融合の大学院。2008年設立。〈参考文献〉(1) 前野隆司編著,システム×デザイン思考で世界を変える  慶應SDM「イノベーションの作り方」,日経BP,2014(2) Isaacs, W., Dialogue: The Art of Thinking Together, New York, Crown Business, 19991984年東京工業大学卒業、1986年同大学理工学研究科機械工学専攻修士課程修了、同年キヤノン株式会社入社、1993年博士(工学)学位取得(東京工業大学)、1995年慶應義塾大学理工学部専任講師、同助教授、同教授を経て2008年よりSDM研究科教授。2011年4月から2019年9月までSDM研究科委員長。この間、1990年-1992年カリフォルニア大学バークレー校Visiting Industrial Fellow、2001年ハーバード大学Visiting Professor。著書に『幸せな職場の経営学』(小学館)、『幸福学×経営学』(内外出版社)、『幸せのメカニズム –実践・幸福学入門』(講談社)など。主張する)ためのテクニックです。対話の心得の中のVoicingはこれに近いといえるでしょう。つまり、攻撃的にもならず、自分の殻に閉じこもるのダイアログは、何か似ていないでしょうか。以上に述べてきた、ブレーンストーミングと傾聴するから、他人のアイデアに乗っかれる。どの発言も尊重・尊敬する結果、ポジティブに反応することができる。会話をしないことも、批判・判断をしないこととつながっている。質より量も、過度な批判・判断をしない発話につながる。ワイルドなアイデア大歓迎は、自己開示して声に出すこととつながる。つまり、ブレーンストーミングとダイアログは、意見を戦わせて既存の枠の中での正解を求めることを目指すような議論やディベートとは異なり、発言が流れる中から新しいものが発見されていくあり方であるという点で共通しているのです。目的が似ているから、注意点も似ているというわけです。もちろん、スピード感は異なります。ブレーンストーミングは直訳すると脳の嵐。みんなの脳の中からアイデアが渦を巻いて出てくるような、高速の対話です。一方、ダイアログは、じっくりと焚き火を囲んで話をするような、ゆったりとした中から、各人が自分とも対話して気づきを得ていくゆっくりしたプロセスです。つまり、ブレーンストーミングは超高速ダイアログ、ダイアログは超低速ブレーンストーミングだと考えると良いのではないでしょうか。いずれも、新しいアイデアやインサイト(気づき)を得るという点でイノベーティブ、かつ、新しいものを生み出すときに有効な手法です。一方、議論やディベートは、先ほども述べましたが、既存の枠内で答えを出すときに有効な方法です。前回、多様なチームは斬新なアイデアを生み出す可能性があり、均一なチームは既存の枠内でもなく、自己開示して言いたいことを素直に声に出すことが、深い対話を促進するといわれています。での改良型アイデアを出すときに有効、という話をしましたが、これと似ています。ブレーンストーミングやダイアログは、多様なメンバーが多様で斬新なアイデアを出すときに有効な方法。一方の議論やディベートは、専門家のような均一なチームが徹底的に話し合うときに有効な方法。これらを適切に使いこなすことがイノベーションにつながります。組織論における、アンバー組織(統率型組織)・オレンジ組織(合理的組織)とグリーン組織(家族型組織)・ティール組織(自由な組織)の違いとも似ています。組織とイノベーションの関係については、次回以降で述べることにしましょう。前野 隆司ブレーンストーミングとダイアログの共通点

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