202つ目の注意点は「ポジティブに反応」です。誰かがアイデアを出した時に、「そのアイデアには〇〇という課題があるね」のような批判的なコメントがあると、自由にアイデアを出す雰囲気が阻害されてしまいます。ブレーンストーミングでは、自由に大量のアイデアを出すことが重要といわれていますので、ネガティブなコメントは厳禁です。できれば「いいね!」「おもしろい!」「すてきなアイデア!」などのポジティブなコメントによってそれぞれのアイデアを出した人をエンカレッジすることが好ましいといえるでしょう。3つ目は「会話はしない」です。上述のネガティブな会話のみならず、「このアイデアはいいアイデアなので、これに決めよう」といったような会話も不要です。なぜなら、会話は大量発想を阻害するからです。一方で、ダイアログ(対話)とは、議論(ディスカッション)や討論(ディベート)とは異なる会話のしかたのことです。ダイアログ(Dialogue)の語源は、ラテン語の「ディア(dia)+ロゴス(logue)」だと考えられています。ディア(Dia)は「流れる」、ロゴス(Logue)は「意味」を表すので、ダイアログとは、意味が流れていくようなイメージといえそうです。一方のディスカッション(discussion)の語源のラテン語はdiscussusであり、dis-(分離)と-cus(ゆさぶる)が合わさってできた言葉と考えられています。つまり、 「言葉をゆさぶって分離・分解する」という本来の意味が、「話しあう」「議論する」という意味に発展したと考えられます。要するに、言葉が流れ続けるダイアログと、言葉を分解して明確化する議論。ダイアログは明確な結論を時間内に出すことを目的にはしないのに対し、ディスカッションは、特定の問題について話し合い、結論を導くことを目的としているという点で異なります。ディベートは、2派に分かれて一定の形式の中で議論を重ね、どちらの論旨が優れていたかを競い合うものであり、議論のひとつの応用例4つ目は、「質より量」。良いアイデアを出そうとすると、頭で考えてしまいがちです。そうではなく、自由に大量発想することが重要なので、質にこだわらず、たくさんのアイデアを出すことに注力することが重要です。たくさんのアイデアを出すから、優れたアイデアも出てくるのです。最後の5つ目は「ワイルドなアイデア大歓迎(Encourage wild ideas!)」です。ブレーンストーミングの醍醐味のひとつは、ワイルドなアイデアが出せることです。ぜひ、ワイワイと笑顔で盛り上がり、ワイルドなアイデアを楽しんでいただきたいと思います。以上のようなブレーンストーミングの特徴は、自由で面白いイノベーティブなアイデアをチームで出すために有効であると考えられています。といえるでしょう。ウイリアム・アイザックス(2)が明らかにした、対話の四つの条件を紹介しましょう。表1の右側を見ていただくと明らかなように、1. Listening(傾聴する)、2. Respecting(どんな話も尊重する)、3. Suspending(批判・判断は保留する)、4. Voicing(自己開示して声に出す)の4つが重要であるといわれています。1の傾聴は、カウンセリングやコーチングで強調される手法であり、他人の話をしっかりと興味を持って聞くという意味です。2つ目の尊重および3つ目の批判・判断保留は、どんな話もすぐに批判したりせず、尊敬・尊重して聴こう、ということです。そして4つ目が声に出すこと。声に出してしまうと、批判・判断をしてしまいそうですが、そうではありません。傾聴、尊重、批判・判断保留をしたのちに声に出すところが重要なポイントなのです。アサーションという考え方があります。アグレッシブ(挑戦的で、批判・判断的な態度)ではなく、ノン・アサーティブ(自分の意見なんて自信がなくて言えない、というような弱気な態度)でもなく、適切かつ冷静に自分の言うべきことをアサーティブに発言する(相手の気持ちを尊重しつつ、自分の意見を率直にダイアログの秘訣
元のページ ../index.html#20