実績ある回路を組み合わせているのにうまくいかないのは、なぜ?
回路には単なる回路図だけでなく、その回路の要求仕様や機能仕様、搭載されている部品の仕様や部品選定された背景など、さまざまな情報があるはずなのに、それらの情報がすぐに引き出せなかったり、見つからなかったり。結局、「実績」だけが頼りになっていませんか?
実績ある回路をライブラリ化していても、部品がEOLのために代替部品を選ぼうにもそれが正しいのかどうか確証を得ることが難しく、数年経つと回路が使えなくなってしまう。これらを解決するためには、どのような仕組みが必要なのでしょうか?

 


新田さんもだいぶ回路設計者らしくなってきましたね。単なる設計だけじゃなく回路検証やフロアプランもお手の物。今日の新田さんはどうかしら。あれ、今日も新田さんは設計業務に大忙しみたいだけど、思ったように進んでいないって?

 

新田:あれ~?過去製品からもってきた回路だけど、どうしてこういう設計になっているんだ?
しかもなんでこの部品? この場合は、こっちじゃなくてこっちのほうがいいんじゃないか?
んんん・・・わからない。

古川:おう新田。どうした。また何かあったのか?

新田:あ、古川さん。前の回路を流用してきたんですけど、この仕様でこの部品を選んだ理由がわからないんです。これだったら、こっちのほうがノイズも少ないし、コストも・・・
最近こんなことばっかりなんですよ。同じような回路なはずなのに、なんだか手間ばっかり増えちゃって。

古川:お前は、ほんとにタイミングがいいんだな~。
今の検討に必要な情報は、あとで教えてやるから、ほら、上島さんが呼んでたぞ。行って来いよ!

 

 

ただのコピペじゃもったいない。設計データを資産化して超流用設計!

 

新田:上島さん、なんでしょうか?

上島:おー新田。突然だが、うちが設計データ管理に「DS-2 Expresso」というシステムを使っているのは知っているな?

新田:はい、いつも設計データを登録してます。

上島:それなんだが、お前は何か思うことないか?

新田:うーん。設計データはいつも通り登録してますけど、似たような回路を探したいときに、いちいち製品を見にいくので、少し面倒ですね。

上島:うんうん。そうだな、今のままでは、まだ十分に使いきれていないんだ。
新田が言うように、今は、機種ごとの設計データ(回路図、基板図)を管理して、そこから流用できそうな回路情報をもってきて使っているだろう?だが、もともとはもっと先まで計画して導入しているんだ。

新田:先までって具体的にはどういうことですか?

上島:うちが目指すのは、「【超】流用設計」だ。

新田:ちょ、超流用設計ですか?

上島:そうだ。流用設計をとことん活用する。流用設計を進めることで、効率的に、かつ品質改善するんだ。設計工数を半減させて、できた時間で新技術を使った製品開発に活かす。これを実現するために、「回路ブロック運用」をすすめていこうと思っている。今のように基板図や回路図をただ保管しているだけではなく、そのあとの設計に役立てることを考えて、資産化するんだ。

具体的には、回路を機能単位でブロック化して、仕様書や検証結果などの、その設計の背景も一緒に紐づけておくんだ。そうしておけば、流用のたびにいろいろ調べたりする必要もなく、流用しようとする設計者の誰もが統一の認識を持つことができる。効率の面でも、品質の面でも効果がある。
 そこで、標準回路ブロック推進委員会というプロジェクトを進めるんだが、お前にも参加してほしい。

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新田:ぜひ参加させてください!前から、いまいち効率よくなっていないと思ってたんです。設計の仕事は、もっと効率的に、品質も上がるんじゃないかって。

上島:そうだな。いいところに気が付いたな。プロジェクトは、古川さんにみてもらってる。頼むぞ!

 

 

情報は独り占めしないで! 意味のある共有で設計意図もしっかり伝えよう

 

新田:古川さん、今日から僕もプロジェクトメンバーです。よろしくお願いします!

古川:よし、上島さんからも説明を聞いたと思うが、まずは設計情報を足していくぞ。

新田:古川さん・・・今さらなんですが。ここで足していく情報ってたとえばなんですか?

古川:たとえば、構想段階の資料や機能仕様書、部品選定に必要な部品仕様書とか検証・解析結果とかだな。誰かが作った回路を流用しようとすると、なんでこんな設計しているんだろう?とか、この回路の仕様が良くわからないなどと感じることがあるだろう? そうすると、それらは各自の判断で設計がすすめられ、同じ回路なのに、設計者によって性能に違いが出るだけでなくトラブルが発生する。だからこういう資料が重要なんだ。

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新田:そうか!その情報があれば流用しようとした時に、どうしてこの設計になったのか、背景がわかるってことですね。担当の設計者が辞めちゃった場合なんか、誰に聞いていいかわからないことがあるので、そういうときもこれで安心ですね。

古川:そうだな。でも、まだまだ。ここからが本番だ。

 

設計データ管理システムを使ってCADデータを管理していたけど、まだまだ十分ではなく、これから本格的にスタートするみたい。設計データを機能で分割し、その分割した機能に仕様書、検証結果など付属情報を紐づけることで、どうしてこの部品を選定したのかなど、誰がみても同じような理解になり、はじめてそれが回路ブロックとして運用できるようになります。今まで設計者個人で管理していた情報も、そのブロックにまとめることで、後の設計にも活かせるんですね。

 

 

品質アップも時短もできる! 回路ブロックの標準化をはじめよう

 

古川:さて、次に、回路ブロックの登録だな。
電源とかよく使う機能を回路ブロックとして登録していくぞ。

新田:古川さん、なぜ、機能ごとに回路ブロックとして登録することが、回路設計にとってメリットあることなんでしょうか?

古川:いい質問だな。たとえば、設計していてどんな製品にでもある機能なのに、同じような回路設計を重複しておこなうのは面倒だし、かといって他の製品から探してきても情報不足で余計に情報を調べるのも、面倒だと思わないか?それが、機能単位で回路をライブラリのように登録しておけば、欲しいと思った機能を簡単に見つけることができるだろう。

新田:確かに!それはすごく効率的になりますね!

古川:そうだろ?こんな感じで、電源とか製品でよく使う機能なんかを、回路ブロック化して登録してくんだ。

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新田:これなら、後工程の検証業務の負荷を軽減できるし、設計効率だけじゃなくて、品質アップも間違いなしですね!

古川:そうだな。品質がアップするだけでなく、設計変更やEOL対策など影響箇所も分かりやすくなる。さらにこのプロジェクトを進めて、標準化された回路ブロックで設計を行えば、部品の共通化も推進できて、コストや在庫管理の面でもメリットがでるようになるぞ!

新田:すごいですね。これから、回路ブロック運用のプロジェクト、僕がしっかり進めていきますよ!

古川:ははは!これからも頼むな!

上島:新田の今後が楽しみだ。これからも頼むぞ!

新田:はい!任せてください!

あんなに失敗ばっかりだった新田さんが、もう一人前の回路設計者の顔つきになりました。N社設計部の、今後の設計効率と品質アップが楽しみですね。そうそう、新田さんの下に新入社員の設計者が配属されるみたいですよ?これから、新田さんのスパルタ教育が始まっていくんでしょうか。これからが楽しみですね!

最後に、単なる流用設計と、超流用設計の違いを一覧にまとめてみました。
ご参考まで★

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