熟練の無線技術者のスゴ技を具現化! e-NEXTYの新機能のご紹介

このたび、グローバル車載分野においてトップクラスの売上規模を誇るエレクトロニクス商社、株式会社ネクスティ エレクトロニクス様が運営する設計者支援サイト「e-NEXTY」上で、図研と株式会社オリエントマイクロウェーブ様とのコラボレーションにより生まれた「RFアンプ」の新機能がリリースされました!

しかも、このRFアンプのツール、ビギナーだと5年はかかると言われている、ベテランの無線技術者だけが知っている実設計のノウハウが注ぎ込まれており、だれでも簡単に部品選択やアンプの相性がわかる、なかなかの優れモノなんです。

電子部品検索や設計に役立つサイト「e-NEXTY」とはいったいどんなサイトなのか、「RFアンプ」にはどんな新機能が搭載されているのか、これは詳しくお話をお伺いせねば…ということで、急遽Web取材を決行しました。

今回インタビューに応じていただいたのは、図研およびオリエントマイクロウェーブ社と一緒にRFアンプのツール開発に携わっていただいた、株式会社ネクスティ エレクトロニクス 情報企画グループの中島様と永沼様のお二人です。

 

取材時の様子

図1.取材時の様子(左上:永沼様、右上:中島様、下段はClub-Z取材班)

 

グローバルで車載分野に強いエレクトロニクス商社

――――最初に、Club-Zの読者に向けて、ネクスティ エレクトロニクス様の会社紹介をお願いします。

nexty

中島様 弊社は2017年に株式会社トーメンエレクトロニクスと株式会社豊通エレクトロニクスが合併して誕生した、車載分野ではグローバルでトップクラスの売上規模を誇るエレクトロニクス商社です。
弊社が取り扱っている品目は、ほとんどが海外の大手半導体メーカーで、ワールドワイドの最新市場動向や最先端の技術情報をいち早く入手できるメリットがあります。こうしたところは日本国内だけの半導体を扱っている商社とは異なっていると思います。
また、弊社では長年にわたって、国内自動車メーカーの品質基準に適合した、半導体の受け入れ検査を行っています。こうした長年培ったキャリアとノウハウから、高信頼性、高品質のサポートでお客様のご要望に応えています。

 

業界で採用実績のある電子部品だから、安心して使える!

――――ネクスティ エレクトロニクス様が手掛けるエンジニア支援サイト「e-NEXTY」は、どんなサービスなのでしょうか?

中島様 「e-NEXTY」はオンラインで無料・簡単に部品検索、ブロック図作成ができるWebサイトです。
e-NEXTYでは300万点以上の部品データベースから、車載で採用実績のある部品だけを絞り込めます。弊社はB2Bでも業界でかなり大手のお客様とも取引をしているので、車載の品質レベルや供給リスクについて採用時に十分にお客様と協議し、取り扱う品番を決定します。その一部をe-NEXTYで公開しています。
日系部品はリスクが少ないのかも知れませんが、例えば、あまり採用実績のない海外メーカーで社内でも積極的に活用してこなかった部品でも、e-NEXTYで「NEXTY実績あり」というフラグがあれば、お客様は安心して部品検討を行うことができます。実際にお客様に伺うと、e-NEXTYが提供している弊社の車載採用実績がひとつの選定基準として使っていただいているようです。

 

部品検索画面(NEXTY実績あり)

図2.部品検索画面(NEXTY実績あり)

 

    e-NEXTYにはキーデバイス周辺の電子部品が載っています。例えば、インターフェースIC、抵抗コンデンサ、高耐圧の抵抗などです。最先端のキーデバイスについては、開発設計者と半導体メーカーが1対1でじっくり時間をかけて検討するものなので、あまりe-NEXTYでは対象としていません。実は、我々としてはe-NEXTYの活用方法として、最先端キーデバイスではないところに主眼を置いているんです。

 

標準的なブロック図を利用して、設計時間の短縮を図れる!

中島様 e-NEXTYでは、我々がアプリケーション毎にトレンドを味付けした「ブロック図」を作成し、一般に公開しています。ですので、お客様は業界標準的な機能ブロックを入手し、そのブロックを編集することができるのです。
デジタルのキーデバイスの周辺にあるPAやアナログ部分のRF部品などは、パワーアンプ、ノイズキャンセルなどいろんな種類のアンプがあります。設計者はキーデバイス周りの設計に注力したいので、その周辺設計には時間をかけたくないのですが、そういったものをゼロから設計するとどうしても時間と手間がかかってしまいます。でも、e-NEXTYで提供されている標準のブロック図を利用し、編集すればとても効率的に設計でき、設計時間の短縮につながります。
e-NEXTYの会員になれば、お客様が作ったブロック図についてネクスティ エレクトロニクスにお薦めの部品を問い合わせたり、各種テクニカルサービスを受けたりもできます。例えば、「こういう機能ブロックを作ってみたけど、実際にここに使えるようなインターフェースを持っている部品をe-NEXTYで取り扱っているのか」、「このブロック図についてお薦めする品番を埋めて欲しい」、といった問い合わせにも対応可能です。

 

標準アンプのブロック図例

図3.標準アンプのブロック図例

 

各メーカーのデータシートをDB化、ビギナーでも部品検索が簡単に!

――――今回、e-NEXTYに実装されたRFツールの新機能はどういうものでしょうか?

中島様 はい、RFアンプの新機能は「部品選択」と「ダイアグラム作成」の2つあります。
「部品選択」ですが、これはまず、自分が使用しようと思っているアプリケーションの周波数帯域を入力し、部品検索することができます。すると、さっき入れた周波数帯がカバーされている部品が出てくるので、そのあとはキーとなるGainで絞り込んでいくことができます。

 
RFアンプの「部品検索画面」

図4.RFアンプの「部品検索画面」

 

永沼様 これってなにげなく検索しているように見えますよね。でも、実はこの画面にはビギナーの人がデータシートを見てもなかなかわからない情報が入っているんです。

――――え? それってどういうことですか?

永沼様 実は電子部品メーカー各社の間では、データシートの書き方がバラバラなんです。各メーカーさんはユーザーに自分たちの部品を買ってもらうためにグラフを作っているわけなので、そのグラフの横軸/縦軸をユーザーが見ても何が書いてあるのかさっぱり読み取れないですし、電子部品メーカー間でヨコ比較なんかもできないのが実情です。設計者を育てて、ちゃんとデータシートを読み取れるようになるためには、5年くらいかかってしまいます。
いままではベンダー各社のデータシートを見るために、無線技術者はわざわざ各社のWebサイトを見に行って、そこに載っているデータシートの読み解きに相当の時間と手間をかけていました。でも、このツールを使えばデータシートを介さず、ビギナーでもすぐに部品を探せますし、横並びで部品を比較することもすぐにできます。こうしたデータシートの読み解きなんかはベテランなら知っていてできるんですが、実は手間がかかったり、社内ではなかなか人に教えなかったりするケースもあるように思います。でも、そうした状況を放置するのは日本のためにはならないので、なんとか今回、そこに風穴を開けないといけないなと思います。無線技術者は高年齢化が進み、人数も少なくなってきて、設計が海外に流れていく傾向があります。今回e-NEXTYにRFツールを入れたのは、この無線設計を少しでも国内につなぎとめたいですし、もうちょっと若い無線設計者の育成に役立ててもらいたいな、という両方の願いからなんです。

 

メーカーから提供される一般的なデータシートの例

図5.メーカーから提供される一般的なデータシートの例

 

熟練の無線技術者のノウハウを具現化、実設計に近いダイアグラムの作成!

――――e-NEXTYのRFアンプに入ったもう一つの「ダイアグラム作成」機能について教えてください。

永沼様 3段や4段などの多段アンプを接続した場合のダイアグラムを作成することができます。このダイアグラムでは、複数のアンプを選んだ時の入力レベルやアンプのGainがどのくらいなのかといった計算ができます。また、自分がしようとしている設計のGainの上限とか下限を同時に表示したりすることができます。実設計で熟練の人がやっているようなノウハウ的な情報も最低限盛り込んでいます。例えば、RF設計では無線のコネクタをつなぐだけでも損失が起きてしまうのですが、そうしたアッテネータも考慮した、実設計に近いシミュレーションができます。また、最大値としてGainがどれだけ入力できて出力できるのかとか、部品選定レベルではこのアンプとこのアンプを選べばよさそうですよといったことが、このサイトの簡単なシミュレーションで分かるようになっています。
実はこういったダイアグラムの機能は、熟練の人だったら頭の中だけで数秒でできてしまうことなんです。でも、知らない人がやるとなかなか気づきにくいので、一週間あってもできません。本当に簡単なことなんですが、出力のレベルダイアグラムだけを取っても、こうしたレベルが出てくるのは、分かりやすいものだなと思っています。

 

多段アンプ接続のダイアグラム画面(アッテネータ入り)

図6.多段アンプ接続のダイアグラム画面(アッテネータ入り)

 
e-NEXTY_movie

 

今後の展望について

――――今後の電子部品データ管理やデータ連携について、将来構想をお聞かせください。

中島様 我々のメインのお客様である車載分野は技術がメカからエレクトロニクスに切り替わったところがあって、その準備が十分でないお客様もまだまだいらっしゃいます。家電や民生メインでやってきたメーカーさんと比べると、どうしても社内での部品データベースや部品の標準化、データ連携の課題への取り組みが遅れがちな面が否めません。我々はグローバル車載分野を引っ張ってきた自負もあるので、そうした部品技術情報管理の領域について手厚くサポートさせていただくことが一つの使命だと考えています。
そう考えた時に、図研さんとの連携では、例えば、弊社のブロック図や品番のスペックデータをEDIFなどのフォーマットに変換し、図研さんのCAD/PLMとの間で双方の連携がはかれるような仕組みが整備されているとよいのではないかと思っています。今後とも何卒よろしくお願いいたします。

 
 
 
ネクスティ エレクトロニクスの皆さん、取材にご協力いただきありがとうございました。RF設計の効率化のため、今後もe-NEXTYが改良されていくことを期待しています。
さて、次回はこの度のe-NEXTYへの新機能実装にあたって、RF回路設計ユーザの立場からさまざまな有用なご意見を出していただいたという、オリエントマイクロウェーブ様に取材をしてみたいと思います。

 

 

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