きっかけは本年1月、中高生対象の国際ロボコンに参加するチームの渉外・広報担当であるという学生さんから図研に送られてきた、1通のメールでした。複数の学校から生徒が集まる彼の所属チームは、春にアメリカで開催される大会に向けて、目下準備中だというのです(残念ながら、コロナ禍により大会は中止となってしまいましたが)。ロボット製作に加え、大会へのチーム登録、遠征・輸送などに多額の費用を要するため、スポンサー企業を探しているとのことで、モノづくりに励む未来ある若者たちの支援になるならと、すぐにこのスポンサーシップを決定しました。

それで編集局としては、彼らの活動の様子をぜひ知りたいと考え取材を申し込んだところ、対応を快諾してもらえました。そのロボコンチーム “RAIJINbotics” の話で単発記事化を考えていたのですが、話を聴きに行ったのが、彼らの普段の活動場所である DMM.make AKIBA で、この施設自体がとても魅力的でしたので、記事を2回に分けて前編をこちらの紹介にあてることにしました。取材の後でさらに、気になるポイントを運営会社であるDMM.com様にヒアリングしており、DMM.make AKIBAに興味を持っていただけること請け合いです。

 

DMM.make AKIBAが入っている富士ソフト秋葉原ビル

図1.DMM.make AKIBAが入っている富士ソフト秋葉原ビル

 
では早速、成り立ちのところから伺っていきましょう。質問にお答えいただいたのは、合同会社DMM.com .make AKIBA事業部の大沼様です。

 

DMM.make AKIBA について

編集局:さまざまな事業を手掛けるDMM.comですが、DMM.make AKIBAを始めることにしたきっかけはどんなことでしょうか?

大沼様:DMM.comでは2013年より「DMM.make 3Dプリント」というオンラインで3Dプリントを依頼できる事業を行なっており、利用者から「実際の製品を製作したい」というニーズが出てきました。また当時、アメリカでは個人がプロダクトを開発から販売するまでのトレンド「メイカーズムーブメント」が活発になっていたことから、日本にも誰もがプロダクト開発を行える環境を整えていくというDMM.make AKIBAの構想が持ち上がりました。

編集局:なるほど、世界のモノづくりトレンドを察知した上で、日本でも環境を整えねばというミッションを掲げて始められた事業なんですね。ちなみに、現在提供されているメニューは最初からあったものなのでしょうか?

大沼様:「Studio」「Base」などの施設利用の会員プランは、2014年11月のオープン当初から提供を開始しました。その後、ニーズに応じてメイカーズ相談会やテックオーダーなどを追加していきました。

編集局:現在、DMM.make AKIBA全体での会員数はどれくらいでしょうか?

大沼様:約4,000件で、そのうち企業/団体としての登録は600件程度になります。

 

DMM.make AKIBA「Studio」について

編集局:では、コアとなる2つのフロアについて詳しく伺いましょう。まずは、RAIJINboticsのメンバーも使っている「Studio」からです。機材一覧表を見て非常に充実していると感じたのですが、気になったのが当社が提供しているような回路・基板CADがあまり見当たらなかったことです(メカCADや解析ツールなどはありましたが)。ということは、会員は概ね回路・基板設計を自宅なり自社なりで済ませてきて、そこから先の工程をこちらで行うということでしょうか。

大沼様:ご自身で使われている有償CADを用いて作られたデータを持ち込む方が多いですね。パーソナルユースの会員さんや学生さんなどでは、KiCADやEAGLEなどを使われるケースもあります。

 

「Studio」の入口、ロゴもオシャレ

図2.「Studio」の入口、ロゴもオシャレ

 

編集局:後編で紹介するRAIJINboticsのような「(学生)団体」ユースについて教えてください。ロボコン向けの実機制作は想像しやすい利用方法なのですが、他に同じ使い方をしている団体は相当数あるのでしょうか? また、ロボコン以外での団体ユースというのは、具体的に何を作る例がありますでしょうか。

大沼様:学生の団体はそれほど多くありませんが、例えば東大の学生チームで、いちごの全自動栽培ロボットを開発している「HarvestX」や、次世代のハンズフリー型ELを開発する「Syrinx」なども、RAIJINboticsと同様スカラシップ制度(後編でご紹介)を利用した学生のチームです。

編集局:次に企業ユースについて教えてください。量産品の前のプロトタイプをここで作りたいというニーズが圧倒的なものと想像するのですが、実際はどうでしょうか? また、試験のためのニーズもありそうですが、どのような試験をやられている例がありますでしょうか。それ以外の使い方もあればご紹介ください。

大沼様:確かにプロトタイプの開発のニーズが最も多いですが、試験のニーズも一定数あります。DMM.make AKIBA内の「Measurement」という部屋に電波暗室や大型の環境試験機なども備わっていますが、自社で持ち合わせていない企業様が利用されたいときだけ利用できるので、この点でもご好評いただいています。また、テックオーダー(弊社テックスタッフに外注すること)もできますので、開発を依頼される方もいらっしゃいます。

編集局:同様に、個人ユースの例もいくつかお教えください。

大沼様:個人としてご利用される方は、趣味として電子機器などを作られたり、個人事業主の方などが多いですが、クリエイターやアーティストとして活動している方もいらっしゃいます。

編集局:ユーザ層や使い方などで、最近特に顕著になってきている傾向などがあれば教えてください。

大沼様:オープン当初は個人の”メイカー”の方が多かったですが、現在はスタートアップや中小企業、大手企業の会員さんが増えています。法人登記も可能なので、企業の拠点としてご利用される方も増えています。

編集局:現在コロナ禍の中でも営業を続けられていますが、やはり利用は大幅に減ってしまっていますでしょうか? また逆に、こういう状況でも利用を継続されているユーザというのはどういうところなのでしょうか。

大沼様:確かにご利用される方は減っています。当施設としましても、施設内でご利用される方がいわゆる「3密」にならないよう心がけて運営しています。しかし、プロダクトの開発は在宅ではしづらいのが実情ですので、必要な時はご利用される方もいらっしゃいます。また、こちらに入居されている企業様もいらっしゃいますので、必要に応じてご来館いただいています。

 

Studio内の壁面

図3.Studio内の壁面
   一番上:目的の回路が正しく動作するかを実験する手配線のセット
   中央の3基板:左が加工機で作った基板、中央が部品実装後、右が発注した生基板
   一番下:上記生基板を使用して組み上げたBluetooth対応アンプ

 

3Dプリンタが複数設置してある部屋。中央の黒いデスクで、でき上がった造作品のサポートを外したり、UVプリント品のでき映えを確認したりします

図4.3Dプリンタが複数設置してある部屋。中央の黒いデスクで、でき上がった造作品のサポートを外したり、UVプリント品のでき映えを確認したりします。

 

DMM.make AKIBA「Base」について

編集局:個室型オフィスとオープンスペースから構成されている「Base」ですが、まず個室型オフィスは全部でいくつあるのでしょうか。また現状は満室状態なのでしょうか?

大沼様:大小合わせて約30室あります。現在空室もありますが、時期により満室状態のこともありますので、都度お問い合わせいただければと思います。

 

個室型オフィスのエリアにあるミーティングルーム

図5.個室型オフィスのエリアにあるミーティングルーム

 

編集局:ちなみに、こちらはまとまった期間の契約で使用するものと認識していますが、合っていますでしょうか? 任意の数日だけ借りる、という感じではないとイメージしています。

大沼様:ご認識の通り、まとまった期間でご契約いただいています。月会費でお支払いいただくか、年払いとなります。

編集局:こちらの個室型オフィスからスタートして、成長・発展に伴い移転していった企業などはありますでしょうか? また、名前が出せるところがあれば教えてください。

大沼様:GROOVE XさんやFOVEさんなどは、まさしく小さい部屋から大きな部屋に移り、そして卒業していったスタートアップです。

編集局:では次に、オープンスペースの用途を紹介していただけますか?

大沼様:個室を契約していなくても、オープンスペースを使うことができるプランがありますので、そういった会員の方が社内外のお打ち合わせ場所として利用されることが多いですね。次にイベント会場としての使い方がありまして、会員の方の利用、AKIBA主催のイベント、また会員以外の方へイベントスペースとしてお借しするケースがあります。(現在コロナウイルス感染拡大防止のためオフラインのイベントは行っておりません)

 

さいごに

編集局:Club-Zは多数の読者を抱えていて、コア層の4割が基板設計者、3割が回路設計者、次いでCADオペレーションやシミュレーション担当者となっています。こちらのユーザとはプロファイルに少しズレがあるかも知れませんが、基本的にモノづくり企業においてそうした業務に携わっている方が多いです。こうした読者に向けて、公私問わずDMM.make AKIBAの活用を検討したくなるようなメッセージをいただけませんでしょうか。

大沼様:モノづくりは、開発プロセスから販売まで、たくさんの方がチカラを合わせて行っていきます。時代はオープンイノベーションといわれるようになり、その開発プロセスにも変化が現れているのも事実です。DMM.make AKIBAでは、専門性の高いテックスタッフ、ビジネスやコラボレーションなどをサポートするコミュニティマネージャーがこうした時代の変化に合わせて、施設としての利用だけでなくモノづくりとビジネスとが出会う「プラットフォーム」として新たな価値を提供しています。オフィスという側面では、ただスペースを借りることだけでなく繋がりを持つことで、社外のチカラと組み合わせて事業を発展することができます。ぜひ、Club-Z読者の皆さんも、当施設をご利用なさってみてください。

編集局:ご丁寧に説明いただき、ありがとうございました。

 

DMM.make AKIBAの活用イメージ、魅力などを、余すところなく語っていただけました。実は、7月にまさにここで、新連載でもおなじみの株式会社FUJI様と図研とによるライブ配信セミナーが計画されています。もちろん事前告知、開催レポートを行いますので、ご期待ください。

それでは後編で、学生ロボコンチーム”RAIJINbotics”の活動の模様をお伝えします。お楽しみに!