Modeling_Technology

■ こんにちは。株式会社モーデック 技術本部の落合です。第4回はいよいよモデルの作成方法についてお話しします。題材は次の2つです。

● 受動素子(積層コンデンサ)
● ダイオード

(※本連載では都合により、図に対して記事ごとではなく全体での通し番号を振っています)

 
 
第4回 モデルを作ってみよう(その1)

 

4-1. 受動素子(積層コンデンサ)

 

まず、図14 に示す積層コンデンサをモデリングしてみましょう。

 

fig_14

図14.積層コンデンサ

 

実際のコンデンサは、図15 のような周波数特性を持っています。しかし、理想コンデンサだけではこの図のような周波数特性とはなりません。理想コンデンサの周波数特性をシミュレーションした結果を図16、図17に示します。

 

fig_15

図15.積層コンデンサの周波数特性(実測値)

 
 

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図16.理想コンデンサモデルのシミュレーション回路

 
 

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図17.理想コンデンサのみの積層コンデンサモデルの周波数特性

 

次に、このコンデンサモデルを実際のコンデンサの周波数特性に近づけてみます。図15 を再度確認すると、5~6MHz 付近に共振点が確認できます。従って、インダクタンスが寄生素子として含まれていることが予想できます。図18 に示すように、先程のコンデンサモデルにインダクタンスを追加して、再度周波数特性を確認してみます。

 

fig_18

図18.理想コンデンサにインダクタンスを追加したコンデンサモデル

 

シミュレーション結果を図19 に示します。この図には共振点が現れ、かつインダクタンスのインピーダンス特性も現れました。実際のコンデンサの特性とモデルの特性を比較した結果を図20 に示します。

 

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図19.理想コンデンサにインダクタンスを追加したコンデンサモデルの周波数特性

 
 

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図20.積層コンデンサの周波数特性の比較

 

ここまで説明してきたように、実際にモデルを作成するときはまず素子の理想特性を再現するところからスタートし、徐々に非理想特性を追加していく、という手順をとると効率よくモデルが作成できます。これはどのデバイスでも当てはまるモデリング手法です。また、コンパクトモデル/マクロモデル/ビヘイビアモデルのどのモデルでも当てはまるのでよく覚えておいてください。

 

4-2. ダイオード

 

次に、ダイオードのモデリングをしてみます。合わせこむのは、IF-VF特性です。IF-VF特性に影響する主なSPICEパラメータを表3 に示します。

ダイオードの特性はIF-VF特性だけで決まるわけではありませんが、たった一つの特性だけでもこれだけのパラメータが関与しているのです。どのパラメータから調整していくべきか迷いますよね。パラメータを効率よく決定していくコツは、特性への影響が大きい、すなわち特性曲線の概形を大きく変化させるパラメータから順番に決めていくということです。表3 の中で該当するパラメータは、EG、ISとなります。まずEGですが、これはバンドギャップ電圧で、ダイオードを形成する半導体によって決まっています。半導体種類別のEGのデフォルト値は、Si:1.11[eV]、GaAs:1.42[eV]、Ge:0.67[eV] です。今回は、Siダイオードをモデリングしますので、EG は1.11[eV]に設定します。

 

tbl_03

表3.IF-VF特性に影響する主なダイオードSPICEパラメータ

 

次に、ISを設定します。ここでダイオードの順方向電流の理論式を確認しておきます。ダイオードの順方向電流VFは、式2で表わされます。

 

exp_2

 

上式においてqとkは物理定数であり固定値です。また、Tは温度(単位はケルビン[K])ですので、常温(25℃とします)における順方向電流はIsでほぼ決まることになります。上式におけるIsが表3 に示すパラメータのISに相当しますので、ISがIF-VF特性の概形を決めていることがよく分かると思います。

このように、デバイス特性を表す理論式とSPICEパラメータの関係を照らしあわせ、どのパラメータがデバイス特性に大きく影響を与えるかを事前に見極めておくと、効率よくパラメータを設定することができます。

なお、SPICE内部で定義されている各デバイス特性式は、参考書などに記載されている理論式とは若干異なっています。SPICEでは実際のデバイス特性をより忠実に再現するために、理論式とのズレを補正する式やパラメータが追加で定義されているためです。SPICE内部の各デバイス特性式はSPICE付属のマニュアルに記載されていますので、詳細を確認したい方はそちらを参考にしてください。また、参考文献[4][5][6]など日本語で解説している書籍もありますのでこちらもぜひご覧ください。

<参考文献>
[4] Massabrio, Semiconductor Device Modeling With SPICE, McGrawHill
[5] 新原盛太郎、SPICEとデバイス・モデル、CQ出版社
[6] 青木均編著 嶌末政憲・川原康雄著、CMOS モデリング技術、丸善

 

以上の手順で決定したダイオードパラメータとシミュレーションから算出したIF-VF特性を図21 および図22 に示します。

 

fig_21

図21.ダイオードIF-VF特性測定用回路とダイオードパラメータ

 
 

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図22.ダイオードIF-VF特性

 

■ まとめ
今回は、積層コンデンサとダイオードを例にして、精度のよいSPICEモデルがデバイス特性をより忠実に再現できることを説明しました。
最終回となる次回は、ブラシ付きDCモーターとDC/DCコンバータのモデリングを説明します。乞うご期待。

 

■次回予定の内容
第5回 モデルを作ってみよう(その2)
5-1. ブラシ付きDCモーター
5-2. DC/DCコンバータ

 
本連載記事
 第1回 SPICEシミュレータの仕組み
 第2回 SPICEにできること
 第3回 SPICEモデルの作り方とSPICEへの組み込み
 第4回 モデルを作ってみよう(その1)
 第5回 モデルを作ってみよう(その2)

 

ochiai■ 著者紹介
落合 忠博(おちあい ただひろ)
株式会社モーデック 技術本部 Model On! 開発リーダー ※

アナログ回路設計で培った技術で、基板設計ユーザ向けの「Model On!」サービスや、部品メーカからの受託サービスなどを統括しています。IC回路モデルモデリング、デバイスモデリングにとどまらず、設計へのアドバイスなども積極的に実施しています。
※ 2020年4月1日から組織が変更になりました。