今回は、本連載の初回でご紹介した「トリリオンノード研究会」の直近回での、トリリオンノード・エンジン自体と研究会参加団体の各種活動についての発表の模様をご紹介します。トリリオンノードの活動が国家プロジェクトとして始まった4年前から毎年行われている本研究会では、キックオフ的な意味合いを持つ夏季の会合で新しいリーフが説明され、冬季の会合はそれを用いた技術発表会といった形になっています。今回は冬季の会合なので、各企業・団体が、特にこの半年間での取り組みの成果を発表する趣旨になっていました。

 

東京大学駒場キャンパス入口 会場前の立て看板

図1.左:東京大学駒場キャンパス入口、右:会場前の立て看板

 

さまざまな動きがあったLeafonyの概況を説明

まずは2020年1月末に行われたトリリオンノード研究会の冬季の会合です。最初に本研究会代表、桜井 貴康 東京大学名誉教授より、昨夏の会合以降のトピックを中心に紹介されました。

  • 参加団体が1月現在で67社となった
  • コネクタが整備されているため接続がラクであることや、Raspberry Piと比べられることが多いもののあちらは電池による長時間駆動が難しいことなどから、エッジノードに最適であること
  • 仕様書、回路図、パターン図、応用例、ソフトウェアの一般公開が完了。商業向けでも自由に無償使用が可能に
  • 2月より、新しいキットとしてWi-Fi無線通信、microSD、リアルタイムクロック機能が入った「ESP Wi-Fi KIT」の頒布を開始
  • 企業においてはPoC(Proof of Concept:概念実証)ユースが多い
  • 来年度、グローバル展開を予定
  • 58pin化、高性能化(ARM32bit)、エッジAIのカバーなどに対応させ、Leafony series Bとして公開予定

最後に、Leafonyはテクノロジーとアプリ・サービスとの谷間を埋めるべく今後も発展していき、また本研究会はいち早い情報共有やフィードバック、会員へのサービスやハード/ソフトの配布、ニーズとシーズとのマッチングなどの機能を担っていく旨が説明されました。

 
桜井貴康名誉教授の講演

図2.桜井貴康名誉教授の講演

 

実用的でバリエーション豊かな成果発表

続いて、研究会参加企業・団体による発表に移りました。14の企業・団体すべてのご紹介は難しいので、懇親会の会場でデモが行われたものを中心に次の章で取り上げますが、ここでは全体的な内容を概説します。

  • 具体的に想定された利用シーンにより、活用のイメージがしやすい
    ⇒農業への適用:カメラモジュールを用いた、盗難・獣害などへの対策や、作況解析など(圃場が細かく分散しているという日本農業の特徴に対応)
    ⇒物流倉庫内に設置された各ゴミ箱にLeafonyをコアとした超音波測定装置を設置。ゴミの量を監視し、必要な時だけ回収できるように
    ⇒個室の空き状況を、照度を判定基準として検知するトイレセンサシステム、など
  • 電源を確保しづらいシーンでの利用を想定した事例
    ⇒BLE Beacon技術を用いてリーフに搭載したボタン電池の寿命を大幅に延ばす
    ⇒太陽電池リーフを利用したシステムのバッテリレス化、など
  • 他のシステムや機器などとの連携をテーマとした取り組み
    ⇒LeafonyとIoTルータ、そしてIoT-HUBとを繋ぎ、「温度が規定値を超えたら、センサーと離れた場所にある扇風機を自動で回す」仕組みを構築
    ⇒IF(特定の状態)とTHEN(アクション)を組み合わせることでさまざまな仕組みを実現するIoTプラットフォームとの連携試作
  • 見た目の演出やストーリー性などによる、興味の持たせ方の工夫
    ⇒バイタルセンサリーフからのデータを、スマートフォンの画面に「感情グラフ」として表示
    ⇒温度が高くなった旨の報告を受けると、承認者が指紋で承認し、扇風機を回すデモ
  • 「開発」以外の発表もあり、テーマアップの幅が興味深い
    ⇒電子工作ナレッジの共有サイトでの投稿数アップの起爆剤として、Leafonyプレゼントを企画
    ⇒「都市の暮らしやすさ」をテーマとした研究の中で、街中での各種データ(例:CO2やNOxなどの量)を採るためにLeafonyを活用

 

各社・団体の想定している利用シーンが多岐にわたり、かつ実際の「お困りごと」にかなり寄り添っており、実現の暁にはすぐにでも使いたいというユーザが現れそうな事例がたくさんあるとの印象を受けました。

 

発表内容の実機デモも行われた懇親会は活況

最後に、発表者と参加者が一堂に会し懇親会が行われました。発表内容を説明するテーブルが複数設置され、実機デモで実際に動作を確認することができました。いくつかを写真とともにご紹介します。

 
セキュアIoTシステムのデモ

図3.セキュアIoTシステムのデモ

 

連載の第2回記事を担当していただいた東芝インフラシステムズ株式会社様の2種類のデモ。センサー情報を同社の「セキュアエレメントリーフ」内で暗号化してBLE送信することにより、Leafonyのセキュリティ向上が可能であることを示しました(図3上)。また、同じく今回発表されたIoT-EX株式会社様のIoT相互接続サービスを活用し、センサーが異常値を示した際にフィードバック制御を行うシステムにおいて、同社の「BLE対応指紋センサー付き本人認証デバイス」を用いてフィードバック制御実行可否の承認プロセスを可能にしました(図3下)。

 

「SPRESENSE」のLeafony拡張ボードのデモ

図4.「SPRESENSE」のLeafony拡張ボードのデモ

 

ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社様が開発した、GPS、ハイレゾオーディオなどの機能を備えた”SPRESENSE”のLeafony拡張ボードのデモ。用途は明確になっていないとしながらも、縦方向に動くように設置してあるカメラが、設定してある角度から外れるとビューイングを行わなくなる動作を確認することができました。

 

バイタルセンサリーフのデモ

図5.バイタルセンサリーフのデモ

 

株式会社ネクスティ エレクトロニクス様によるデモ。バイタルセンサリーフにより脈拍データを採り、事前に入力しておくユーザ情報(身長、体重、年齢)と併せ、スマートフォン上で、ストレス値、感情グラフとして表示します。

 

「OKLOCK」のデモ

図6.「OKLOCK」のデモ

 

埼玉大学enPiT(*注)による、鍵の閉め忘れや電気の消し忘れなどを防止するシステム「OKLOCK」のデモ。鍵は、開いている時と閉まっている時それぞれの角度を登録しておくことで、閉め忘れを察知します。写真右側は、サムターンロックへのアダプターとして今回製作したというダンボール製のギミックで、中にリーフが入っていることが判ります。

活動の進捗と共にどんどん活用案やリーフ群、事例などが充実していっている様子と、それに伴い会員各位の熱量も上がってきている様子が伝わってくる内容でした。

*enPiT(= Education Network for Practical Information Technologies)についてはこちらをご参照ください。