皆さん、こんにちは。

有限会社 実装彩科の斉藤です。

今回の第5話では当初「中国パワー恐るべし しかし、その対抗策は...」というタイトルを予定し、執筆をすすめていたのですが、結論でお伝えしたかった「で、我々(日本国内の)電子機器セットメーカ・基板製造メーカとしてはどうすれば良いの?」の部分を文章のみで表現することが困難と考えるに至りました。
そこで、その「どうすれば良いの?」については、筆者の経験や考えを連載記事でお伝えするのではなく、読者の皆様と一緒に考えるイベントを図研様と共同で企画中です。本稿の最後に企画案をご紹介しますので、記事に対するご感想と併せてイベントについても皆様のご意見を頂戴できれば幸いです。
前置きが長くなってしまいましたが、それでは先ず、事例から始めていきます。

最近、1005セラコンが品薄になってきたことから、0603のようなより小型なセラコンを採用せざるを得ない方も多くいらっしゃると思います。

図1は溶接学会の図を拝借しましたが、はんだフィレットの形状について様々な形と理論があります。

 

fig1

図1.はんだフィレットの形状比較

 
もし、電子機器セットメーカがEMSへ「基板調達+部品実装」を依頼し、その結果、図2のように 0603セラコンが “はんだ過剰気味”な実装状態で納品された場合、これをOKとするかNGとするか?

 

fig2

図2.はんだ過剰気味のはんだフィレット

 
このようなはんだ過剰気味のフィレットをEMSのAOIはどのような検査アルゴリズムで見ているのでしょうか? もし、この状態で納品してきたとしたら、どのような根拠でOKとしたのか? このような問いかけをできるセンスが電子機器セットメーカにも必要と考えています。

図3は同様に大型チップ部品が適用されていて、はんだフィレットを見ると窪みがあることが発見されたものです。これをOKとするかNGとするか?

 

fig3

図3.はんだフィレットの窪み(大型チップ部品)

 
また図4は背高チップ部品と半導体パッケージの間隙が小さく、背高チップ部品のはんだフィレットが良く見えないものです。これをOKとするかNGとするか?
そもそも、背高チップあるいは大型チップ部品はどのサイズまで適用して良いのか?
適用して良い場合、チップ部品の電極に歪を小さくする工夫があるものを使う指示になっているか?

 

fig4

図4.部品間隙が小さい事例

 
しかし、EMSとしては基板設計を担当していないため、何ともコメントができないと思われます。結果として、基板設計を外部に依頼した電子機器セットメーカに責任が戻ってくることが多くなります。

これは第1話、第3話でも示した図5の赤丸で示したキーポイントの部分に相当します。

 

fig5

図5.技術ポイントの伝達困難な事例

 
1980年代、1990年代の頃は上記のような基礎的な部分がわからない場合、要素技術としてひとつずつ確認する余裕が企業の中にありました。しかし、昨今ではその余裕が乏しい状況が多くなっていると思います。

ところで、今後、IoTエッジ・コンピューティング技術の分野では様々な機器が開発されると推定されます。その電子機器に要求される信頼性は相当幅があり、簡易的なセンサノードから故障が許されないエッジサーバまでそれらを扱う電子機器セットメーカは多くなると思われます。その中で部品、特にプリント基板をいかに安く調達できるかは大きな関心事だと思います。

もし、電子機器セットメーカにプリント基板の信頼性を目利きできる力があれば、基板コストはかなり下げられると思います。

図6はガーバーデータを送り、ごく少量中国で作った基板です。1枚数百円でできてしまいました。国内価格の1/数分です。マイクロセクションでスルーホール品質を観察してみましたが、予想に反してまあまあの出来でした。

 

fig6

図6.中国製安価基板の事例(2層 1.6t)

 
そこで、どんな環境で基板を製造しているか興味津々になり現地の工場を見てきました。
確かに工場の見た目はコストをかけていないので”美しい工場”とは言えません。整理整頓もまぁこんなもんでしょう。しかし、基板の作り方の勘所は思っていたよりは悪くありませんでした。
幾つかアドバイスをしてきましたが、筆者は簡易的なセンサノードであれば、この基板でも使いこなせてしまえると思いました。

このように書くと国内の基板産業をより厳しいものにしてしまうとお叱りの声をいただきそうですが、国内、特に産業機器用途が多い基板メーカは新しい手立てを講じないと本当に厳しくなってしまうと危惧します。
筆者(実装彩科)は、その「新しい手立て」についてご支援をしております(また、次回第6回の連載では「基板メーカの皆さまへのご提案」と題して、この辺りにも詳しく触れてみたいと考えています)。

さて、本稿の冒頭でも触れた企画のご提案です。
図研様のClub-Z編集局からは、筆者の記事は多くの方にお読みいただいているとお聞きしています。
そこで、今回第5回のタイトルの通り「電子機器セットメーカの皆さまへのご提案」です。是非、読者の皆様と筆者が一同に会して“プリント基板・部品実装技術”についてお話ししませんか? 現在、企画概要は以下のように考えています。

日時:9月初旬頃を予定 (交流会も含めて3部構成で考えています)
場所:図研様の中央研究所ホール、センター南ビルのカンファレンスルームなどを検討中

 
プログラム:

第1部:皆様と一緒にお話をするための導入部(筆者より)
図5で、電子機器セットメーカの皆さまから見て、中国基板メーカで基板を製造する場合、沢山の“人”を介するので遠い存在です。しかし、プリント基板・実装技術のトータルで見た場合、最も重要なスルーホール接続信頼性の確保はその中国基板メーカの中でなされています。
そして、中国基板メーカの中には様々な方式のめっき設備が稼働していているので品質ばらつきが異なります。その確認手段として実装彩科では『e-book(全142ページ)を販売』しておりますが、今回はそれに関係する一般の方はご存じないめっきの”ヒミツ”について現場設備の動画・静止画を多く使って解説したいと思います。きっと、こんなことになっているのかぁーと驚かれると思います。
これは、図5での様々な課題があることの一例です。このあと、皆さまから色々な話題を出していただければと思います。

 
第1部:ディスカッション
ご承知の通り、プリント基板・部品実装技術と一口に言っても、非常に広範な技術であると思います。第1部の筆者の話で触れられなかったこと、また深掘りしたいことなど、当日ご参加いただく読者の皆様と双方向で情報交換をすることで、冒頭にも触れた「で、どうすれば良いの?」の答えを浮き彫りにしていきたいと考えています。こちらも取り上げたいテーマについてリクエストがありましたら下記のフォームからご意見をお寄せください。

 
第3部:交流会
せっかくお集まりいただくので、読者の皆様同士の情報交換のお時間もご用意できれば、と考えています。それぞれのお話の輪には、筆者も飛び入り参加をさせていただきたいと思っています。

 
対象者:
 ・電子機器セットメーカ・基板メーカにおいて基板・部品実装技術に関わっている方で、
  「これから目利きになりたいと考えている方」
  「既に社内の有識者として活躍されているものの、社内で相談相手がいなくなってきているなぁとお感じの方」
  「他社や業界の動向に関心のある方」
 ・基板メーカの立場から、電子機器セットメーカの「本音」を知りたいとお考えの方
 ・電子機器セットメーカの立場から、基板メーカの「本音」を知りたいとお考えの方

ご参加を希望される方の人数によっては、場所の変更を検討したり、前述の通り広範な技術テーマですので、取り上げるテーマの検討には、読者の皆様のご意見を頂戴したく、ぜひ下記のアンケートフォームへの回答をお願いいたします。

 

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内容決定は8月初旬を目指しています。次回、第6回「基板メーカの皆さまへのご提案」も併せてお読みいただき、継続してご意見を頂戴できれば幸いです。ただし、皆様から色々なリクエストをお寄せいただけた場合、第6回は「読者の皆様と一緒に考えるイベント」での準備紙面にあてがう可能性があり、「基板メーカの皆さまへのご提案」はその次の回になるかもしれません。ご了承ください。

 
 第1話 モノづくりの現状と、今求められる「組織間のすり合わせ技術」
 第2話 協力会社に任せきりにするとこのような事故が起こる
 第3話 「伝わらない」EMSメーカとのコミュニケーション事例
 第4話 プリント基板、売る方も買う方も詳しくない? 価格のみの勝負になっている
 第6話 詳細解説:基板設計と基板調達の担当の違いによる開発の4つのケース
 第7話 ディスカッション企画を前に:セットメーカ担当者が気をつけるべき「勘所」をご紹介
 

jissosaika_saito 執筆者プロフィール
斉藤 和正(さいとう かずまさ)
1980年に日立関連企業に入社、20年以上にわたり民生用から産業用までのあらゆるプリント基板の生産・実装技術に携わる。基板の評価、設計基準・購入仕様書の作成などを行いながら、海外基板・基材メーカの開拓に注力。
その後独立し有限会社実装彩科を設立、技術コンサルを開始。特に中国をはじめとした海外での基板・モノづくりに関する知見を活かし、広範囲な業種を支援し現在に至る。JPCA、JIEP(エレクトロニクス実装学会)の複数の委員会、研究会の委員を務める。