皆さんこんにちは、リコー電子デバイスの講師Sです。今回はDC/DCコンバータの最終回です。DC/DCコンバータは制御方法など、様々な方式、種類があるため、DC/DCコンバータを理解する上で必要となる基本的な動作、特徴についてこれまで4回にわたって説明してきました。最後に復習を兼ねてそれらの内容を用語集的に簡単に整理したいと思います。また、これまで説明してきたものとは種類が異なるDC/DCコンバータを紹介します。
 


DC/DCコンバータ概観

DC/DCコンバータはDC電圧から別のDC電圧への変換装置ですので、リニアレギュレータもDC/DCコンバータの範疇に入ることになりますが、本講座ではDC/DCコンバータはスイッチングレギュレータの意味に限定して使っています。

 
(1)リニアレギュレータと比較したDC/DCコンバータの基本的な動作と効率

リニアレギュレータは入力電源から不要な電力分を出力ドライバで熱として消費することで取り除き、負荷が必要とする電圧と電流を供給しています。これを表したのが図1-1です。

 
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図1.リニアレギュレータと降圧DC/DCコンバータ

 

これに対し、降圧DC/DCコンバータは入力電源から供給されるエネルギーを、出力が必要とするエネルギーに相当する比率の時間パルスに分割し、そのパルスを平滑化して出力負荷が必要とする電圧、電流として供給しています。このため理想的には効率を100%にすることができます。これを表したのが図1-2です。
このとき、コイルは出力容量とともにローパスフィルターを構成してパルス列を平滑化して負荷が必要とする電圧に変換していますが、コイルはさらに重要な役割を果たしています。コイルは入力電源とつながっている期間に負荷へ電流を供給するとともに、その電流によるエネルギーを蓄積していますが、入力電源と切り離されてGNDとつながったコイルは、そのエネルギーを放出することでGNDから負荷に電流を供給する役割を果しています。

 
(2)時比率制御方式(PWM制御とVFM/PFM制御)

DC/DCコンバータは入力電源から供給されるエネルギーを、出力が必要とするエネルギーに相当する比率の時間パルスに分割し、そのパルスを平滑化すること、すなわち時間比率を制御することで、必要とする電圧に変換しています。この時比率制御方式として、PWM制御とVFM/PFM制御があります。

 
PWM制御

パルス時間をTonとするとPWM方式は動作周波数が一定でその一周期内のTon時間(これをDutyと呼びます)を制御する方式です。
負荷電流が大きく、コイル電流がゼロにならずに連続する場合には出力電圧は負荷電流に依存せず、入力電圧とDutyで計算される値になります。周波数一定で常時動作するため軽負荷時の効率が低下しますが周波数一定のためノイズ対策は容易です。
ただしPWMモードでも、次の項目で記載する非同期整流あるいは逆流防止つきの同期整流では、負荷電流が小さくなるとコイル電流が不連続の動作になります。この動作では出力電圧を一定に保つために、負荷電流に合せてDutyが増減します。

 
VFM/PFM制御

パルス時間Ton一定で、負荷電流に応じてスイッチング周期(パルス間隔)を制御する方式です。負荷電流が小さくなるとそれに応じてスイッチング周波数も低下して制御回路の消費電力が減少するので軽負荷時にも高効率を維持できます。ただしスイッチングノイズ周波数が低周波数側に広がるため、ノイズ対策は難しくなります。

 
(3)整流方式

DC/DCコンバータは入力電源から供給されるエネルギーを出力が必要とするエネルギーに相当する比率の時間パルスに分割し、そのパルスを平滑化して出力負荷に供給します。
すなわち、入力のDC電源を一旦AC電源の様なパルスに変えた後、再び整流してDC電圧を取り出していることになります。このときの整流手段として、同期整流方式と非同期(ダイオード)整流方式があります。
同期整流、非同期整流ともにコイルがエネルギーを蓄積するために入力電源と接続するスイッチの構成は同じですが、コイルがエネルギーを放出する際の接続構成が異なっています。同期整流ではスイッチですが、非同期整流ではダイオードを使用します。

 
① 同期整流方式

スイッチは逆流が可能なので、軽負荷でも電流連続動作を維持でき、非同期整流方式のような高周波ノイズの発生はありません。また、逆流防止機能によって非同期整流と同等の動作が可能です。しかもスイッチですのでダイオードの順方向電圧による効率の低下はありません。

 
② 非同期(ダイオード)整流方式

ダイオードの順方向電圧によって効率が低下するため、順方向電圧の低いショットキーバリアダイオードを外付けします。負荷電流が小さいとスイッチノードがハイインピーダンスになってコイル電流がゼロとなる電流不連続動作になり、スイッチノードに高周波発振(リンギング)が発生してノイズの原因になります。

 
(4)変換電圧の種類

リニアレギュレータは降圧(入力電源より低い電圧の生成)しかできないので、ドロッパーと呼ばれる場合もありますが、DC/DCコンバータはコイル、コンデンサー、スイッチの接続方法を変えることで、入力電圧から降圧だけでなく、昇圧、反転電圧を得ることが可能です。
それぞれの変換電圧を得るための接続方法として先に述べた2種類の整流方法ごとに、また得られる電圧の計算式を表にまとめました。

 
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図2.DC/DCコンバータの電圧変換の種類と回路構成、出力電圧式

 
※ここからは、これまで述べてこなかった分類のDC/DCコンバータのお話です。

 
(5)絶縁方式、非絶縁方式

DC/DCコンバータの分類には絶縁方式と非絶縁方式があります。これまで説明してきたDC/DCコンバータは非絶縁方式です。絶縁方式と非絶縁方式の違いについて、以下の「絶縁方式のDC/DCコンバータ」の章で説明します。

 
(6)コイルを使用しないDC/DCコンバータ

これまで説明してきたDC/DCコンバータはコイルへのエネルギーの蓄積と放出を利用した電圧変換方式ですが、コイルを使用しないチャージポンプと呼ばれる方式があります。これも、続く「チャージポンプ」の章で説明します。

 
 
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絶縁方式のDC/DCコンバータ

これまで説明してきたDC/DCコンバータはすべて入力電源側と出力側のGNDを共有しており、入力側と出力側が電気的にはつながった状態ですので、非絶縁方式のDC/DCコンバータという分類になります。通常、電気機器の電源は商用のAC電源です。機器内部ではこれを機器がその機能を実現するために必要な電圧に変換しています。この電圧変換にあたり機器使用者の感電を防止するなどといった安全を確保するためには、絶縁方式による電圧変換が必要です。そこで、入力側と出力側が電気的に完全に絶縁分離されるトランスが使われます。
ここでは絶縁方式のDC/DCコンバータの一例として、昇圧DC/DCコンバータと同等の動作となるフライバックコンバータを紹介したいと思います。

 
●トランスについて

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図3.トランスについて

 

トランスの構造は例えば図3のような「」形状の鉄芯(コア)の左右に2つの異なるコイルを巻いたものですが、この相対する2つのコイルの巻き方によって2種類のトランスが存在します。一つが和動結合のトランス、もう一つが差動結合のトランスです。図3-1-(1)は和動結合のトランスを示しています。左側のコイルに図の黒矢印で示す方向にコイルの上方から電流を流すと、右ねじの法則によって左側のコイルには下向きの磁束が発生すると共に、鉄芯を通して右側のコイルには上向きの磁束が発生します。一方、右側のコイルにも同様に図の黒矢印で示す方向にコイルの上方から電流を流すと右側のコイルには上向きの磁束が発生し、同時に鉄芯を通して左側のコイルには下向きの磁束が発生します。このように2つのコイルがお互いの磁束を強めあうことになりますので和動結合と呼ばれます。回路記号では和動結合のトランスを表すために図3-1-(2)で示したようにドット(●)が左右のコイルの同一方向に打たれています。一方、図3-2-(1)が差動結合のトランスです。図3-1-(1)と比べると右側のコイルの巻き方が逆になっています。この場合2つのコイルがお互いに磁束を弱めあうことになりますので、差動結合のトランスと呼ばれており、図3-2-(2)で示したように回路記号ではドット(●)が左右のコイルの反対側に打たれています。絶縁型DC/DCコンバータではいずれのトランスを使うかはコンバータ方式によって異なるため、この2種類を明確に区別する必要があります。

 
●絶縁方式フライバックコンバータ

差動結合のトランスを使ってトランスの左側を一次側、右側を二次側として図4-1のような回路を構成します。これが絶縁方式のフライバックコンバータです。フライバックコンバータの動作の概要を図4に従って定性的に説明したいと思います。

 
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図4.絶縁方式フライバックDC/DCコンバータの動作

 

Step1:図4-1に示すようにスイッチSをONすると、一次側のコイルには下向きの磁束が、また鉄芯でつながった二次側のコイルには上向きの磁束が増加しはじめます。すると、レンツの法則によって二次側のコイルには図4-1に示したように負の誘導起電力が発生します。ただし、ダイオードが逆方向で電流は流れないため、一次側から二次側へのエネルギーの移動はありません。すなわち、一次側の電流は一次側のコイルにエネルギーを蓄積することだけに使われることになります。

Step2:図4-2に示すようにスイッチSをOFFすると、一次側のコイルは電流が遮断されますので下向きの磁束はゼロに変化し、同時に鉄芯でつながった二次側のコイルの上向きの磁束もゼロに変化します。すると、レンツの法則によって二次側のコイルには図4-2に示すように正の誘導起電力が発生します。このときダイオードは順方向ですので、電流は出力コンデンサーCoutと負荷に供給されることになります。
スイッチSがONの時の一次側の電流によってトランスに蓄積されたエネルギーが、スイッチSがOFFの時にすべて二次側の電流として放出されることになります。フライバックコンバータは入力側と出力側がトランスで絶縁されていますが、図4-3に示す昇圧DC/DCコンバータと同じ動作をしていることになります。

 
 
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チャージポンプ

DC/DCコンバータはコイルへ磁気の形でエネルギーの蓄積と放出を時比率で制御することで安定した電圧を高効率で生成することができました。入力電源とスイッチなどの整流素子、コイルの接続方法を変えることで、昇圧、降圧、反転電圧を生成することができました。
エネルギーの蓄積と放出ができるのは、コイルだけではありません。コンデンサーも電荷の形でエネルギー蓄積と放出ができるため、コイルを使用しないDC/DCコンバータが実現できます。これをチャージポンプと呼んで区別しています。

 
●チャージポンプの動作原理

チャージポンプは1つ以上のコンデンサーに入力電源から電荷を充電し、それらのコンデンサーの接続状態をスイッチなどで切り換えることで、入力電圧に対して、昇圧、降圧、反転電圧を生成することができます。
下図5はチャージポンプの動作原理をイメージしたものです。

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図5.チャージポンプの動作原理

 

入力電源によって電荷を蓄積されたコンデンサーは一時的な電池として機能します。
これを示したのが図5-1です。また、このコンデンサーのことをフライングコンデンサーと呼びます。
コンデンサーを電池と考えれば、その電池の繋ぎ方を変えることで様々な電圧を生成できることが容易に想像できます。図5-2にチャージポンプによる降圧、昇圧、反転電圧生成の考え方を示します。
同じ容量のコンデンサーC1、C2を直列に接続してVinで充電すると、それぞれのコンデンサーの電圧はVin/2です。これを並列につなぎ変えると一時的なVin/2の電圧の電池として機能させることができます。これがチャージポンプの降圧の原理です。
同じ容量のコンデンサーC1、C2を並列に接続してVinで充電。コンデンサーC1、C2を直列につなぎ変えてVinの+側に接続すると一時的な3×Vinの電池として機能させることができます。これがチャージポンプによる昇圧の原理です。
Vinで充電されたコンデンサー の電荷には電池同様に極性があります。電池の+極をGND=0Vに接続すると、-極の電位が-Vin電位の負電圧になるのと同様に、Vinで充電されたコンデンサーの+電荷側を GND=0V に接続することで、-電荷側を-Vin電位の負電源として機能させることができます。これがチャージポンプによる反転電圧生成の原理です。

では、実際のチャージポンプの制御はどのようにしているのでしょうか。ここでは、一番簡単な 2倍昇圧のチャージポンプの例を図5-3にしたがって説明したいと思います。

 

Step1:スイッチS1をGND側、スイッチS2をVin側に接続することで、フライングコンデンサーCfをVinで充電。出力負荷へは、電圧保持用の平滑化コンデンサーCoutからVinの2倍の電圧と、負荷が必要とする電流を供給。

Step2:スイッチS1をVin側、スイッチS2をVout側に接続することで、CoutをVinの2倍の電圧で充電するとともに、出力負荷へVinの2倍の電圧と負荷が必要とする電流を供給。
Step1とStep2を交互に繰り返すことで、安定した電圧と電流が供給可能になります。

 
●チャージポンプの特徴

図5で示しましたように、動作原理は非常に簡単であり、設計も極めて容易です。今までの連載を読んでいただいている読者の方は既にお気づきかもしれませんが、リニアレギュレータやDC/DCコンバータのように定電圧とするためのフィードバック制御をしていないため、動作を安定化させる位相設計も必要ありません。
DC/DCコンバータと同様に降圧、昇圧、反転で電圧の生成が可能です。外付け部品も出力コンデンサーCoutと1つ以上のフライングコンデンサーCfだけです。
ただし、図5に示した例のように一時的な電池の役目を果すフライングコンデンサーへは入力電源Vinで充電するため、一時的な電池電圧としてはVin電圧、またその1/2、1/3、1/4程度ですので、出力電圧のステップが粗く、細かい調整をすることは出来ません。また入力電圧に比例して出力電圧も変動してしまいます。高精度を要求される用途には適用できません。また、出力電流もフライングコンデンサーの容量で制限されるだけでなく、フライングコンデンサーに充電中の出力電流は出力側のコンデンサーからしか供給できないことから、負荷電流が大きくなる場合にはリップル電圧も大きくなってしまうため、大電流を必要とする用途には不向きです。

 

おわりに

本講座では5回にわたってDC/DCコンバータを連載しましたが、主に非絶縁方式のDC/DCコンバータを例にとりあげ、その基本的なことしか言及できませんでした。絶縁方式のDC/DCコンバータについては一例としてフライバックコンバータしか説明できていません。まだDC/DCコンバータの入り口に立ったばかりというところでしょうか。
本講座は入門編という位置づけということもあり、今回でDC/DCコンバータの連載を一旦終わりにしたいと思います。

さて、これまでは入力電源から各デバイスが必要とする電圧と電流を供給するための電源ICとして、リニアレギュレータとDC/DCコンバータ(スイッチングレギュレータ)について説明してきました。これらの電源ICが正常に動作するためには、入力電源から正常な電圧が供給されていること、また電源IC自身が期待する動作をしていなければなりません。そのため、これらの電源が正常に動作しているかを監視する必要があります。
次回から、この役割を担う電源監視ICにテーマを移していきたいと思います。

 
最後まで読んでいただきありがとうございました。
 


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s執筆者プロフィール
講師S (リコー電子デバイス株式会社 設計センター 設計技術部)
入社以来長期に渡り、ゲートアレイ・マイコン・メモリ・電源ICなどアナログ・デジタルの各種設計に携わる。その後、複合電源ICのテスト技術も極める~設計・テスティングとその教育のスペシャリスト。毎年入社してくる技術者の卵に対する、聞き手目線の優しい解説と丁寧な指導は社内でも有名。その実績を買われ、現在はシニアエンジニアとして後進の育成や新規技術の相談役として活躍中。

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