職場の一人ひとりがやりがいを持ち、イキイキと充実した状態で仕事ができること、そして、そういう職場環境を通じて組織が最高のパフォーマンスを発揮できることを実現するための学問であり実践的な方法論であるポジティブ組織開発の具体的な内容をご紹介します。


こんにちは、RDPi 石橋です。

前回から、ロバート・クイン「Lift : The Fundamental State of Leadership」を参考に、ポジティブ組織開発を紹介しています。ポジティブ組織開発とは、職場の一人ひとりがやりがいを持ち、イキイキと充実した状態で仕事ができること、そして、そういう職場環境を通じて組織が最高のパフォーマンスを発揮できることを実現するための学問であり実践的な方法論です。今回から具体的な内容を紹介していきます。

 

組織文化タイプ

組織文化は多様で類型化するのが難しいといわれていますが、まずは、ロバート・クインらが開発した、ビジネスを有効に進める組織の在り方を整理、分析し、様々な活用実績がある Competing Values Framework (CVF) を紹介したいと思います。

 

The Competing Values Framework of Organizational Effectiveness

図172 The Competing Values Framework of Organizational Effectiveness

 

CVF の縦軸は、柔軟性を指向する組織構造(Flexible Structures)なのか、安定性を指向する構造なのか(Stable Structures)という分類です。柔軟性を指向するというのは扱う製品群や組織形態が常に変化するような組織であり、安定性を指向するというのは予測や計画などの管理を重視する組織です。

横軸は、組織内部に焦点を置く組織なのか、組織外部に焦点を置く組織なのかという分類です。組織内部に焦点を置くというのは団結や統合を重視する組織であり、組織外部に焦点を置くというのは競合との競争や差別化を重視する組織です。

この二軸により組織文化は4つに分類されます。それぞれ次のような特徴を持ちます。

競争力重視タイプ

利益、目標、効率などの度合いを基準にして、生産性や競争優位性がどのような状態なのかで組織が有効に機能しているかどうかを判断する組織です。組織内部の管理を重視した上で、常に他の組織との相対的な位置づけや関係を明確にして高い収益性や目標達成のための競争優位性を確保するというマーケット文化ということができます。

協調重視タイプ

意欲、品質、教育などの度合いを基準にして、協調性や組織開発がどのような状態なのかで組織が有効に機能しているかどうかを判断する組織です。社員全員が同じ価値観や目標を共有し、一体となっている家族文化ということができます。

管理重視タイプ

情報利用、安定性、管理レベルなど度合いを基準にして、信頼性や説明責任がどのような状態なのかで組織が有効に機能しているかどうかを判断する組織です。規則や方針によって問題を起こすことなくスムーズに仕事が進むことを重視する官僚文化ということができます。

創造性重視タイプ

適応、成長、活用などの度合いを基準にして、適応力や革新性がどのような状態なのかで組織が有効に機能しているかどうかを判断する組織です。組織は未来に備えるための新商品や新サービスの開発を重視し、起業家精神や創造性を刺激するイノベーション文化ということができます。

 

組織文化タイプの測定

組織のパフォーマンス向上のためには、現場の組織文化が、経営者や組織トップが想定しているビジネスに適した組織文化と一致していることが大切です。そのためには実際の組織文化を把握する必要がありますが、OCAI (Organizational Cuture Assessment Instrument) というツールを使うことで、実際の組織が前述の4つの組織文化のどれにあたるのかがわかります。

OCAI は (1) 組織の特徴 (2) リーダーシップの在り方 (3) 従業員に対するマネジメント・スタイル (4) 組織を結びつけているもの (5) 重視している価値観 (6) 達成や成功の基準 という6つの項目について、それぞれ4つの答えが用意されています。この4つの答えの優先順位を答えるというものです。組織を構成するメンバーに回答してもらい集計することで、現在の組織文化を把握することができます。

 

組織文化の測定ツール

図173 組織文化の測定ツール

 

以下の図はこのツールを使って組織文化を測定した例です。組織Aは創造性重視タイプ、組織Bは管理重視タイプということがわかります。

実は、組織Aは社長が開発標準や ISO などの規定を重視している会社の開発部門で、実際に多くのスタッフや時間を割いて ISO などの規定の充実やその遵守に力を注いでいます。ところが開発部門の現場は、新規顧客向けの製品開発や要素技術開発に力を入れているので、このように創造性重視タイプの組織文化となっています。ただ、ISO の社内審査などの必要なことは実施していることと、競争力重視タイプの点数が比較的高いことからもわかりますが、売上げ目標を毎年クリアしているため、社長はとくに問題視していません。しかしながら、開発部門は ISO 対応や年々増加するルールへの対応に多くの時間を割くことになり、開発効率を上げることができないという問題を抱えているのです。

組織Bはトップが教育や人材開発に力を入れており、また、旅行や運動会などの社内イベントにも力を入れています。従業員は家族だという考え方です。しかし、従業員教育の一環で採用した有名なコンサルタントが標準化を徹底的に進めたことで、責任・役割分担の明確化や承認などの手続き重視の仕組みの導入に力を入れたため、組織間の壁が高くなり、いわゆる官僚化が進んでしまっているのです。測定結果が管理重視タイプの組織文化となっているのはこのためです。大きな組織ではないので、必要以上に事務手続きが多くなり非効率なことになっています。

 

組織文化の分析例

図174 組織文化の分析例

 

高いパフォーマンスを実現する組織文化とは

どのようなビジネスをどのような組織文化で行うのかは、様々な選択肢があり、経営者やトップが決断するべきものですが、高いパフォーマンスの組織にするためには、決めたあるべき組織文化と実際の現場の組織文化とが一致していることが大切なのです。今回は、組織文化が4つのタイプに分類できること、そして、組織文化タイプを測定することができるということを紹介しました。つまり、自らのビジネスにあったあるべき組織文化を明確にして、実際の現場をあるべき組織文化に合わせることが可能だということです。

あるべき組織文化に変えるために必要となるのが、前回紹介したポジティブ・リーダーシップです。興味深いことに、ロバート・クインによれば、ポジティブ・リーダーシップの在り方と組織文化の在り方とは同じフレームワークなのです。前回紹介した Fundamenta “state” of Leadership の図を見てもわかるように、柔軟性と安定性という縦軸と内側と外側という横軸によって組織文化が分類できることと同様に、組織文化を変えるために必要なリーダーシップも同じ縦軸と横軸とで分類し明確にすることができるのです。この詳細は次回、解説したいと思います。

 

今回紹介した CVF は、高いパフォーマンスを実現するためのあるべき組織文化と現状の組織文化を明確にすることで、どのようなギャップがあるのか、どのように変える必要があるのかといったことを議論することを可能にします。ぜひ、自分の組織がどの組織文化タイプなのかを考えてみていただければと思います。測定ツールの使い方や分析方法などは、今回の記事だけではわかりづらいところがあるかもしれません。その場合はお問い合わせいただければ幸いです。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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●執筆者プロフィール  石橋 良造

日本ヒューレット・パッカード (HP) に入社し、R&D 部門で半導体計測システムの開発に従事した後、設計・製造改革プロジェクトに参加。ここで、HP 全社を巻き込んだ PLM システムの開発や、石川賞を受賞した製品開発の仕組み作りを行い、その経験をもとに 80 社以上に対して開発プロセス革新やプロジェクト管理のコンサルティングを実施。

コンサルティングを続ける中で、より良い改革のためには個人の意識改革も合わせて実施する必要があるとの思いが強くなり、独立して株式会社 RDPi を設立した後、北京オリンピックで石井慧を金メダルに導いた(株) チームフローのコーチ養成コース、および、一般社団法人 日本ポジティブ心理学協会の公式プラクティショナー・コースを修了し、個人のやる気を引き出す技術の開発と、開発プロセスやプロジェクト管理の仕組み改革とを融合した改善活動を続けている。

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