「LEDの光が遮られたら、プレス機の電源を遮断する」という、安全のためのある特定の1つの機能を、安全機能(Safety Function)という。そして、この安全機能を実現するために関係するシステムを安全関連システムという。この安全関連システムは、対処するリスクの高さに応じて信頼性が高くないとならない。もしもその安全システムが故障して動作しなくても、最悪指をケガする程度のリスクなのか、その安全システムが故障して動作しなければ、最悪は数万人が死傷するリスクなのかによって、当然ながらシステムに求められる信頼性のレベルは異なるし、掛けるべきコストも異なる。この文脈で「信頼性」という言葉が登場したが、信頼性という言葉の定義はとても難しい。たとえば火災報知機の場合、火事の時には100%警報が鳴るが、平時でも体温の高い人が来ると誤動作で鳴ってしまう製品と、誤動作はほとんどないが、本当の火事の時に1%程度鳴らないかもしれない可能性がある製品と、どちらが「信頼性」が高いと考えるだろうか。しょっちゅう誤動作して消防車を呼ぶ迷惑を鑑みれば、後者の信頼性が高いといえるかもしれない。機能安全では、万一の時にどれだけ確実に安全側に動作するのかが指標のため、前者の信頼性が高いと考える。このように信頼性という単語では、機能安全がシステムに求めるスタンスが正確に伝わらない可能性があるため、「安全完全性」という言葉を使う。リスク分析の結果、対策として実行すると決めた「ある安全機能」が動作する確からしさを安全完全性と呼ぶ。その意味を踏まえた上ならば、気分的には「信頼性」と同義だととらえて支障はない。