《 ZIW2016 講演レポート 》─ オムロン株式会社様による講演内容のご紹介 ─
製品の小型、高密度、ローコスト化など、製品化までに解決すべき課題が増え、設計難易度も上がることが、商品開発者の負担に繋がっていることは言うまでもありません。このような状況を打開するためオムロン株式会社様では、より上流工程での開発フロントローディングを推奨し、組織的に取り組まれてきました。その取り組みのポイントは何か、成功の秘訣はどこにあるのか、実際の経験を元にご紹介いただきました。


ご講演の要旨
●より上流での熱設計フロントローディングを行うために、「熱」に対して意図をもって設計する
●CAEを開発上流で活用するには、精度とスピードのバランスを極める
●CAEと熱計算の使い分けが重要

 
 

オムロン株式会社様のご紹介

オムロン株式会社は、京都に本社を置き、1933年に創業者 立石一真が高精度のレントゲン撮影用タイマを開発したところから始まり、創業から約80年を迎えます。事業は、血圧計や体温計といったヘルスケア事業だけでなく、制御機器を中心とした電子部品、車載、社会システムなど多岐に渡る事業を展開されています。自動車の電動パワーステアリングや、駅の自動改札機など、生活の身近なところにオムロンの製品があり、暮らしを便利に、快適にしています。

 
 
 

オムロンが取り組む開発フロントローディングとは

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オムロン株式会社
グローバルものづくり革新本部
開発プロセス革新センタ
開発フロントローディング部
下山 英司様

製品の小型化・高密度化など商品化するまでに解決すべき課題が増え、下流工程での課題対策には時間がかかり、コストアップの要因に繋がるため、開発の上流工程における熱やノイズの課題解決は、ますます重要です。では、開発上流の課題解決へのアプローチはどうすればいいのでしょうか。オムロンでは、やはりシミュレーションが有効だと考えています。「もの」をつくる前に、コンピューター上で設計して検証する。CAEをいかに活用するか、という問いに集約できると考えています。

オムロンでは、CAEを組織的に活用するために、

・道具(CAE及び実験環境といったハード)
・全社共通のCAE技術
・エキスパート人財

 

の3つが重要であると考えています。私たちはこれら3つを活用してフロントローディングを推進しています。

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成功には「精度とスピード」のバランスが鍵

CAEを開発上流で活用するポイントは、「精度とスピードの適切なバランス」であると考えています。解析にかかる時間はそのままに、精度を維持するモデリング手法を製品毎・部品毎に構築し、設計課題となる部分にフォーカスした最適な結果を得られる技術開発に取り組んでいます。

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1枚のプリント基板の熱流体解析においても、モデリングを工夫することで、メッシュ数の削減と適切な解析精度を両立させることができます。モデリング手法を製品全体の設計に応用することで、設計された3DデータをもとにCAEを用いて検証をするだけでなく、CAEの結果をもとに詳細設計を進めることで、開発期間全体の短縮が実現できています。

オムロンでは、「簡易モデルで精度を担保する」ために、「モデリング手法」と併せて、開発商品の試作ステップ毎に試作品とCAEのコリレーションを行い、完成されたCAEモデルをベースにして、次開発商品の初期熱検討の精度を担保しています。これまでのCAEを活用した商品開発設計の手法を、他製品に展開し、「全社共通CAE技術」を確立しました。また、この情報を活用することで、現在は熱問題に起因する手戻りは殆ど見られなくなりました。

 
 

守りから攻めの設計へー熱設計は専門部隊ではなく、設計者自身が行う

CAEを活用することで、従来の熱対策という手法から改善され、設計の後戻りは削減できました。しかし、商品の検討段階から熱を考慮して、熱対策自体を無くしていかなければならない。という課題も見えてきました。

ここからは、より上流での熱設計フロントローディングについてお話しします。より上流での熱設計フロントローディングとは、熱の「設計」を行うことで、「問題対策」そのものを削減する取り組みです。

オムロンでは、次の2つの取り組みを進めています。

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熱「設計」行為の開発プロセスへの適用については、熱設計計算ツールとして「ThermoSherpa」を導入しました。熱設計を専門部隊ではなく、設計者自身で行うようにするため、熱を計算するという行為を開発プロセスへ組み込む取り組みや、これまでの過剰なCAEとの使い分けるなど活動を行っています。

 
 

オムロンが採用した、熱設計計算ツール ThermoSherpaとは

ThermoSherpaは、構想設計段階から熱設計を行うための支援ツールです。CAEと異なり、3Dモデルなど必要なく、伝熱基礎式や熱回路網法などを用いて熱計算を行います。構想段階の機能設計を行う際から活用できます。

 

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ある制御機器の開発で、リーン製品開発方式が採用されました。この製品のコンセプトは、

  • 「性能の安定性」 ≒ 回路・性能部品特性 ≒ 消費電力(発熱)
  • 「使いやすさ」 = 設置しやすさ = サイズ・重さ(放熱)
  • であったため、熱観点でのトレードオフグラフの作成が必要となりました。

    エレキの観点では、消費電力(≒発熱)・実装面積・基板構成、構造観点では、筐体面積・筐体厚み・筐体重量など、トレードオフの要素が多く、従来のように熱CAEでトレードオフの検討をするには時間がかかりすぎると判断し、ThermoSherpaの「筐体冷却方式目安計算機能」を用いて、筐体寸法・消費電力・外気温度・筐体内部温度上限の組み合わせ54通りを1時間程度で計算しています。

     

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    この段階で筐体内部温度上限を満足できない構造設計の条件をふるいにかけることで、エレキ・構造の設計担当者が検討を進めるべき設計条件を一目で共有・判断することができました。

    ThermoSherpaの活用には、次の効果があったと考えています。

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    お客様サポートとしてのThermoSherpaの活用

    オムロンでは、主力製品のひとつである制御機器のお客様向けに、制御盤設計をサポートするWebサイトを開設しました。機能の一つとして、「筐体冷却方式目安計算機能」を用いて、熱のリスクを確認しながら機器の選定を行って頂けるコンテンツを用意しています。

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    制御盤設計では、「熱課題のためにトラブルが多発」することが多く、その背景には、ベテランエンジニアの減少や若手エンジニアのスキルが追い付いていないこと、また制御盤設計を行うエンジニアにとっては、熱シミュレーションソフトを導入・活用するには、コストや、3Dモデルの準備等の実務面でハードルが高いことがわかっています。

    このコンテンツを利用していただくことで、制御盤の部品リストを作成したのち、必要最小限の項目を設定するだけで、盤内の温度・余裕度を簡単に確認できるようになっています。

     

    ご静聴ありがとうございました。