東京大学 大学院工学系研究科 鈴木宏正教授先月開催されたZuken Innovation World 2015では、内閣府とNEDOが進めている「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)/革新的設計生産技術」に採択された「革新的デライトデザインプラットフォーム技術の研究開発プロジェクト」についてご紹介いただきました。このプロジェクトは、東京大学が中心となりラティス・テクノロジー社と図研の3者で研究開発を進めています。


はじめに

 

国プロの概要についてご紹介させていただきます。これは、昨年度より内閣府とNEDOが進めている「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)」と呼ぶプロジェクトの一部です。SIPの中には10個のテーマがあり、そのうちの1つに「革新的設計生産技術」と題するものがあります。このテーマに対して、我々のプロジェクトを含む24個のプロジェクトが採択されました。この24個のプロジェクトの多くは、いわゆる3Dプリンターを中心とした「新しいものを作る製造方法」に関わるものですが、「革新的な設計方法」に関わるプロジェクトが数テーマ含まれています。この「革新的な設計手法」に対して「デライトデザイン」を標榜して研究開発が行われています。我々、東京大学も以前より「デライトデザイン」に関わる技術として、「感性に基づいた魅力品質設計ができる環境」すなわち「デライトデザインプラットフォーム」を提案しておりました。それが採択されて、昨年度からプロジェクトを始めています。

 

 

魅力品質、デライトデザインとは?

 

魅力品質

図1(クリックで拡大)

図1は、製品の品質に関する狩野モデルの図です。狩野先生という方が、品質について提唱されたものですが、これを設計に置き換えて我々は考えています。右下が「Must設計」です。製品が持っていてあたりまえの品質、自動車でいうと走る、曲がる、止まるという機能の設計です。これが少しでも満たされていないとお客は非常に不満を持ちます。もうひとつが「Better設計」です。例えば、燃費が良いとか、故障しづらいというような性能品質を向上させる設計を指します。

 

この「あたりまえ品質」と「性能品質」を伸ばすことによって、日本はものづくりを進めてきたところがあります。しかし、これだけでは競争力をなかなか得られなくなってきています。そうしたことから「製品の魅力品質」を向上させるための「デライト設計」(図1の左上)の必要性が増えてきています。それがなくても性能的には問題ないが、少しでもあればお客様に非常に喜んでもらえる、このような品質を作り込んでいく必要があるのではないでしょうか。ただ我々は、製品としては「魅力品質」だけでは成り立たず、「あたりまえ品質」と「性能品質」があってこそとも考えているため、広い意味での「魅力品質」とはこれら3つの品質すべてを指すものとして考えています。

 

デライトデザイン

図2(クリックで拡大)

図2に示しているのは、いくつかの製品イメージです。例えば性能品質は、メモリの容量だとか、風量、消費電力などを指します。それに対してデライト品質は、操作感とか、心地よさなどを指しています。

 

キーワードは“感性に訴えるものづくり”。魅力品質を上げる方法はいろいろあると思いますが、このプロジェクトでは「感性」というものに注目してプロジェクトを進めています。

 

先ほども述べたとおり、魅力的なところだけ作り込んでも良い製品にはなりません。「デライト品質」は「性能品質」や「あたりまえ品質」も含んでいるものとし、これら全ての品質を考慮ができる設計支援の枠組み作りを行っています。

 

デライトデザインプラットフォーム

図3(クリックで拡大)

この設計支援の枠組みに、「デライトデザインプラットフォーム」という名前をつけています。さらに我々はこれを、「感性データベース構築技術」「感性モデリング技術」「感性統合化技術」「感性リバース技術」の4つの技術分野に分類し研究開発を行っています。

 

それぞれの技術分野の説明をするにあたり、ヘアドライヤーの製品音を例に説明いたします。

 

 

 

 

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