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COTS:コッツ
(Commercial Off-The-Shelf)





  • 『棚からすぐに出してすぐ使える市販品』という意味ですが、もともと欧米の航空宇宙や軍事関係の調達に於いて、民生用の機材を活用することを意味しています。現在は、分野として航空宇宙や軍事に限らず、受注品・特注品を使用することが多い産業用分野においても、民生品の活用を指して言うこともあります。意味することや意図は同じです。

  • 特に計算機の分野では、1990年代より急速に民生の分野で市場が拡大し、それが急激な技術革新をもたらしました。このため、量産を前提としてない受注分野では、「信頼性」や「長期供給、長期保守、技術継承(これらを含めて制御可能、とも言いますが)」などの要素を何らかの方法で担保しながら、市販の製品を活用し、開発費や製造費を削減すること、ならびに開発期間を短縮し新しい技術を取り入れやすくすることが求められてきました。

  • この観点は機能安全の議論でも常に意識されているもので、今回ご紹介した通信部分のBlack Channelという思想は、まさにその意識の現われといえます。

  • 機能安全という大事な思想は、単なる「正論」や「宗教」で終わらせてはなりません。現実の社会において、その真価を発揮させるためには、常にコストとのせめぎあいに折り合いをつけなければなりません。それをしない安全性や信頼性の議論は、学問的には意味を持っても、本質的に世の中の現実に貢献するものにならないからです。

  • その半面、コストを意識するが為、信頼性や制御可能性を犠牲にしてもなりません。この議論はインフラを扱う私達のような業界では、常に考え続けるべきことです。

  • しかし、このメルマガの初回でお話したとおり、市販の電気製品であっても、非常に原理が複雑で、常に新しい技術を採用する電子機器には、様々なリスクが内在しています。そしてそれが万一なにか問題を発生した場合、その影響は世界的な規模で予測できないダメージを企業に与えるかもしれません。その観点から、機能安全を一般的な電子機器の信頼性向上の手段として活用できる点をご紹介していますが、それは、このCOTSについての捕らえ方についても同様ではないかと考えています。

  • 今回のメルマガでは、構想設計の中核をなす技術的な議論、信頼性についてご紹介してきました。しかし、いずれも電子部品は特別な受注品ばかりを扱うわけにはいきません。ほとんどは量産の電子部品で実現することが前提となります。

  • 今回は取り上げませんが、現実の開発の現場では、信頼性の議論と併せ、このCOTSの議論を行い、製品のライフサイクルにとって問題が無いのかどうか、つまり「制御可能なのか」という観点を分析することも構想設計の大事な作業です。