基板と熱設計

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03


☑基板と熱設計

18. 製品構造と熱設計

株式会社ジィーサス

2012.07.26

こんにちは、株式会社ジィーサスの藤田です。
日本の展示会・セミナーシーズンは6・7月と9・10月に集中していますが、ジィーサスもJPCAショー、設計・製造ソリューション展、テクノフロンティアと、前半の主要展示会を乗り切ったところです。特にテクノフロンティアでは、弊社の熱設計ツールThermoSherpaのバージョン1.5でオプション設定される「実装基板温度計算」機能を初めて展示しました。この機能はまた別途説明しようと思いますが、基板上の部品をマウスで動かして配置後、すぐに温度分布が見られるという機能で、会場でもなかなか好評でした。

さて今回は製品構造と熱設計ということで、主に基板の実装形態ごとの熱設計の違いを述べてみたいと思います。

現代の製品のほとんどに基板が入っていますが、その実装形態は様々です。携帯電話からテレビ・PCなどの情報家電、洗濯機・冷蔵庫などの白物家電、車載のいろいろな電装機器、通信や電力などのインフラ機器、医療から宇宙分野まで、基板は実にさまざまな製品に使われており、環境や製品構成や回路構成の難易度に応じて、その実装構成もさまざまです。しかし、見方を変えれば基板はただの「板」なので、発熱する板の設置条件というように割り切ってしまえば、実装条件は案外単純化できます。

長方形の板の設置方法は、水平に置くか、垂直に置くかのどちらかです(あえて斜め置きは無しとします)。基板の場合は水平に置くとき、A面を上にするかB面を上にするかの違いがあります。また垂直に立てるとき、長辺か短辺のどちらを垂直にするかの違いがあります。つまり基板の設置方法は4種類あるということです。あとはその基板を筐体に何枚、どのように実装するのかの違いと、筐体と基板の隙間というか、空間余裕度の違いになります。

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たとえばスマートフォンだと薄いので基板は水平に1枚か、2枚以上でも同一平面に実装すると思います。同じ薄型でも液晶テレビは基板が縦に実装されます。デスクトップPCだとマザーボードにグラフィックカード等が直角に実装され、これがタワー型筐体だとマザーボードが縦に、据え置き筺体だとマザーボードが水平に実装されます。通信装置だとサブラックにマザーボードが縦に実装され、直交してドウターボードが複数枚実装され、そのサブラックが縦に数段実装されたりします。

さて、放熱を考えた場合、基板はどのように実装したら有利でしょうか?

一般に「水平か、垂直か」という表現は重力方向に対しての向きを表現しますが、放熱を考慮する場合は空気の流れに対して水平か、垂直かを考えます。自然空冷の場合、空気は浮力で重力方向と平行に流れるので、重力方向と同じ表現でいいのですが、強制空冷の場合はファンの取付面によって違ってきます。それでは空気の流れに対して基板は水平に置いた方がいいでしょうか?垂直に置いた方がいいでしょうか?


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前に対流熱伝達の話を説明した時、対流による伝熱量を増やすには単位時間あたりに固体に接触する空気分子の数を増やせばいい、そのために強制空冷で空気分子をいっぱいぶつけたほうが冷える、というように説明しました。そのためには流速が速いほうがいいのですが、空気の流れに対して基板が垂直だと流れがせき止められるので、流速が落ちてしまいます。このため一般には流れに対して基板を水平に置いた方が、垂直に置くより冷えるということになります。したがって自然空冷の場合は重力方向に基板を立てたほうが冷えやすいし、強制空冷の場合はファンと吸気口を結ぶ方向に平行に基板を置いた方がいいことになります。

しかし、たとえば自然空冷だが水平に置けば基板が1枚で済むのに、基板を縦置きにするためわざわざ複数枚に分割することは、しませんよね?ふつうはコスト優先で製品設計を行います。でも基板分割をしないでファンを付けた場合と、基板を分割して垂直置きした時の冷却効果とコストが同じだったら、どちらを選びますか?製品設計ではこのように冷却構造とコストがトレードオフの関係になるので、基本構造を決める構想設計段階での熱設計が重要なのです。


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