基板と熱設計

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03


☑基板と熱設計

10. 熱対策の進め方1

株式会社ジィーサス

2011.05.26

th_110526_4.jpgそれでは次に対流熱抵抗の面積を増やすにはどうすればいいでしょうか?これは単純に空気に触れている面積を増やせばいいわけです。筐体の外形寸法を変えずに表面積だけ増やすにはどうするかというと、筐体表面を凸凹にすればいいわけです。つまり筐体面をヒートシンクにしてしまえばいいわけです。実際にこの例題の筐体の表面積を6面とも約2倍にすることで、計算上は筐体内部温度上昇を60℃以下にできそうです。しかし、筐体全面をヒートシンクに加工するとかなり筺体が高額になりそうです。それでは放射熱抵抗の面積を増やすにはどうすればいいでしょうか?

これも対流熱抵抗と同じように筐体表面をヒートシンクにしてしまえばよさそうですが、実はそうではありません。熱放射の場合は相対する面に対し互いに熱を放射・吸収してしまうため、実質的に放熱に寄与しないことになってしまいます。したがって放射熱抵抗を小さくするには、相対する面以外の面積を増やす必要があり、これは筐体の外形寸法を大きくすることになってしまいます。

次に熱抵抗を構成する変数のうち、面積以外の変数を考えてみましょう。熱伝導の場合は「熱伝導率を大きくする」という対策が考えられます。これはつまり「筐体の材質を熱伝導率の良いものにする」ということです。具体的には「金属筺体とプラスチック筐体のどちらが冷えるか?」ということですが、たとえばアルミの熱伝導率が約200W/(mK)、ポリスチレンの熱伝導率が約0.1 W/(mK)ぐらいなので、熱伝導率としてはアルミのほうが2000倍ぐらいよいことになります。100㎜×100㎜の面積で板厚が1mmの場合を考えると、アルミ板の熱抵抗は5×10-4℃/W、ポリスチレンの熱抵抗は1℃/Wとなります。しかし、筐体の場合は筐体の板厚内部の熱抵抗がいくら低くても、板の内側と外側で対流と放射の熱抵抗があります。たとえば100㎜×100㎜の面積で板厚が1mmの垂直な板で自然空冷の場合、対流熱抵抗は筐体内外面とも約22.5℃/W、放射熱抵抗は内面が約1℃/W、外面が約0.8℃/Wというように、板厚内部の熱抵抗に対してとても大きな熱抵抗が存在します。したがって筐体内面から外面への熱の移動(これを熱通過と言っています)を考えるときは、筐体材質の熱抵抗はあまり重要ではありません。

次にその対流における熱抵抗ですが、これはかなり影響します。先ほどの100㎜×100㎜の面積の場合、たとえば筐体内面の風速が1m/sだとすると、内面の熱抵抗は約8℃/Wとなり、自然空冷の場合の約1/3となります。しかし、筐体内部の風速を1m/sにするにはファンが必要です。ファンを付けることは一般に構造的にもコスト的にも信頼性的にもインパクトが大きいので、かなり慎重な検討が必要になります。もちろんそのほかにも騒音とか埃の問題が付随することをよく考えて、ファンの要否を検討することが重要です。

さて、この事例で考えられる対策はこれだけでしょうか?実は通風口による影響をまだ検討していません。上の例で強制空冷の場合を検討していますが、通風口は考慮していないので内部空気をかき回すだけのファンでしかないのです。では通風口を設けることによる影響はどれくらいでしょうか?それはまた次回に説明したいと思います。



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●執筆者プロフィール
藤田 哲也
1981年沖電気工業(株)入社。無線伝送装置の実装設計、有線伝送装置の実装設計、および取りまとめを経て、2002年(株)ジィーサス入社。熱設計・EMC設計・実装技術のコンサルティングや教育に従事。2008年から回路・基板・実装に必要なトータル技術を提供する設計サービスに従事している。

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