基板と熱設計

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03


☑基板と熱設計

4.熱とは?

株式会社ジィーサス

2010.10.28

生物を考えたついでに、「人間の許容温度」を考えてみましょう。
皆さんの体温は36~37℃位だと思いますが、これは先ほど書いたように体内のいろいろな場所でエネルギーを使ったことによって暖められた結果です。では人間は何℃までが「動作保障温度」なのでしょうか?th_101028_2.JPG

体温計は37.5℃位から色が変わっているので、それ以上は危険温度ということになります。いろいろ調べると人間の動作保障温度は36~37.5℃で、それ以上は高体温症、それ以下は低体温症だそうです。
風邪をひいて熱を出すと40℃を超えることがありますが、これはかなり危険なことで、42℃を超えると酵素系障害の発生、45℃ではたんぱく質の変質(ゆで卵状態)となるそうなので、42℃が人間にとっての「破壊温度」のようです。人間の動作温度範囲って1.5℃しかないのですね。

それに比べたらエレクトロニクス製品は、たとえば家電類だって10~40℃位の動作温度範囲を持っていますから、かなり動作温度範囲は大きいです。人間と機械を一緒にするなと言われそうですが、確かに人間と機械で違う点もあります。
たとえば機械には「保存温度」という温度があります。これは動作が停止した状態で越えてはいけない温度範囲ですが、生きている生物にはありませんね。(冬眠中のクマなどにはあるのかもしれませんが。)死んだ生物、身近な例でいえば食料ですが、たとえば生鮮食品には保存温度と賞味期限がありますが、保存温度はかなり低いですよね?かなり低い温度にしないとお肉や野菜はすぐに腐ってしまうのに、なんで生きている時は高い温度でも腐らないのでしょうか?

これにはいろいろな理由があるようですが、私なりの解釈で説明すると、生きている時は食料などからエネルギーを作って体内で物質の合成分解を行うことで生物の形を維持するのと共に腐敗菌などの侵入を防御していますが、死んでしまうと合成が止まって酵素による分解だけが進み形状維持ができなくなるのと共に、腐敗菌等の侵入を許してしまうため、形状を維持でき、かつ腐敗菌が活動しにくい温度まで下げないといけないようです。
つまり生物が生きている時は絶えず生成と分解を繰り返している、つまり絶えず生まれ変わっている状態であるといえるようです。

これに対しエレクトロニクス製品はどうでしょうか?エレクトロニクス製品は死んでも、つまり電源を切っても腐ることはありません。だから常温状態でも形状を維持しているともいえます。しかし高温で放置すると外部からの熱エネルギーで化学変化や酸化が促進されて形状が維持できなくなる場合もあるので、保存温度というものが規定されているのですよね?スイッチが入っている状態ではもちろんこの変化が促進されるので、エレクトロニクス製品にも寿命があるわけです。

th_101028_3.JPGでも本当にエレクトロニクス製品は常温で変化しないのでしょうか?たとえばはんだは低温で溶けるから電気部品の接続に使われますが、金属が溶けるということは原子間結合が弱い状態とも考えられるため、たとえばそこにほかの影響、たとえば酸化などの影響があると、はんだの元素が常温でも移動して酸化物を形成し、元の場所には空洞が残るので結果的に強度劣化を引き起こす場合があると言われています。
いずれにせよエレクトロニクス製品もスイッチが入った状態では「生きて」いるのですが、生物のように絶えず分解生成を繰り返すわけではないので、熱による影響で製品寿命に影響することになります。

今回は熱の説明のつもりが、生物学的な話になってしまいました。でもエレクトロニクス製品も生物も熱によって寿命が左右されることを、少しは身近に感じていただけたのではないでしょうか?次回は熱と温度の関係をもう少し詳しく述べていきたいと思います。



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●執筆者プロフィール
藤田 哲也
1981年沖電気工業(株)入社。無線伝送装置の実装設計、有線伝送装置の実装設計、および取りまとめを経て、2002年(株)ジィーサス入社。熱設計・EMC設計・実装技術のコンサルティングや教育に従事。2008年から回路・基板・実装に必要なトータル技術を提供する設計サービスに従事している。

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