Club-Z特集:Zuken Innovarion World 2015特別レポート3

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

☑Club-Z特集

《 Zuken Innovation World 2015 特別レポート③ 》
「SPICE誕生から40年、解析技術はメカトロ設計を救う」
 静岡大学 電子工学研究所 浅井秀樹教授による講演内容のご紹介

2015.11.26

■ 日本のメカトロニクス産業へ

ご存知のように、日本の産業、特に半導体はいま厳しいところにいます。一方でオートモーティブの産業はいますごく景気が良いようです。考えてみるとオートモーティブというのは、我々がいままでターゲットにしてきたノイズ問題なども、すごく厳しい状態です。近い将来オートモーティブとロボットというものが産業として大きなマーケットになるのではないでしょうか。

私は昔仕事で四足歩行ロボットに絡んだことがあるので、基本的にロボットが好きで、面白いと思っています。この後の講演で「ロビ」を設計した高橋さんが講演されるということで、今日は自分のロビを持ってきました。ロビの何が面白いかというと、人の声に反応するところです。頭の中には電子基板が入っていて、ちゃんと音声認識や画像認識もできる、そういう機能がインテグレートされたロビというヒューマノイドロボットがちゃんと成立していることが素晴らしいと思います。

オートモーティブやロボット産業の時代では、マルチフィジックスだとかメカトロニクスの設計に移るので、それに対応できるようなCADシステムなどが必要になります。
また、システムだけでなく、人材も重要です。

最近、東アジアの国々に勢いがあります。ご存知のように日本のコンシューマー製品を作っている会社は、韓国や台湾、あるいは中国の企業に苦戦をしいられています。それらの国々では、若い人たちは発展途上という感じで必死で勉強をしています。毎月のように海外に行きますが、東アジアの国々をみるたびにコンシューマーでは日本はまだまだ苦戦するだろうと思います。半導体、家電というのは最終的には印刷技術なので、一回できてしまうと後は人件費とかコスト競争になってしまいます。そこをやっている限りは、なかなかこの状況からは抜け出せないと思っています。
ではどうすればよいか、それよりも日本はもっと強いものがある。オートモーティブ関連で培ったものづくりと摺合せ技術、そこは印刷できません。そこに活路を見出すしかないのではないかと個人的には思います。

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今後は機械と電子設計の摺合せ、いわゆるメカトロの方に、日本の活路は大きくみえてくるのではないでしょうか。そのためにはメカトロ設計の人材育成、つまり四力(機力、流力、熱力、材力)が理解でき、加えてSPICEが使える(電気設計ができる)人材育成が必要だと真剣に思っています。これは言うのは簡単ですが、なかなか難しいことです。

先にも述べましたが、私は静岡大学で機械科に所属するようになったので、今までの機械工学に電気電子やシステム、情報工学などの考え方を入れたいと思っています。今は、3年生の前期にMOSトランジスタや分布定数とか、オペアンプなどを教えています。こういうカリキュラムで、今後はSI/PIなどについても教えていきたいと考えています。このあたりを理解させることによって、メカトロニクス設計の技術者が育つと思っています。

またCADやCAEなどは、もともと電気系でコンピューターを使っていた人がやっていたことですが、機械系の人は単純に学生の時にそれらの勉強していない可能性があります。それを若い時から慣れてもらい、産業界に入った時にそれを自由に使いこなせる人材が育って欲しいとも思います。

たまたま出張の帰りの飛行機でみた「ビリギャル」という映画で感銘をうけたのですが、受験には戦略が必要です。受験とは、志望校を決め、自分の成績が分かった上で、努力して克服していくことですが、これには、選択をどういう科目にするか、自分のリソースをどういう風に集中させるかなどの戦略が必要だと思います。
そういう意味では産業界も次の世代のマーケットをどうするかとか、どこに注力するかなど戦略が必要だと思います。すべてのことに対して、努力はもちろん必要ですが、戦略はもっと必要ということを改めて自覚しました。



■ まとめ

日本の産業はだいぶ変わりました。コンシューマーの時代から、オートモーティブとかロボットに移りつつあります。コスト競争も起こり、それに勝つためには普通のものづくりではなかなか難しい状況です。最近円安になって、一部逆現象も起こっていますが、いずれにしてもどういう戦略で、コストを含めた意味で技術的に勝つかが非常に重要です。そのためには付加価値をどうつけるか、ということで知的ものづくりというものが課題となってきていると感じています。そして、そのひとつの分野として、メカトロニクス設計は非常に有望なのではないかと私は考えています。

また、次世代の人材育成も非常に重要です。次世代の産業や次世代の人材というのは、次の若い世代が考えれば良いことで我々ベテランが考えることではないですが、彼らには考える力や能力は今から身に付けてもらいたい、そこには我々も協力しなければいけないと思っています。

ご清聴ありがとうございました。


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