☑Club-Z特集
最近の医療機器開発における、古くて新しい課題:EMC問題
2013.05.30
関心が高かったのは、EMC対策
2013年4月24日~25日の2日間、東京ビッグサイトにて開催された医療機器の設計・製造に関する展示会【MEDTEC】に出展しました。図研は、「医療機器モノづくりの健康診断」というテーマで、「医療機器」開発における課題解決に向けたツールやソリューションをご紹介し、多くのお客様にお立ち寄りいただきました。
開発プロセス管理、バリデーション管理IT、法規制対応、安全性を確保した設計環境など、様々なソリューションをご紹介しましたが、その中でも特に来場者の関心を集めたのは「EMC対策」でした。この古くて普遍的な課題が、今なぜあらためて医療機器の開発においてフォーカスがあてられているのか、という点について2回に分けてお話したいと思います。
電気製品としての医療機器
病院などの医療施設で使われる先進的な医療機器だけでなく、私たちの身近にも電子化された医療機器・器具は沢山あります(体温計、血圧計、体重計などなど)。いずれの製品もデジタル化にともない高機能化が進んでおり、しかも扱いやすく価格も安くなっているとおもいます。エレクトロニクスの進化によって、高機能な医療機器・健康機器が一般家庭にも普及しはじめています。医療施設で専門の技師が扱う医療機器以外に、こういった需要が増え始めたことも製品開発をする側に、新たな課題(というか、より重要性が増加した課題)を生んでいるのかもしれません。
ここで、医療機器開発において、今市場要求が高いと考えられる以下の3点について着目してみましょう。
1.軽量化
- 軽くて扱いが容易な機器は、在宅医療はもちろんのこと、病院などの医療機関でも求められています。病状診断するための医療機器は、医療機器を運搬して患者のそばに設置したほうが患者への負担が少ないですし、病院のスタッフも楽です。軽量化の需要が高いのもうなずけます。
2.高機能化
- 地デジTVであつかわれるようなデジタル画像処理は、アナログ時代に考えられなかったような繊細な画像を表現できます。ここにCTやエコーなどの計測技術を融合すると、例えば、体内の臓器がいままでよりも詳細に鮮明に見えるようになり、医療現場で疾患箇所を見分けるのがしやすくなるというメリットがあります。繊細な画像という面では、ハイビジョン化をさらに進めた4Kのような技術ものもありますし、また、立体画像表現として3D技術もあり、これら画像表現技術は医療機器にも応用され導入がすすんでいます。
3.安全性の確保
- 医療機器は、場合によっては人命に直接的にかかわる製品となるため、安全性がとても重要な項目になります。万が一、医療機器を利用している最中に、誤動作などにより、生体の観測結果が異常になり誤診の要因となってしてしまうような悪影響が絶対にあってはなりません。また法律や規格によって規制もあります。法律や規制は随時変更されますので、開発側はそれに追従していく必要があります。先に述べたように、一般家庭で使われる製品が多くなってきたという点も、使用環境の違いという面で製品の安全スペックに影響します。
最近の医療機器開発をめぐる市場要求として以上3つのポイントを挙げましたが、皆さんお気づきのように1.2.については、医療機器特有の課題ではなく特にコンシューマエレクトロニクス製品において、医療機器以上に顕著なトレンドとして存在します。軽量化と高解像度化がすすむスマートフォン、映画などの3D画像を楽しめる3DTVやゲーム機などは、トレンドとして技術的な背景が近いです。
(そういえば、iPadのテレビ報道で、医療現場で使われているシーンがあった記憶があります。身近な電気製品があたかも医療機器の一面をなすような印象をもった内容でした。)
そして、実は1.2.3.すべての市場要求に対して電気設計の観点からクリティカルに関係するのがまさにEMCの問題です。医療機器を開発するメーカの設計現場でいまあらためてEMC問題にフォーカスがあたっていることの背景には、こういった事情があると言えます。
医療機器のEMC対策については、小型高性能化する民生エレクトロニクスの開発で実践されている手法をうまく活用することで、より効果的に対応することができると考えられます。
次回は医療機器開発における具体的なEMC設計の手法についてお話したいと思います。