Club-Zコラム第6回

印刷用表示 | テキストサイズ 小 | 中 | 大 |


clubZ_info_renewal.jpg

| HOME | コラム | グローバル化は設計・製造の仕組みを見直すチャンス | 第6回 | P1 |

更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

コラム


グローバル化は設計・製造の仕組みを見直すチャンス

【第6回】「気づき」能力向上のカギは製品開発経験の活用

株式会社RDPi  代表取締役 石橋 良造


2008.01.24

執筆者プロフィール
九州大学卒業後、日本HP入社(入社当時はYHP)。電子計測器、半導体計 測システムの研究・開発に従事した後、社内の開発製造革新プロジェクトで、 電気・電子設計およびソフトウェア開発のための統合システムを企画,開発。
この間に、日本HPにおけるソフトウェア・プロダクティビティ・マネジャー を兼務。日本HPの会社分割によりアジレント・テクノロジーに移籍した後、 この経験をもとに社外に対してコンサルティングを実施。その後、株式会社 RDPi を設立。 これまでに、家電、通信、電子機器、自動車業界に数十社の実績を持つ。ビジネスコンサル系とは一味違った開発現場やツールにも精通するコンサルタント。
著書(共著)に「デザイン プロセス イノベーション」「ザ・チェンジ」(どちらも日経BP)。また「日経ものづくり」での連載や「ソフトウェア開発環境展」専門セミナーなどのセミナーも多数実施している。

●Email :  ishibashi@rdpi.jp
●株式会社 RDPi : http://www.rdpi.jp/

前回は、日本の多くの開発現場で、「組み合わせ型」アーキテクチャの製品を「擦り合わせ型」の仕組み(組織能力や環境)で開発するという「ねじれ」を生じていること、「ねじれ」のない「擦り合わせ型」開発においても多大な手戻りや調整が発生していること、そして、このような状況が製品開発を非効率なものにしていることを指摘しました。

しかし、日本人技術者の擦り合わせ能力が高いことは多くの人が認識していることであり、高い競争力を持つためにはこの能力を活かした開発の仕組みを構築することが重要であること、そして、そのためには「調整」の仕組みと「気づき」の仕組みを構築する必要があるとお伝えしました。 「調整」の仕組みについては前回ご紹介しましたので、今回は「気づき」の仕組みについて解説したいと思います。

「擦り合わせ型」開発は、現場の技術者が高い「気づき」能力を持っていることが前提の開発スタイルです。 技術者自ら現場で起きている問題を把握し、その重要性を判断し解決に向けて行動を起こすことが様々な「擦り合わせ」活動となっているのです。トヨタ生産方式の「自働化」でも、人の「気づき」の重要性を説いています。「見える化」によって様々な問題が見えるようになったとしても、その問題の中から対処すべき問題を選択する必要が生じます。この対処すべき問題(解決の優先順位が高い問題)を選別する処理を、「自動化」するのではなく人の知恵を持った目で選別することがにんべんのついた「自働化」ということです。「自働化」とは、ひとの創造性を活かした問題への対応行動であり、見える化されたものから重要なものを選別する能力が「気づき」能力だと考えられます。

擦り合わせ能力の高さは日本の技術者が持つ DNA であり、したがって、「気づき」能力についても、高いレベルにあることは間違いないでしょう。ただ、最近の開発現場では、この「気づき」能力が低下してきているようで心配です。技術者の中に、指示がないと動かない、他の人の仕事内容に興味を持たない、自分の担当範囲外のトラブルには関心を持たないなど、気になる行動が増えているような気がします。技術者個人が持っている「気づき」能力に期待するだけではなく、「気づき」能力向上を製品開発の仕組みの中で考えなくてはいけないのではないかと感じています。