コラム
同時にやるシクミづくりとヒトづくり。
やっと気づいた改革の本質
【第51回】褒める気持ちを伝えるには技術が必要
株式会社RDPi 代表取締役 石橋 良造
2015.10.29
さらに、褒めるときには次のことにも注意しておくと、より効果的な褒め方になります。
・目標を達成した後ではなく、目標に向かって頑張っているときに褒める
・批判的な言葉は一切入れない
・相手の性格や立場を考慮した表現にする
少し補足説明しておきましょう。
目標に向かっているときに褒めるというのは、その人の自信を高め、目標達成への意欲をより高くすることになり、良い結果につながる可能性が高くなるからです。さらに、その人は目標達成のためにより多くのアドバイスを聞き入れる余地が大きくなり、さらなる成長につながることが期待できます。
耳に痛い批判や注意は褒めることとセットにすることで受け入れやすくなると考えたり、褒めてばかりでは調子に乗ってしまうと考えて、褒めることと注意することを一緒に伝える人がいます。しかし、実験によれば、両方を一緒にすると人は批判や注意を受けたことに意識が向いてしまい、褒めた効果が小さくなることがわかっています。また、批判や注意はその問題の行為をとったそのときに伝えるのが効果的だということがわかっています。つまり、褒めるときは褒める。注意するときは注意する。完全に分けるのが効果的なのです。
相手の性格や立場を考慮するのは当然です。たとえば同じプロジェクト・チームであっても経験が長いメンバーと新しく入ったばかりのメンバーでは褒める内容も表現も違ったものになるはずです。その人の性格にも注意を払う必要があります。また、たとえば内向的な人と外交的な人とでは褒めるときの表現や伝え方は変えるべきです。
褒められてやる気になった経験は誰もが持っていて、褒めることが大切なのは誰もがわかっているはずですが、実践は簡単ではありません。
「がんばっているのに上司はダメ出しばかりで褒められることがない」
「親からはいつも怒られていて褒められた覚えがない」
上司やリーダーとの関係、親との関係を個別に聞く機会があるのですが、程度はありますがこんな感想を持っている人は多いのです。しかもやっかいなことに、上司やリーダー、そして、親に話を聞くと、褒めることが大切だと考えて、日頃から褒めるようにしているという場合が少なくありません。
せっかくの褒めるという行為が彼らに伝わっていないのは、お互いに残念なことです。よりやる気になってもらうことはもちろん、より良好な関係を築くためには、効果的な褒め方を知り、実践することは大切です。まずは、振り返ることからはじめてみませんか?
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
●執筆者プロフィール 石橋 良造
日本ヒューレット・パッカード (HP) に入社し、R&D 部門で半導体計測システムの開発に従事した後、設計・製造改革プロジェクトに参加。ここで、HP 全社を巻き込んだ PLM システムの開発や、石川賞を受賞した製品開発の仕組み作りを行い、その経験をもとに 80 社以上に対して開発プロセス革新やプロジェクト管理のコンサルティングを実施。
コンサルティングを続ける中で、より良い改革のためには個人の意識改革も合わせて実施する必要があるとの思いが強くなり、独立して株式会社 RDPi を設立した後、北京オリンピックで石井慧を金メダルに導いた(株) チームフローのコーチ養成コース、および、一般社団法人 日本ポジティブ心理学協会の公式プラクティショナー・コースを修了し、個人のやる気を引き出す技術の開発と、開発プロセスやプロジェクト管理の仕組み改革とを融合した改善活動を続けている。
●株式会社 RDPi :http://www.rdpi.jp/
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