コラム
同時にやるシクミづくりとヒトづくり。
やっと気づいた改革の本質
【第34回】縦の関係、横の関係
株式会社RDPi 代表取締役 石橋 良造
2014.03.25
さらに、それぞれのメンバーが作った行動指針、行動目標もユニークで、たとえば「遊び人」という役をもらったメンバーは図87 のように自分の役を定義しました。
なかなかの出来だと思いませんか? こうやって、それぞれのプロジェクトが作成してくれた役割アサインを見たときのことを思い出すと、みんながプロジェクトを楽しもうとしていた当時の雰囲気が蘇ってきて、ワクワクしてうれしかった感情も蘇ってきます。プロジェクトが終わった時には、プロジェクトに対する意識やメンバーとの関係が変わったという感想ももらいました。
書く、読む、振り返る
さらに、メンバーそれぞれが役を演じることができているかどうかを確認するために「振る舞い相互レビュー」という取り組みを実施しました。これは、メンバー同士で、それぞれ決めた行動指針と行動目標と照らしあわせて、その役に見合った言動ができているかどうか指摘し合うというものです。毎週、一人ひとりに自分以外のメンバー全員の良いポイントと指摘ポイントを書いてもらい、プロジェクト内だけで見ることができるようにしました。
ねらったのは、チームメンバーの一人ひとりのことをしっかり見ることと、他のメンバーからの指摘によって自分のことを振り返ることです。この「書く」「読む」「振り返る」のサイクルを回すことで、メンバー同士の結びつきを強くするとともに、自分の行動を変えることができます。
実際、メンバーからは次のような感想を聞くことができました。
- 「ちゃんと見てくれていることがわかってやる気になった」
- 「がんばって行動したことを評価してもらってうれしかった」
- 「面と向かっても何でも言えるようになった」
- 「感謝することが大切だとわかった」
とくに、若手のメンバーから、行動を変えることができる、自分は変わることができるという自信と、成長を実感することができたという声を多く聞きました。「チーム」は成長を加速する集団でもあると言えるでしょう。
「チーム」はやる気を引き出す
この3つのプロジェクトはとにかく集まって話し合い、自分たちでやり方を工夫して、他のプロジェクトと同じように顧客からの厳しい納期と要求があるにもかかわらず、最後まで協力しあって笑顔で計画通りに開発を完了させました。しかも、開発と並行して改善活動も実施しながらです。
一般的に、マネジャーやリーダーは、メンバーの育成のため、苦労して一人ひとりとの会話や背景説明に時間をかけることを要求されます。しかし、メンバーはそのような上司の姿勢も上からの指示としてとらえてしまい、自律性ややる気にはつながらないことが少なくありません。
今回紹介した事例で覚えておいてほしいのは、メンバー同士の横の関係を強化することでお互いを刺激し合い、向上させることができるということです。実は、このメーカーではやる気の計測も実施しており、「チーム」がやる気に効果があるということがわかっています。これについては、また別の機会で紹介したいと思います。
今回は「チーム」を作るための取り組みを紹介しました。 「チーム」の大切さを感じてもらえれば幸いです。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
●執筆者プロフィール 石橋 良造
日本ヒューレット・パッカード (HP) に入社し、R&D 部門で半導体計測システムの開発に従事した後、開発プロセス改革プロジェクトに参加。ここで、HP 全社を巻き込んだ PLM システムの開発や、石川賞を受賞した製品開発の仕組み作りを行い、その経験をもとに 80 社以上に対して開発プロセス革新やプロジェクト管理のコンサルティングを実施。独立して株式会社 RDPi を設立した後は、より良い改革のためには個人の意識改革も必要、と、北京オリンピックで石井慧を金メダルに導いたピークパフォーマンスのコーチ養成コースを修了し、個人のやる気やモチベーションを引き出す技術の開発と、開発プロセスやプロジェクト管理の仕組み改革との融合を続けています。
●株式会社 RDPi :http://www.rdpi.jp/
●メトリクス管理ウェブ : http://www.metrics.jp/
●Email :
ishibashi@rdpi.jp
●ブログ : http://ameblo.jp/iryozo/entrylist.html
●facebook : やる気の技術
仕組みと意識を変える RDPi