Club-Zコラム第19回

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

コラム


同時にやるシクミづくりとヒトづくり。
やっと気づいた改革の本質

【第19回】プロジェクト・ビジョンだけではひとつになれない

株式会社RDPi  代表取締役 石橋 良造

2012.04.23

未来指向と現在指向


未来指向と現在指向に分けることができるというのを裏付ける理論があるので紹介しておきましょう。

未来指向であるビジョン型のモチベーション向上は世の中にあふれているので説明は必要ないでしょう。夢を具体化する手順、目標を現実化する手法など、いわゆる成功法則や成功哲学のほとんどは未来指向だといえます。

現在指向と考えられるのは、スタンフォード大学の J.D.クランボルツ教授が提唱している「計画された偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」です。これは、キャリア(将来の職業)の8割は偶然によって決まるといい、キャリアや人生はあらかじめ計画した通りや期待した通りには決してならないという内容です。未来のビジョンや目標にもとづいて行動するよりも、自分が大切に思っているもの、大事にしていることを基本にして、行動を起こして幅広くいろいろなことを吸収するのがよいというようなことを言っています。


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現在指向メンバーに対して必要となるのは、どんなプロジェクトにしたいのか、どのようなことを大切にプロジェクトを運営したいのか、といったことを PM が宣言することが大切です。もちろん、メンバーが共感できるものであることが前提です。

未来指向と現在指向のモチベーションの源泉例も紹介しておきましょう。



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以上のことから、プロジェクト・メンバーの心をひとつにするには、メンバーが未来指向なのか、現在指向なのかで別々のアプローチが必要なのがわかります。未来指向のメンバーに共感してもらえるプロジェクト・ビジョンと、現在指向のメンバーに共感してもらえるプロジェクトの在り方とを考え、共有するのです。

たとえば、未来指向と現在指向の両方のメンバーの意識に働きかけるには、「現在の2倍の反応時間を達成して世界一の性能を目指す。さらに、仲間を尊重し気分よく仕事ができる工夫をするプロジェクトにする」と宣言し、実際の進め方を具体化するのです。もちろん、本当に共感できる内容かどうかというのは大切ですが、まずは、モチベーションの源泉には未来指向と現在指向があることを知り、その両方に働きかけるにはどうしたらいいのかを考えることが、プロジェクト・メンバーの心をひとつにするための第一歩です。

さて、今回はプロジェクト開始時にメンバーの心をひとつにする方法について紹介しました。プロジェクト・マネジャーやリーダーがひとりでがんばってもプロジェクトを成功させることはできません。チームワークが重要で、そのためには、未来指向と現在指向を把握してメンバーの心をひとつにすることです。トライしてみてください。





speaker.jpg●執筆者プロフィール  石橋 良造
日本ヒューレット・パッカード (HP) に入社し、R&D 部門で半導体計測システムの開発に従事した後、開発プロセス改革プロジェクトに参加。ここで、HP 全社を巻き込んだ PLM システムの開発や、石川賞を受賞した製品開発の仕組み作りを行い、その経験をもとに 80 社以上に対して開発プロセス革新やプロジェクト管理のコンサルティングを実施。独立して株式会社 RDPi を設立した後は、より良い改革のためには個人の意識改革も必要、と、北京オリンピックで石井慧を金メダルに導いたピークパフォーマンスのコーチ養成コースを修了し、個人のやる気やモチベーションを引き出す技術の開発と、開発プロセスやプロジェクト管理の仕組み改革との融合を続けています。
●株式会社 RDPi :http://www.rdpi.jp/
●メトリクス管理ウェブ : http://www.metrics.jp/
●Email :  ishibashi@rdpi.jp
●ブログ : http://ameblo.jp/iryozo/entrylist.html
●facebook : やる気の技術   仕組みと意識を変える RDPi

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