コラム
同時にやるシクミづくりとヒトづくり。
やっと気づいた改革の本質
【第9回】素直に感情を見つめること、忘れないでください
株式会社RDPi 代表取締役 石橋 良造
2011.04.21
日常となった非日常
大地震、そして、大津波から1ヶ月以上が経ちました。
遅いご挨拶となりましたが、被災されました皆さまに、心よりお悔やみならびにお見舞い申し上げます。
このコラムが皆さんの目に触れるときには、被災地復興の方向性や原発事故の収束方法が具体的なものになっていて欲しいのですが、原稿を書いている時点では、被災地の状況も原発事故の収束もまだ大きな前進はない状態です。
被災地ではなくても、震災前と後とでは生活環境が大きく変わってしまいました。
震災の映像、被災地の人々の嘆き、次々と起こる原発問題、まだまだ続く余震。毎日のニュースや情報に、頭も心もいっぱいになっている感じがします。
ネットやテレビでは、いろいろな人がいろいろことをいろいろな立場で発信しています。それを見たり聞いたりしていると、いったい何が正しいのか、自分の判断基準があやふやになっている気がしてきます。
自然の暴力的な力と人の営みのはかなさや、考えが違う人を嫌っている自分へのいらだちや、今まで隠れていたことが見えた戸惑い。その他にも、不安、怒り、喜び、主張、批判、要求、感謝、励まし、・・・など、いろいろな感情にあふれている毎日を過ごしています。
目に見えるところでも目に見えないところでも、非日常的が日常になってしまったことで、多くの人は程度の差はあるものの、いつもとは違ういろいろな感情が、心の中で少しずつ層をなして重なり積み上がっている、そんな状態だと思います。
疲れた心
何気ない会話の途中や、青空の下を歩いているときや、ひとりで車を運転しているときなどに、思いもよらない感情があふれ出て涙が出て来た人がいると聞きます。また、テレビを見ていて思いがけず涙したり、人のちょっとした言葉に腹が立ったり、普段よりも感情が鋭敏になっている人が増えているとも聞きます。
直接被災していなくても、非日常が続いていることで心が疲れているのでしょう。問題なのは、このような心の疲れに気づいていない人が多いことです。自分の心の状態に気づかず感情にふたをすることになってしまい、心が過労状態になってしまう可能性があります。
自分の心の状態に気づくために、比較的多い心の状態を紹介しておきましょう。
○震災のちょっとしたトラウマ
急に地震のときの場面や恐怖が蘇ってストレスを感じたり、揺れていて落ち着かなかったりする状態です。また、怖い気持ちや不安な気持ちを表に出してはいけないと、人前で無理して笑顔を作ったりしている状態になっていることもあります。
無理な笑顔に似ていますが、「こんな時だからこそ元気を出さなくてはいけない」「被災者のために何かしなくてはいけない」と張り切りすぎている状態もよくあります。いわゆる「カラ元気」で、従来の自分とは違うテンションが続いている状態です。
○これからに対する不安や心配の増大
計画停電でいつもどおりの生活や仕事ができなくなったり、食料や水、乾電池などいろいろなものが買えなくなったり、お店で殺気だった多くの人を見たり、野菜や魚などの放射能汚染が気になったりと、今までは違う状況に対して不安や心配が大きくなっている状態です。
さらに、先が見えない原発問題や、期待できない政治などで、日本はこのままどうなるのだろう、自分はいったいどうなるのだろうという、未来に対する漫然とした不安が大きくなっていることもあります。
○感情移入による罪悪感や無力感
最初にも書きましたが、テレビやネットなどで圧倒的な情報を目にしたり、また、大切な人を失った被災地の人たちの話を聞いて、いつもよりもずっと感情移入してしまい、とってもつらくなる。そして、自分には何もできない、あるいは、やっても仕方がないという無力感や無気力感にとらわれている状態です。
これが行き過ぎて、「もう日本は終わった。自分ももう終わった。」というような状態になっている場合もあります。また、被災地の人のことを考えると、自分だけが楽しんでいいわけがないという罪悪感を感じてしまい、趣味やレジャーなどを楽しめない、やる気が起きないという状態の人もいます。