SIシミュレーションナレッジ
コラム11 ①
高速デジタル回路を安定動作させるための”トポロジー設計”
【トポロジー設計編】
2010.05.28
高速デジタル回路では、配線の引き回し(トポロジー)を変えるだけで信号波形に乱れが生じます。デジタル波が乱れる要因の1つとしては、インピーダンス不整合による反射が考えられますが、これは、ドライバーのインピーダンスと伝送線路の特性インピーダンスを整合させることによって、きれいな矩形波で信号を伝送することができるようになります。
上図のような単一な伝送線路では、波形の傾向を予測することは比較的容易ですが、クロック回路に代表されるように、複数のレシーバーにクロック信号を伝送する回路では配線が分岐しますので、分岐のさせ方によって、レシーバーの波形結果は大きく異なります。
レシーバー波形がどのように変形するか、実際に3つのトポロジー(スター型、中間分岐型、リモートスター型)を測定して比較してみました。
ドライバーとレシーバーのICは、ルネサステクノロジー社製HD74LV2G34A(非反転バッファ)を使用しました。ICの特性ばらつきを無視する為、同じICを3つの伝送線路に順番に付け替えて測定しました。また、回路全体の直下(隣接層)にはGNDベタ面を配し、ICのGNDピンからすぐにビアでGNDベタに接続しています。
この条件でいざ実測!結果は以下の通りでした。
配線の分岐ポイントがドライバー端に近づくにつれ、早いタイミングで波形に段が現れている事が確認できます。この段によりレシーバーのしきい値電圧到達時間にズレが生じますので、同期のタイミング問題になる可能性があります。
波形の段は、基板設計段階でも確認する事ができます。
以下はCR-5000/Board Designerデータを用いたCR-5000 Lightning のSIシミュレーション結果です。
先程の実測結果と同じ様に、分岐ポイントの位置よって波形の段の付き方が変わることが確認できます。
そして、回路設計段階でも、波形の段は予測することができます。
CR-5000 Lightning にて、プリシミュレーションしてみると・・・