第3回 「このくらいで大丈夫っしょ!」はダメ、ダメ。正しい設計指示ってどうやるの?

いまの基板設計指示で十分なのか!?
高速、低電圧化した製品の基板上には、ノイズの影響を受けやすい回路やノイズ発生源となる信号など様々な要素が増えています。部品配置や配線経路によっては意図した動作と異なる場合があるため、基板設計者への設計指示には注意が必要なのですが、いまいちうまくいかない様子。人依存にならず、余計な手間をかけずに的確な指示を出すにはどうしたらいいのでしょうか?

 


回路設計や検証については、スキルがついてきてぐんぐん成長している新田さん。最近では、新バージョン開発を多く任されて大忙しみたい。製品を新しく開発するときや、機能追加などで新バージョンを開発するときには、部品の占有率を調べたり、部品の配置によってはノイズなどに影響がでるため、十分注意が必要なんだけど…
新田さんはどうやっているのかな?

 

上島(上司):新田! 製品Sのことで話があるから、ちょっといいか?

新田:はい!さきほどはすみませんでした。打ち合わせだったもので…

上島(上司):ああ、気にするな。新田も忙しいからな。忙しいところ悪いんだが、また設計をお願いしたい。今回は、製品Sにbluetooth機能を追加したいんだ。それと、メモリをDDR2からDDR3へ変更したいんだ。既存製品との互換性や原価を考えると製品サイズは変えたくないんだが、同じ基板形状でできるかを含めて検討して、必要に応じて基板設計指示もまとめてくれないか。

新田:え? ということは、部品配置までしないと先に進まないってことですか?

上島(上司):そうだな、全部やる必要は無いと思うが‥主要な部品を配置して余裕があるか、配線できそうかの検討から始めてくれ。

新田:わかりました。やってみます。

 

~~~~~~~~ 数日後、新田さん自席で ~~~~~~~~~~~~

新田:これで、よしっと。bluetooth機能の主要部品は回路図に入れたぞ。これぐらいでアタリが取れると思うけど…。次は、いままでと同じ基板で設計ができるか、か…。検討段階で基板設計部門にいちいちお願いするのも、申し訳ないんだよな~。

古川:おーい新田! ほら、夏休みの土産だ!

新田:ありがとうございます!(古川さんって北海道出身だったのか…)

rokkatei_img
おっと、マルセイのバターサンドだっ(鉄板!)

 

古川:…何か悩んでるのか?また顔が…。

新田:いやー実は、製品Sの追加開発を頼まれたんです。とりあえず回路図に主要な部品は追加したんですけど、基板設計できるかどうかまで検討してほしい。と頼まれて…。でも、検討段階で基板設計部門に依頼するのも気が引けちゃって。

古川:そんなことで依頼することないぞ。それなら、基板DRの時に使ったCADがあるだろう。Design Forceっていうんだが、あれで見ればいいじゃないか。

新田:えっ?

既存製品に対して機能追加した製品の開発を任された新田さん。できる限り低コストで機能を追加するのに今までと同じ基板サイズで検討しないといけないみたい。同じ基板に入るのか? 確認をするためだけに基板設計部門に依頼するのは、なんだか気まずい…。そんなとき、古川さんが教えてくれた Design Forceって?

 

 

同じ基板でできるかな?手間をかけずに確実に検討するために

 

古川:まず、今回のように既存の機能追加をする場合、同じ基板形状で大丈夫なのか。判断するポイントには何があると思う?

新田:わかりません…

古川:基板設計の可否を判断するひとつのポイントとして、基板サイズに対してすべての部品を置くのにどのくらいの面積が必要かを表す「部品占有率」というものがある。この「部品占有率」によっておおよそ、基板設計ができるかできないかが判断できるんだ。Design Force を使えば、部品占有率も簡単に計算することができるぞ。試しに、既存製品Sの基板を Design Force で調べてみよう。

新田:あ! 「XX%」って出てます。

古川:じゃあ、次に機能追加した方。まず追加した部品を置いてみよう。Design Forceのフロアプラン機能を使えば、追加部品を簡単に配置できるんだ。それで、この状態で部品占有率を見てみると。YY% だな。類似製品の過去設計データから見て、この占有率なら大丈夫だろう。こういうときは、過去設計データを見ることを忘れるなよ。

新田:はい!

古川:単に部品の配置といっても、Design Force だと3D表示できるから部品の高さもわかるぞ。高さ制限領域があれば干渉チェックができる。例えば、2D表示だと実際にどう当たっているかを判断するのは難しいだろう? でも、筐体データを取り込んで3D表示で確認すればクリアランスが一目瞭然なんだ。

 

3Dフロアプラン 配置状況見積もり

 

 

古川:これで終わりじゃないぞ。次は設計指示のまとめだ。今回、メモリ仕様が変わった(DDR2→DDR3)から、動作基準も厳しくなるはずだ。配線長の許容差とか、設計条件をきちんと見直しておくんだぞ。

新田:わかりました!

 

DDR3信号の設計指示入力

 

新しくフロアプランを覚えた新田さん。いままでは検討段階で基板設計に依頼していたものも、自分でできるようになりました。回路設計の段階で、ノイズや信号遅延を考慮しながらフロアプラン(配置検討)できるようになることで、機能バージョンアップ設計でもラクラク。

 

キー部品配置と制約条件の入力で基板設計もバッチリ!

 

古川:いい感じじゃないか、新田。電気的な制約条件だけでなく、必要な部品配置情報と一緒に基板設計時に指示すれば、手戻りも少なくなるに違いないだろう!

新田:ふう~。じゃあ、これで上島さんに報告してきます!

 

~~~~~~~~ 上島さんのデスクで ~~~~~~~~~~~~

新田:上島さん、製品Sの機能追加をまとめました。確認をお願いします!

上島(上司):うん、基板占有率もきっちり調べてあって、助かるよ。これなら同じ基板形状でもノイズの心配もなさそうだな。じゃぁ、製品化をすすめよう。回路設計を最終まで進めてくれ。

新田:はい!任せてください!

上島(上司):(新田もだいぶ頼もしくなったな~。もう、あれのメンバーにしてもいいか…)

新田さん、うまくいったみたいですね。その後製品Sは順調に詳細設計が進み、無事にリリースされたそうですよ。でも、何やら上島さんが考えていることがあるみたい…。なんだろう??

 

チャレンジ!

 

今回もクイズをご用意しました。チャレンジしてみてね!

 

004Q

正解は、問題 DDR3メモリの基板設計指示として修正が必要なのはどれ?

 

それでは、また次回ー!

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