基板と熱設計

印刷用表示 | テキストサイズ 小 | 中 | 大 |


clubZ_info_renewal.jpg

| HOME | 熱設計 | 6 | P1 |

更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03


☑基板と熱設計

6. 熱の伝わり方

株式会社ジィーサス

2010.12.16

こんにちは、株式会社ジィーサスの藤田です。
前回は熱と温度の関係について温度計を題材にして話を進め、熱伝導の仕組みまで説明しました。今回は熱の伝わり方について説明したいと思います。

皆さんが「熱」を感じる場面はどんな時でしょう?いちばん身近なのは調理する時の湯沸かしだったり、お風呂のお湯だったり、または冬場のストーブだったりするのではないでしょうか?もっと嫌な経験として火傷もあるかもしれません。これらの場面で熱の伝わり方は同じでしょうか?たとえばお風呂に入った場合は、お湯から熱が皆さんに伝わっているのですよね?ストーブの場合はどうでしょうか?温まった空気が皆さんの周りにあるからでしょうか?でもたとえば電気ストーブを自分に向けると、直接熱を感じませんか?これらの熱の伝わり方も「熱伝導」というのでしょうか?

前回説明したように熱伝導は固体の中の熱の移動のことです。お風呂のお湯も電気ストーブの熱を直接感じるのも、固体を触ったからではないですよね?お風呂のお湯の場合は正確には「流体」から熱を受けているのですが、この流体と固体(たとえば皆さんの体)の間の熱の伝わり方を「対流熱伝達」と言います。ストーブの場合はどうでしょうか?発熱体から直接熱を受けている感じは真夏の太陽のギラギラした感じと同じですが、これは主に赤外線を受けることで感じる熱です。赤外線はご存知のように可視光より波長が長く、無線通信に使う電波よりは波長が短い「電磁波」ですね。この電磁波による熱の伝わり方を放射またはふく射(輻射)伝熱と言います。(昔は輻射と言っていたが「輻」が常用漢字になかったので放射と言うようになったらしいです。)熱は熱伝導、対流熱伝達、放射伝熱の三形態で移動するため、これを「伝熱三態」と呼んでいます。私はセミナー等で説明するときは単に「伝導、対流、放射」と言っていますので、この連載でも伝熱三態は伝導・対流・放射と記載します。

伝熱の話は難しそうですが、でも熱の伝わり方は3種類しかないのです。この3種類をきっちり分けて考えれば、割と明快に理解できると思います。難しいのは、相手が自然現象なのでいろんな条件を決めないと計算ができないことだと思います。しかしそれも場合分けをすることで条件を絞れば、案外計算しやすくなります。この連載では計算方法を細かく解説しませんが、伝熱のイメージを把握してもらうことで、その後の製品設計における「目のつけどころ」が違ってくることを期待しています。

熱の移動形態は3種類しかないということを理解してもらって、もう一度前回説明した熱伝導について考えてみます。前回は、固体の熱伝導は自由電子の移動と原子・分子の振動の伝搬によるものだと説明しましたが、もっとマクロに見た場合に熱の伝わり方は何によって左右されるのかを考えてみます。
th_101216_1.JPGたとえば皆さんがはんだ付けをする時、熱い思いをしたことがあるのではないでしょうか?私もケチなほうなので、糸はんだを使うときに最後まで使い切ろうとしてよく火傷します。このとき、たとえば細いはんだと太いはんだだとどちらが熱いでしょうか?太いほうがダメージは大きいですよね?またはんだごてに当てている部分と手で持っている部分の距離は、当然近いほうが熱いですよね?ということは、熱さははんだの太さに比例し、長さに反比例するわけです。これははんだだけでなく一般の固体でも同じです。つまり熱伝導の場合の伝熱量は、その固体の太さ、つまり断面積に比例し、長さに反比例するのです。
でも熱伝導を左右するのはそれだけではありません。前回説明した時に金属と非金属では、電子を持つ金属のほうが熱を伝えやすいと書きましたが、同じ金属でも鉄と銅では伝わり方が違います。
このように固体では物質によって熱の伝わり方が違うので、熱の伝わりやすさの比例定数として「熱伝導率」が必要になってきます。つまり熱の伝わりやすさは固体の面積と熱伝導率に比例し、長さに反比例します。でもそれだけでしょうか?もうひとつ大事なアイテムが抜けています。