基板と熱設計

印刷用表示 | テキストサイズ 小 | 中 | 大 |


clubZ_info_renewal.jpg

| HOME | 熱設計 | 4 | P1 |

更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03


☑基板と熱設計

4. 熱とは?

株式会社ジィーサス

2010.10.28

こんにちは。株式会社ジィーサスの藤田です。
今までは熱設計の必要性について述べてきましたが、今回から実際に熱設計を行うために必要と思われる知識について説明していきます。まずはじめは「熱とは何か?」という、簡単そうで難しい話からスタートしたいと思います。初めに断っておきますが、私は学問のプロではないので学問的に正しくない表現や説明が入ると思いますが、そこはご容赦ください。

私たちが製品設計で四苦八苦して闘っている「熱」とは何でしょう?
今なら分からない単語はインターネットで検索するのが一番です。検索エンジンに「熱」と入れると何でも引っかかるのでかえってわかりにくいので、「熱とは」などと問い合わせ調で検索するとよいと思います。そうするとウィキペディアをはじめ、色々な解説がヒットします。ウィキペディアの解説は明快でわかりやすいのですが、それでも物理の言葉をある程度知っている必要があるのと、特に「熱」のような学問的に根源的な物事に対しては複数の解釈が掲載される場合があるので、その解釈を頼りに自分なりにイメージする科学的感覚が必要かもしれません。

「熱」の説明をいろいろ読むと、どうも「熱はエネルギーの移動形態のひとつ」という解釈ですが、「熱=エネルギー」ではないようです。逆に言えば「移動しなければ熱ではない(?)」ということになりますが、確かに目の前の机はただ置いてあるだけで何もしていないので「熱がある」とは言いませんね。

「熱はエネルギーの移動形態のひとつ」を受け入れたとして、次は「じゃ、エネルギーって何だ?」という新たな疑問が湧き上がり、ウィキペディアサーフィンを繰り返すことになります。私もこのようにして過去何回も「熱」とか「エネルギー」を調べまくり、挙句の果ては量子力学や固体物理学や物性物理学、更には物理化学などの本を「つまみ読み」することになりました。(歳をとると物覚えが悪くなっていろいろ読むのですが、難しいことはわからないので「つまみ読み」になってしまいます。)そして量子力学のコペンハーゲン解釈までたどり着いて「今の物理は仮説なの?」という疑問を持ちつつも、「世の中の現象をほとんど説明できるのだからいいじゃない」と偉そうに納得するのは私だけでしょうか?

少し話が脇道にそれてしまいましたが、熱はエネルギーの移動形態のひとつで、エネルギーは仕事をする能力、そしてエネルギーは系全体で保存される(エネルギー保存の法則)ということを出発点にしたいと思います。ここで言う「系」とは、宇宙全体ぐらいにイメージしていただければよいと思います。

さてエネルギーというと機械系の人は運動エネルギーをイメージするのではないでしょうか?また私のような(?)メタボな人はエネルギーというと食物をイメージするかもしれません。
モノとしては全く違うのですが、同じエネルギーという言葉を使います。熱の単位はJ(ジュール)で、エネルギーと同じ単位です。栄養学などでは「カロリー」という単位を使っていますが、SI単位系では「カロリー」は使用されていません。1Jは1N・m(ニュートン・メートル)であり、「1ニュートンの力が物体を1m動かす時の仕事」という定義です。また電気の世界では1Jは1C・V(クーロン・ボルト)であり、「1ボルトの電位差の中で1クーロンの電荷を動かすのに必要な仕事」という定義です。また1Jは1W・s(ワット・秒)であり「1Wの仕事率を1秒間行った時の仕事」という定義でもあります。熱の計算ではワットを使いますが、正確には「ワット・秒」なので、特に電力との換算には注意が必要です。th_101028_1.JPG
メタボな人がよく使うカロリー(1カロリーは約4.2ジュール)は何でしょうか?食べ物が熱を持っているのでしょうか?答えは「イエス」ですが、食べ物が熱いわけではありません(熱い食べ物もありますが)。人間も含めて生物は、食べ物を化学分解した時に放出されたエネルギーを利用して生きていますが、このエネルギー量のことを「食物のカロリー」として表現しているのです。
炭水化物1g、タンパク質1gはそれぞれ4kcal、脂肪は1gで9kcalのエネルギーを発生するそうです。ちなみにアルコール1gは7kcalだそうで、かなり高カロリーなことは事実のようです。生物は食物からATP(アデノシン三リン酸)を中間物質として合成し、これを加水分解して得られたエネルギーを筋収縮に使って運動するのだそうです。
さて運動するとどうなるでしょう?暑くなりますよね?だから「食物のカロリー」は「熱エネルギー」と呼ばれているのかもしれませんね。運動はエネルギーの消費なので、それに伴い熱くなることは「熱はエネルギーの移動形態のひとつ」を実感していることではないでしょうか?

このように考えると「人間もエネルギーを使って動く、電気製品のようなもの」なんて思えませんか?