訪問!日本の設計現場

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03



☑Club-Z編集長の  訪問!日本の設計現場



「お金を払ってでも一緒に飲みたいと思われる人になりなさい。」
お蔭様で45周年。危機を乗り越えられたのは、いつも相手のために何ができるかを考えていたからです

株式会社戸塚電子工業様

2011.07.21

最新の製造・検査設備が、処狭しと並ぶ社屋。信号機用制御機器にモーター制御用コントロール機器、通信用変換機器etc・・・様々な顧客名が記載された紙が添付され、納品を待つばかりの製品やモジュールの数々。
一見してわかるそのビジネス領域と顧客層の広さに、私たちはまず圧倒されました。
今回私たちが取材させていただくのは、神奈川県藤沢市にある「株式会社戸塚電子工業」様です。

「やぁ、どうもどうも。こんにちは!」
明るい声で部屋に入ってきたこの方が、伊藤啓三社長と伊藤啓統括部長。
(本文中は、敬称を略させていただきます。 Club-Z:CZ)

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CZ:この度は、お忙しい中、Club-Zの取材にご協力いただきまして誠にありがとうございます。

伊藤社長:いやいや、こちらこそ取り上げていただいてありがとうございます。今年で我が社も45周年なので、ちょうどいい記念になりますよ。

CZ:45周年ですか!45年というと、ほとんど日本の電子機器産業発展の歴史そのものですね。その長い歴史の中ではご苦労もあったことと思いますが。

伊藤社長:そうですね。やはり最大の危機は、バブル崩壊でした。その頃ちょうど、事務所を戸塚から現在の藤沢へと移動し、大きな投資を行った時期でした。
当時は大口のお客様一社に依存していましたが、取引は順調で事業は拡大していました。その頼みのお客様からの受注が、突如ゼロになってしまったのです。それまで抱えたことのない多額の借金を背負ってしまい…これは、もうダメかと思いました。まさに地獄です。

伊藤統括部長:当時私は、まだ入社していなかったのですが、相当厳しい状況だったと聞いています。社長が自分の生命保険を解約して社員の給料を払っていた、という話も聞いたことがあります。

CZ:事業拡大しようと大きな投資をした矢先のバブル崩壊…想像するだけでも恐ろしいですね…どのように乗り切られたのですか?

伊藤社長:一社に依存しすぎたことを反省して、とにかく取引先を増やしました。業種を限定せず、プリント基板を必要とする会社さんには積極的に営業し、開拓していきました。新規開拓はもちろん、開拓した取引先の中でも、他にプリント基板を必要としている部署があれば、お話させていただきました。
お陰で、取引先は順調に増えていきました。こうして積極的に顧客を開拓していく中で、ハーネスや板金、組立、性能検査等、プリント基板に付随する様々な要望を耳にするようになったのです。元々基板実装の仕事をしていたのですが、こうしたお客様のご要望が気になってしまいましてね。なんとかできないものかと思うようになったのです。

CZ: しかし、厳しい状況の中で新しいことを始めるのは勇気がいりますよね。

i_20110721_5.jpg伊藤社長:はい、でもお客様の困っていることは何とかしたい、という性分でしてね(笑)。とは言え、未知の分野。そこで、片っ端から知人や友人に相談をしてみましたところ、幸いにも多くの方々が力になってくれました。多くの人に助けられ、夢中になって走っていたら、いつのまにか、ビジネスの幅が広がっていました。

CZ:素晴らしい人脈ですね!

伊藤統括部長:社長はとても【人脈】に恵まれた人なのではないかと思っています。社長は常に周りの人間を大事にしていたので、窮地に立たされた時に救いの手がたくさん向けられたのは、そのお陰なのだろうと思っています。有難いことです。人脈は自分で作っていくものだということを、直に学びました。経営者にとってとても重要なことだと思います。

CZ:お客様や周りにいる人たちを大切に思う気持ちが、結局危機を乗り越えるときに大きな力となったということですね。ところで、その窮地を一緒に乗り切った社員さんは今もたくさんいらっしゃるのですか?

伊藤社長:今も我が社の中心となり、一緒に頑張ってくれていますよ。窮地に陥った時も、とても真面目にコツコツと頑張ってくれました。こういった姿勢は、モノづくりにはとても大切なことです。
そういえば、こんなボランティアの話を聞いたことがあります。
相手のために「してあげている」という気持ちの人は、辛くなるとやめていく。一方、「自分のためにしている」人は、ボランティアをすること自体が自分の心にとって幸せなので、何があっても最後までやり遂げることができる。結果、相手のことを考えてよいことができる、と。これは仕事においても同じことが言えます。
モノづくりが好きな人は、お客様のことを一生懸命考えて仕事をすることができるので、とてもいい仕事をします。ただ言われたことだけをやるのではなく、どうすればもっとよくなるかを常に考えながら仕事をする。それが大事なのです。そして、そうやって心をこめて仕事をしていくと自然とお客様とも心がつながることができて、いい関係を築くことができるのです。

CZ:すべての基本は「人」と「人」とのつながり。ということでしょうか。

伊藤社長:仕事もそうですが、友人関係においても同じです。お金をもらっても一緒に飲みたくない人、なんてことを言いますよね(笑)。そうではなくて、「お金を払ってでも一緒に飲みたいと思われる人間になりなさい」と社員には言っています。つまり「人を元気にできる人になりなさい」と。そして、「自分の人生を大事にしなさい」とも話しています。自分の人生を大事にできる人は、相手の人生も大事にできますからね。仕事でも友人関係でも根本的な考え方は全て一緒なのです。

CZ:そういう話をして、社員の皆さんとコミュニケーションを取られているのは素敵ですね。

伊藤統括部長:社長は毎朝、社員の顔を見て、声を聞き、元気がなければ「どうした?」と声を掛けています。社長にとっては何気ないことですが、これは社員にとってとてもうれしいことです。

CZ:やはり自分のことを気にかけてくれていると感じると、その人のためにがんばろうという気になりますね。