Club-Z特集:CRユーザーズフォーラムレポート

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

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CRユーザーズフォーラム レポート

セット機器/
プリント基板業界の最新トレンド


株式会社 産業タイムズ 電子デバイス産業新聞 
副編集長 野村和広 氏

2015.03.26

2015年3月13日 図研製品をお使いの設計メーカ様、基板メーカ様を対象としたセミナ「CRユーザーズフォーラム2015」が(株)図研 本社・中央研究所にあるホールで開催されました。そのセミナで、電子デバイス産業新聞の野村副編集長より、セット機器やプリント基板業界の最新トレンドと注目点についてご講演いただいたので、その内容をレポートします。

<講演の要約>

今回の講演では、今後の半導体・基板業界にとって注目すべき動向を各市場ごとに取り上げ、次のような内容を説明いただきました。

  • PC、携帯電話(スマートフォン含む)市場は、買い換え需要がメインとなる。中でも携帯市場は、最大市場の中国も今後買い替え需要に変わるが、ポスト中国市場の開拓の動きもでてきているので今後しばらくは有望。
  • 最近話題のウェアラブル市場は、ウォッチ型よりも単価が高いスマートグラス、特にエンタープライズ向けなど特定分野に特化した製品に要注目。
  • 自動車市場では電装化が一段と進み、特にコンパクトカーへの搭載が進む安全運転支援システム(ADAS)に注目。
  • ロボット市場では、中国の人件費高騰により製造業が自動化に動き始めているため、FA・工作機械に要注目。
  • 医療機器市場は、ますますコンパクトかつ高性能、高解像度なものが要求されてくるため電子部品業界への需要を創出。
  • IoT関連では、高性能のセンサーデバイスやデータセンターのサーバなど、さまざまな需要を生み出す可能性あり。
  • プリント基板は、パッケージ基板に大きな変革期が来ている。



■PC、携帯電話は買い替え需要に移行

Cz91_CRuser_001.JPG図1:クリックで拡大表示
図1は、ガートナーが発表した主要電子機器の出荷見通しです。
いわゆる一般的なノートPCや、デスクトップはあまり伸びません。代わりに、超薄型で軽く、デザインが洗練されたようなPCをはじめ、落としても壊れない頑丈な製品などのUltramobile Premiumが少し伸びるので、トータルでの成長は若干あります。大幅な伸びは見込めませんが、PCはまだ半導体の消費の4割弱を占めているので、これからも大きな市場であり続けることは間違いないと思います。

1年前まで「伸びる」と言われていたタブレット市場には、変調が来ています。昨年末(10-12月期)に米国系の調査会社IDC(International Data Corporation)が、四半期ごとのワールドワイドの出荷数を算出しました。それによると前年度比で初めてマイナス成長となりました。しかしこれは“今後伸びない”ということではなく、徐々に伸びが鈍化してくるということだと思います。

最後にスマートフォン(以下スマホ)を含めたモバイルフォンの市場ですが、出荷台数は、20億台くらいまできています。20億台というと世界人口の1/3くらいですので、今後伸びは鈍化し、買い替え需要がメインの市場になります。もちろんスマホはもう少し伸びるでしょうが、全体では鈍化傾向とみられます。
また、スマホとタブレットの中間くらいの大きさ(画面サイズでいえば4.5~6インチ弱)のファブレットが伸びてくると言われています。しかし、これが起爆剤になることはないでしょう。スマホとタブレットを持っていた人が1台で済ますということで需要のシフトが起こっているのだと思います。

低成長に入ったとは言っても、2015年もスマホはまだ2桁(10%増)成長が見込まれています。2014年の市場をけん引したのは、4億台前後出荷された中国です。全世界の出荷数が12億台超ですので、1/3を売り上げた大きな市場と言えます。しかし、さすがに4億台ともなると、ガラケイなどの携帯電話を含めたモバイル端末の普及率が9割いっているので、中国市場は間違いなくもう買い替え需要に変わってきます。これをうけ、携帯端末メーカはポスト中国として、インドやインドネシアの市場を本格的に開拓すべく動き出しています。

今期見通し10%増と述べましたが、中国には1億台くらいスマホが余っているのではないかというような指摘(注1)もあり、これが事実であれば大きな攪乱要因になります。
また、2014年に売れたAppleのiPhone6と、ファブレットのiPhone6 plusが今年はどうなるのかという問題もあります。iPhone6S(仮称)がどれだけ売れるのかにもよりますが、売れた年の翌年は売れないことが多く、今年は伸びないのではないかという人もいます。これらの点を考慮すると、2014年から2015年の伸び率が10%というのは少し楽観的かもしれません。



■ウェアラブルは普及するのか?


先日Apple Watchが発表されましたが、“ウェアラブル元年”という言葉に代表されるように去年から今年にかけてFitbitのようなリストバンドタイプの活動量計などのウェアラブル端末が少しずつ出てきています。
この市場は製品が小さいため出荷数が重要となり、未だ動きが読めないところがあります。それに加え、スマートウォッチはスマホと同じで電力消費量が大きい製品です。毎日充電する必要があることなど使い勝手の大変さが改善されないと、普及までには至らないかと思います。また、どんなサービスを提供できるのか、機能を明確にして消費者に訴えることも重要になると思います。

ウェアラブルでもう一つ話題なのはメガネタイプの、スマートグラスです。国内では個人ユースではなく、エンタープライズ向けなど特定分野に特化した製品が出てきます。セイコーエプソン(株)とEvana Medicalの医療向け(注2)などがそれにあたります。他社も、工場や病院での使用を前提に、例えばプラントなどで修理の故障箇所を特定し、その手順を示してあげたり、治療や手術などの支援が行えるような装置の開発を進めていると聞きますので、付加価値がありウォッチ以上に単価の高いスマートグラスの方に、まずは注目しておいたほうが良いでしょう。


注1:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150209-00066465-diamond-bus_all
注2:「Eyes-On Glasses