自動車のEMCに新たな要求
マイクロウェーブファクトリー株式会社
2014.06.19
皆さんこんにちは。1年ぶりですが、お元気でしたか?
前回の連載で「EMC測定の基礎」を8回に分けて説明してきましたので、EMCの基礎については、ある程度理解出来てきたと思います。(まだご覧になっていない方はコチラをご覧ください。)
今回は、自動車のEMCについて、以前より厳しい試験が求められる動向があるので、そのあたりについて簡単にお話してみようと思います。
自動車に誤作動は許されない
自動車を運転中、急にスピードが上がったり、ハンドルが利かなくなったりしたら怖いですよね。もちろんそのようなことが絶対に無いよう、自動車メーカさんは細心の注意を払って設計している訳ですが、万が一そのようなことが起きたらそれは大変なことです。
ずいぶん前ですが、携帯電話をダッシュボードの小物入れに放り込んで運転していると、AMラジオに突然 ”ジージー”と言うノイズ音が入り、その後で携帯電話の着信音が鳴ると言う経験をしたことがあります。
ラジオの”ジージー”音で電話がかかってくることを察知できてしまった、ということです。つまり携帯電話の着信が自動車のAMラジオに妨害を与えたわけですが、これが他の電子回路、例えば”走る/曲がる/止まる”を制御する部分に影響を与えたりしたら、これは大問題となります。
”EMC測定の基礎”第6回でもお話しましたが、EMC評価は大きく下図のように分類されます。
これは家庭やオフィス等で使用される民生用機器(パソコンや複写機など)も自動車も同じです。
とりわけ自動車の場合、誤動作すると人命にかかわる事故に直結しますから、走行中にすれ違う他の車に影響を与えない、影響を受けない、そして地上で飛び交うあらゆる電磁波の影響を受けないようにしなければなりません。ですから自動車は、それはそれは厳しいEMC試験をするのです。
鍵を握るのはECU
いまや自動車は、電子機器の集合体と言えるほど、"数多くの電子回路ユニット(Electrical Component Unit,ECU)"が搭載されています。このECUが、他のECUに影響を与えない、または影響を受けないようにすることも非常に重要です。
自動車の中でECU同士が悪影響を与えあっていたら、まともに走れませんよね。
ですから自動車の場合、まずはECU単体でEMC評価を行うのが一般的な手法ですが、
これもまた厳しい試験が待ち受けています。
どの位厳しいか、感覚的なお話ですが一例(電界強度)を示します。
例)放射イミュニティ試験
(製品に電磁波を照射し、誤動作の有無を評価する試験 EMC測定の基礎 第5回 参照)
パソコンなどの試験レベル:3V/m、10V/m
ECUの試験レベル:200V/m
一該に比較はできないのですが、”桁が違う”感じは分ってもらえると思います。
またある特定の周波数範囲ですが、600V/mと言う要求もあります(下の写真が専用のアンテナです)。
もうびっくりです。しかしこのような試験をクリアして初めて自動車に搭載することが可能になるのです。なぜこれほどまでに厳しい試験をする必要があるかと言うと、これは世の中にこのような環境が存在する、と言うことなのです。例えば、海外の軍事レーダー近傍では、まさにこの様な強さの電磁波が観測されるのです。
このようなことから最近、国内の自動車メーカにおきましても、600V/mの電界強度でのレーダーパルス試験の要求が追加される動きがあります。