Club-特集:実装軽視に物申す!

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

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実装軽視に物申す!

第1回:JISSOでもう一度日本が勝つ道 キーワードは「3D」と「規格化」

福岡大学 工学部 電子情報工学科教授・工学博士
友景 肇


2011.07.21

■半導体で日本と海外で起こったこと

日本の経済がバブル崩壊した後、空白の10年間という時が流れ、これまでに幾つものモノづくりによる日本再生論を聞かされた。しかし、評論家の意見には関係なく、世界で半導体産業が大きく成長していく中、日本の比重は低下し続けてきた。半導体に関係する日本中の誰もが、できること、できないことはあるにしても、何とか盛り返すことはできないかと考えているに違いない。半導体実装に関する無責任な評論を行うのが、ここでの目的ではない。これまで自分自身でやってきたことを踏まえて、一つの勝つ道を説明したい。

日本の半導体生産は1980年代後半にアメリカを抜いて世界一になった。DRAMを中心にして半導体生産で世界を席巻した。しかし、DRAMは16Mb以降は韓国メーカに勝てなくなり、システムLSIと言われる付加価値の高いICへシフトしようとしたが、海外で半導体製造の水平分業が始まり、デザインハウスやファンダリ、テストハウスなどが出現した。台湾などでファンダリが半導体生産量を大きく伸ばして行くなか、垂直統合式を完全に捨てることができなかった日本の電気メーカは、システムLSIで収益構造を作るのに苦心し、2000年代に電気メーカの統合、縮小路線に入っていった。

半導体をシステムに組み上げる土台となるプリント基板も、国内での半導体を使った家電製品が世界中に輸出されていた時代は、生産量も技術レベルも圧倒的に日本が高かった。しかし、家電製品及びその部品の生産が中国などに移ると、必然的にプリント基板生産の中心も中国に移っていった。現在、中国には日本の倍の約500社のプリント基板メーカがあるという。トップクラスは、日本では考えられない規模の工場を建設し、最新鋭機械を導入する。日本の企業をリタイヤした優秀なエンジニアを雇えば、情熱をもって中国人に技術を伝授し、すぐにプリント基板は日本と遜色ないものとなっていく。半導体同様に、地球儀の上で、プリント基板製造の重心点も、日本から既に西にずれているのである。

半導体製造技術は、Mooreの法則に代表されるように、年とともに素子の微細化と高集積化が進んできた。1つの半導体チップ上にシステムを構築するSoC( System on a Chip )技術では、一億個以上のトランジスタが集積可能で、素子設計のルールも20nmまで小さくなっている。しかし、SoCビジネスの限界もある。微細化の技術的な限界だけでなく、巨大な設備投資とそれを回収できるアプリケーションが限られることである。一方、SoCを補完する技術として、 SiP(System in a Package)技術がある。

図1に示すように、小型プリント基板の上に複数のチップを実装してシステムを構築するSiP技術は、異種半導体でシステム構成が可能で、既存のチップを使えば短納期での開発が可能となる。また、MEMS(メムス、Micro Electro Mechanical Systems)デバイスや光デバイスと組み合せた新しい機能モジュールが構成できることから、More than Mooreを実現する技術として注目されている。高密度SiPはチップを多段に積層することによって実現されるため、3D Integration Technologyであり、日本では3次元実装技術と呼ばれている。

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図1 SoC vs SiP

日本の半導体産業が花盛りを過ぎた1990年代でも、日本はLSIの設計は駄目でも製造は強い、と言われた。特に後工程と言われる半導体実装に関しては、日本人の中での評価は低くとも、技術レベルは圧倒的に高いと自他ともに認めていた。ところが近年、実装を中心にした半導体の製造技術開発が、日本以外で大規模に行われており、この分野でも日本のモノづくりが危うくなりつつある。次に、ヨーロッパとアジアでの実装関係の取り組みを見てみよう。