ちょいモテ設計者への道

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

Club-Z劇場

新人岡田君のちょいモテ設計者への道

【第9回】EMC設計とは? ~一難去って、また一難~

編集:Club-Z編集部
監修:岡本ESA 事務所/岡本 彬良

2008.12.18

―前回までのあらすじ―
試作基板の動作トラブルに巻き込まれた岡田君。今後のためにと、SIの特訓を受ける。優しい加瀬さんの指導もあって、SIはバッチリ!と油断していたら・・・災難は忘れた頃にやってくるようで・・・


「何んや、この試作品は?話にならへん!誰が設計したんや!!」

身長190cmはあると思われる大柄の男が、立ち上がりカンカンに怒っている。いや、激怒している。その怒号は建物の中をワンワンと響き渡っていった。。。それはまるで眠っていたゴジラを起こしてしまったような光景だった・・・

彼は小輪井剛憲(こわい たけのり)。オレンジ電機のEMC評価担当者だ。
オレンジ電機の敷地内にある本館の建物から少し離れた場所にあるEMC測定サイト。そこで彼は出来上がったばかりの試作品を評価していたのだが、どうもおかしい。多くの周波数ポイントでノイズが目標の規格値を大幅に超えているのだ。通常の社内規定に従って設計をしていれば、不合格になることはあってもこれほど悪い結果になることはあり得ない。測定が進めば進むほど、その結果の酷さに小輪井はイライラしていった。
測定が終わり、原因調査をするため、試作品の筺体を開けて中の基板を確認してみると・・・

「な、なんやこのひどい設計は!なんで、誰もここまで気付かへんかったんや?こんなもん出荷できへんやないか!」

原因調査が進むにつれ、設計者のミスが次々と露呈していった。
小輪井の怒りは頂点に達していた。。。


「ハックション!!!」
「どうした、岡田。風邪でも引いたかぁ?オレにうつすなよぉ~」

平和な朝。気が抜けるような声で土田さんが言う。でも、なんだか物凄い悪寒が走った。徹夜明けに特訓続きで、風邪でも引いたかなぁ・・・
とその時、ゆったりとした空気をかき消すような勢いで回路設計課のドアが開いた。

「おい!プロダクトXの回路設計担当者は誰や!」

プロダクトX?あっ!! 元々、先輩がやっていた設計だったんだけど、その先輩が突然辞めることになり、急遽オレが引き継ぐことになった製品だ・・・実は事情がよく分かってなかったんだよなぁ・・・

「は、はい!私です・・・」

慌てて手を挙げ、立ち上がるオレ。

「お前か!名前は!」
「お、岡田です。岡田潤です!」
「岡田!会社で決まっとる設計標準書、きちんと確認して設計したんか!?」
「えっと・・・」
「設計標準書の中にEMCの項目があるのは知っとるな!?!」
「その設計標準書の中に、①どの設計段階でどこをチェックしたらええのか、②誰にどんな情報を伝達しておけばええのか、ちゃんと書いてあったやろ?」
「は、はい・・・」
「はい~っ? ほんま、ちゃんと確認したんか!?ワシが基板を確認した限りでは、お前の設計は、標準書の中に載ってるEMCの項目が全然守られてへんかったやないか!」
「す、すみません!!SIの処理にちょっと手間取ってしまったもので・・・でも、、、設計標準書はある程度守って設計したつもりです。ただ・・・設計標準書に従ってどう修正すれば良いのか分らなかった部分があったので、少し不安はあったのですが・・・でも、多少評価結果が悪くても、その時に対策すれば何とかなる程度のものだと思いましたので・・・」

しまった!!余計な事を言っちゃった!!

「この、ドアホがーーーっ!!!」

突然入ってきたその男の顔はみるみる赤くなり、そして、噴火した。

「土田、会議室借りるで!!岡田、設計標準書持ってちょっと来んかい!!!」
「小輪井、ちょっと待て・・・」

もう何もかもが手遅れな感じだった・・・土田さんが何か言いかけたのだが、小輪井さんの耳には届かなかったようだ・・・そして、申し訳なさそうにオレの方を見て手を合わせる土田さん・・・えーーーっ!?!? 諦めないで下さいっ!!(涙