Club-Z劇場
新人岡田君のちょいモテ設計者への道
【第7回】SIとは?① ~トラブル発生!~
2008.10.30
そして、一枚の役割分担表を見せられる。
「あれ・・・?うちの会社には専任のSI担当者がいますよね・・・?ということは、回路設計者の俺達が何かする必要はないのでは・・・」
そうじゃないだろ、という表情をする土田課長。
「確かに彼らには回路設計者のSI/EMC対策を支援する役目を担ってもらっている。だけど、だからといって全て丸投げして終わり、という訳にはいかないんだ。最終的に上がってきたプリント基板を評価するのは俺達設計者自身だろ?何か問題が発生した時に、問題の箇所が分からない、自分で設計したものがよく分からない、というのでは設計者としてマズイと思わないか?」
「はい・・・おっしゃる通りです。。。」
なんだか自分の無責任な発言が恥ずかしくなってきた。
「SI/EMCの知識は、問題発生後にどう修正すればよいかを検討するためにも重要だが、回路設計の段階で、SI/EMCの問題を意識して設計を行うことによって、より品質の良い基板を作ることが可能になる。もちろん、この領域の問題はとても専門的なものだから、俺達回路設計者が全てを理解しなくてはいけない、という訳ではない。そのためにSIの専任者がいるんだから。でも、ポイントはしっかりおさえて欲しいんだ。今回のトラブルも設計段階でもう少し注意を払っていれば回避できた問題だった。」
確かに・・・
「という訳で、岡田には今日からSIの特訓に入ってもらう。本来ならきちんとした技術教育カリキュラムがあるんだが、昨日のようなことがまた起こると困るので、今すぐ受けてもらうことにした。レクチャーはSI担当の加瀬君にお願いしておいたから。忙しい彼には貴重な時間を割いてもらってるんだ。しっかり勉強してこいよ!」
「はい!」
なんだかとても重要なミッションを任された気分だ。頑張らないと!
加瀬さんはCAD管理室の技術支援グループにいるらしい。久しぶりのCAD管理。(と言っても数日前にお世話になったばかりだけど 笑) 篠原さんいるかなぁ?自然と顔が緩む。
「失礼します!」
「あら、岡田君、また来たの?今日は何の用?」
はっ、篠原さん!こんなにすぐに会えるなんて!!今日もお美しいです、篠原さん。
でも、なんて冷たい反応・・・
負けるな、オレ!(涙
「ど、どうも。。。あの、技術支援の加瀬さんいらっしゃいますか?」
「あら、加瀬君に用事なの?っということは、今日からSIのお勉強?岡田君、案外期待されてるのね~。」
えっ!?!?まじですか!?!?ちょっとテンションあがっちゃいますよ~。
「あそこのジャングルの中にいるのが加瀬君。無口だけど基本いい人だから。でも、聞きたいことは自分からハッキリ聞かないとダメよ~!徹夜明けで辛いでしょうけど、気合入れて行ってきなさい!」
徹夜明けって何で知ってるんですか!?と思っていたら、背中をバシっと叩かれた。
篠原さんの指差す方向に、たくさんの植物に囲まれた席に座っている加瀬さんがいた。
(次回へつづく)
●監修者プロフィール
岡本 彬良 (おかもと あきら)
1948年生まれ。 1969年、呉工業高等専門学校 電気工学科卒業。同年、松下電器産業㈱入社。 電気設計、機構設計、IC開発に従事。 1980年、コンピュータの判る設計者としてプリント基板CAD導入立上げに参画。以来、機構CAD・社内LAN・サーバ管理・LA・PDMと技術部門の情報システム全般に担当範囲を拡大。
2005年、同社を退職。
現在、岡本ESA事務所を開設し、プリント基板設計・技術情報システムの著述・コンサルタントとして活動中。エレクトロニクス実装学会会員。神奈川県 技術アドバイザー。
著書として、「よくわかる プリント基板回路のできるまで」「よくわかる プリント基板実装のできるまで」(ともに日刊工業新聞社)等がある。