Club-Zコラム第28回

印刷用表示 | テキストサイズ 小 | 中 | 大 |


clubZ_info_renewal.jpg

| HOME | コラム | グローバル化は設計・製造の仕組みを見直すチャンス | 第28回 | P1 |

更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

コラム


グローバル化は設計・製造の仕組みを見直すチャンス

【第28回】トレーサビリティの保証がない設計では不具合はなくならない

株式会社RDPi  代表取締役 石橋 良造


2010.01.21

執筆者プロフィール
九州大学卒業後、日本HP入社(入社当時はYHP)。電子計測器、半導体計 測システムの研究・開発に従事した後、社内の開発製造革新プロジェクトで、 電気・電子設計およびソフトウェア開発のための統合システムを企画,開発。
この間に、日本HPにおけるソフトウェア・プロダクティビティ・マネジャー を兼務。日本HPの会社分割によりアジレント・テクノロジーに移籍した後、 この経験をもとに社外に対してコンサルティングを実施。その後、株式会社 RDPi を設立。 これまでに、家電、通信、電子機器、自動車業界に数十社の実績を持つ。ビジネスコンサル系とは一味違った開発現場やツールにも精通するコンサルタント。
著書(共著)に「デザイン プロセス イノベーション」「ザ・チェンジ」(どちらも日経BP)。また「日経ものづくり」での連載や「ソフトウェア開発環境展」専門セミナーなどのセミナーも多数実施している。

●Email :  ishibashi@rdpi.jp
●株式会社 RDPi : http://www.rdpi.jp/
●著書 : book1.JPGbook2.JPG


前回までシステム設計について、その基本の考え方や実施方法について解説してきました。多くの組織で、システム設計は(少し極端に言うと)できる人だけの作業になっており、設計の最上流工程であるにもかかわらず、その妥当性や正当性を検証することは難しい状態になっています。システム設計を担当した人にしかそのアウトプットの意味や背景がわからない状態というのは非常に危険ですから、前回までで紹介した考え方や実施方法を参考に、システム設計のアウトプットの妥当性や正当性を検証する方法を、開発現場に合わせて具体化していただきたいと思います。

今回のテーマであるトレーサビリティというのも、システム設計と同じように、設計における重要な概念であるにもかかわらず、多くの開発現場で、属人的、そして、暗黙的な作業となっています。どんなにがんばって設計書を書いてレビューをしても、設計の不備による不具合が思ったようには減らないという場合は、設計におけるトレーサビリティが保証されていないことが原因であることが少なくありません。

トレーサビリティという単語は、BSE問題や産地偽装問題などの事件に関連してニュースなどを通じて馴染みのあるものになりました。この場合は、対象となる物品の流通履歴を確認できることを意味しています。同じ概念ですが、今回テーマとしたい設計におけるトレーサビリティは、要求仕様(要件)が製品として実装されるまでの各工程における入力と出力が正しく変換されているかどうかの性質(追跡可能性)を意味します。

トレーサビリティが保証されていない設計工程の場合、もともとあがっていた要件が過不足なく回路や機構、ソフトなどに実装されているかどうかを確認する手段は、製品としてくみ上げた後の最終評価だけになってしまいます。設計の途中段階で抜けてしまうと最終評価まで発見できないし、最終評価で発見できなければ市場不具合となってしまうわけです。設計トレーサビリティの保証がない開発現場では、最終評価に多大な時間と人手をかけていることが多いのですが、このような開発源では、最終評価でしか要件や設計の抜け・漏れ・不備を見つけることができないことが原因のひとつになっているのです。

それでは、設計トレーサビリティについて詳細を見てみましょう。