Club-Zコラム第25回

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

コラム


グローバル化は設計・製造の仕組みを見直すチャンス

【第25回】品質特性はシステム要件のカギ

株式会社RDPi  代表取締役 石橋 良造


2009.09.30

それでは、機能以外にも注目してシステム要件をリストアップするにはどうしたらよいでしょうか? そのための手法として FURPS+ を紹介したいと思います。

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図71 に示しているように、FURPS+ とは Functionality(機能性),Usability(使用性),Reliability(信頼性),Perfomance(性能),Supportability(保守性)の頭文字を並べて、さらにその他の属性という意味で + を付け加えたものです。「ファープス プラス」と発音します。FURPS+ はシステム要件を考えるときに、機能 (F) 以外に考えるべき品質特性を忘れないようにガイドするものです。「ファープス プラス」と覚えておけば常に意識することが可能になるはずです。

この自販機の場合 FURPS+ はどのようになるでしょうか。機能 (F) については図70 にリストアップしたので、残りの URPS+ について考えてみましょう。

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FURPS+ のリストアップができたらば、その一つひとつを機能やサービスと同じように要件としてブレークダウンし整理します。このとき、性能 (P) は機能 (F) としてブレークダウンできたり、信頼性 (R) は性能 (P) としてブレークダウンできたりすることに注意してください。たとえば、図72 の 信頼性 (R) の一つである「停電のときには投入したお金を返却口に返しその旨を表示する(伝える)」について考えると、次のように機能(F)にブレークダウンすることができます。

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これらの機能はすべて停電時のシステムの機能ですから、「停電時の商品とお金の保証」という新しいシステム要件として追加しておきます。同様に、信頼性(R)の他の項目についても、また、使用性(U)や性能(P)などの他の品質特性についても同様に一つひとつ検討してシステム要件に加えます。

この作業はシステム設計の一部ですが、開発現場によっては要件定義とか要件設計というように呼んでいることもあります。どのように呼んでいるにせよ、大切なのは図73 に示すような考え方で、機能以外の品質特性についても漏れなくリストアップすることです。そして、FURPS+ を使うと機能以外の品質特性について考慮することができ、漏れのないシステム要件を作ることが容易になるわけです。

くどいようですがもう一つ注意があります。開発現場の中には非機能要件としてシステム要件を整理しているところもありますが、その場合でも性能にしか注目していないことが多いということです。しかし、FURPS+ で示したように、システム要件を考える際には品質特性全般を考慮することが重要です。システム設計の最初のインプットであるシステム要件が正しくなければ、その後のシステム設計作業を正しく行うことはできないのです。そのためには、FURPS+ のような手法を使い、十分な時間をかけてシステム要件を整理することが大切です。