コラム
グローバル化は設計・製造の仕組みを見直すチャンス
【第22回】品質の仕組みとは
株式会社RDPi 代表取締役 石橋 良造
2009.05.28
これまで ISO 9001 を例にした話になっていますので、ここで PMBOK (Project Management Body of Knowledge) で品質のマネジメントについても見ておきましょう。
PMBOK では、「品質は計画により達成されるもの」という考えのもと、プロジェクトの品質を管理・実現するための手順・プロセス・技法について言及しています。やはり、計画の重要性を強調しているわけです。そして、プロジェクトにおける品質とは、成果物が要求と一致しており使用に適していることと定義されており、そのような成果物を作ることを保証するために、プロジェクトの計画を立て、その実行の進捗を継続的に把握し、問題があれば改善していくことがプロジェクト品質マネジメントだと言っています。品質マネジメントをプロジェクトとしての活動として表現していることが特徴的です。具体的には、品質方針、目標および責任を定め、それらを達成するために、以下のような品質計画、品質保証、品質管理の3つのプロセスを実施することを品質マネジメントとしています。
- 品質計画
- プロジェクトの計画プロセスにおいて品質を保証し改善してくための組織構造、責任、手順、プロセス、および、経営資源を定義したもの
- 品質保証
- プロジェクトの実行プロセスにおいて、プロジェクトの成果物とプロセスが適切な品質かどうかを保証するために行う活動
- 品質管理
- プロジェクトのコントロールプロセスにおいて、プロジェクトのあらゆる活動結果が適正かどうかを判断するために、結果をモニタし問題があれば必要に応じて対応していくこと
品質マネジメントを計画、実行、監視・コントロールと定義しているところがわかりやすいと思いますし、ISO 9001 とも大きく違いはありません。ただ、「品質保証」の意味には注意が必要です。PMBOK はあくまでもプロジェクトというスコープを前提としたものですから上記の定義で問題ありませんが、ISO 9001 では、品質保証を ISO 9001 の仕組みそのものととらえています。品質保証のためのマネジメントシステムを記述したものが ISO 9001 だからです。ただ、品質管理が十分にできてないために検査工程で手直しをするようなことを、ムダな品質保証業務といったりもしますから、品質保証を仕組み(システム)と考えるか、業務(アクティビティ)と考えるかで違う意味で使ったりもします。
ここでは、品質保証は仕組み(システム)を指すものとします。品質保証とは、品質を満足(保証)するための開発の仕組みを作ることであり、品質保証とは開発現場がその仕組みを正しく運用することまで含めた仕組みと考えます。
したがって、品質を保証するためのマネジメントの仕組みが品質保証であり、実際に品質をマネジメントすることやその活動を品質管理と考えます。どのような仕組みを構築するにせよ、品質保証の仕組みと整合がとれていること、そして、構築した仕組みで品質管理ができることが必要になります。
仕組みとして品質保証を考えるときに、注意が必要なことが何点かあります。そのひとつがマトリクス体制における品質保証の仕組みです。図64 のようなマトリクス体制、あるいは、これに近い体制をとっている製品開発組織は少なくありませんが、前述の ISO 9001 や PMBOK で説明されていることだけでは、このような組織体制での品質保証の仕組み作りは難しい面があります。
さて、マトリクス体制での品質保証や品質管理の話をはじめたいところですが、長くなってきましたのでこの話題は次回にしたいと思います。次回までに、何が問題で、どのような対応が考えられるのかを皆さんも考え見てください。
では、次回もお付き合いください。