コラム
グローバル化は設計・製造の仕組みを見直すチャンス
【第16回】成功パターンを基準にするのが進捗管理の精度を上げる
株式会社RDPi 代表取締役 石橋 良造
2008.11.27
まず、製品開発プロジェクトにおける適切な計画(見積もり)とはどんなものか考えてみてください。
製品開発は1年程度の期間で開発し、商品としてマーケットにリリースして、顧客に買ってもらうことで利益をもたらすことを要求されています。したがって、製品開発プロジェクトにおける適切な計画とは、どこかのテキストにかかれてあるような理想でもなければ、できると思っていない顧客や営業から与えられたスケジュールでもありません。できるという確信につなげることができるのは、これまでの自分たちの成功パターンに乗っ取った開発になっている計画ではないでしょうか。それでも条件を整えるのは大変ですが。
少なくとも、自分たちがこれまでやったこともないことを計画にしても、それができる保証はありません。結果として奇跡的にできることはありますが、その奇跡にかけるという判断もあるでしょうが、それはギャンブルといっていいでしょう。製品開発でギャンブルをしても良い状況はかなり限られているはずです。
したがって、自分たちの成功パターンが明らかになっていて、それに従って計画を作成することができれば、計画の妥当性を議論することも容易になりますし、成功の確率は高くなると考えられます。基準モデルとは、このような考え方にもとづいて作成した、自分の組織の成功パターンを数値化したものの集合です。
現実には、すべてのプロジェクトが自分たちの成功パターン通りにできることすら簡単なことではありません。個々のプロジェクトが目指すべきは、まずは、成功パターンにしたがった開発にすることです。すべてのプロジェクトが成功パターン通りに開発できれば組織としての開発力は格段に向上します。これが仕組み化のねらいです。
そして、実際の開発組織では成功パターンが明確になっていないことが多く、成功パターンを誰もが参照できる定量的なモデル(基準モデル)として整理することからはじめる必要があります。図43 は基準モデル作成の流れを示しています。
最初にやることは、すでにあるプロジェクトの記録からできるだけ多くのデータを拾い出すことです。そして、成功したプロジェクトとそうでないものを層別し、成功データの傾向を分析します。そうすると、必ずあるパターンが存在することがわかります。このパターンを定量的に表現したものが基準モデルです。基準モデルはひとつのデータではなく、定量データの集合であり、その中には、ただの数値もあればグラフで表すような数値セットになっているものもあります。
一度、基準モデルができれば、プロジェクトが終了するたびに基準モデルを見直します。成功のレベルは段々と高くなるはずですから、成功パターンである基準モデルは常に見直ししておくことが大切です。たとえ成功レベルが下がったとしても同じです。継続的に見直しをして、基準モデルが常に自分たちの成功パターンをあらわすようにしておく必要があります。
上記の最初のステップができないという場合があるかもしれません。そういうときはご相談ください。基準モデルを作る方法は必ずあります。とにかく作って、基準モデルからプロジェクト計画を作成し、プロジェクトが終わったら基準モデルを見直すというサイクルを一日でも早く回すことが大切です。