コラム
グローバル化は設計・製造の仕組みを見直すチャンス
【第9回】登山ルートの作成は仕組み構築の設計作業
株式会社RDPi 代表取締役 石橋 良造
2008.04.17
これで、解決すべき根本原因の全容が明らかになりました。次にやることは、これらの根本原因を解消することができる具体的な対策を選び、実際の効果を推定することです。この段階でやっと、ツールやシステム、手法・技法などの調査や検討が必要になります。
図23 は、先ほどの根本原因を否定文ではなく肯定文にすることで、対策方針の表現にしたものです。対策方針にしたがって具体化した対策(例)も記述しています。
個々の対策について具体的な内容には触れませんが、どの開発工程の効率化に寄与するのかを図24 に紹介しておきます。また、これらの対策を実施することによって、開発現場がどのような状態になるのかも書いておきましょう。
- 試作回数が1回削減(2Sまでで顧客認定完了)
- 設計開始時には直前の試作評価は完了している
- 顧客対応技術者はほとんど客先常駐で仕様打ち合わせを実施
- プロジェクト管理者は複数の開発を同時に見ている
- 再利用モジュールや技術情報の検索ノウハウが共有されている
- 差分開発により設計、評価が効率化している
- 製造からの指摘(製造性不具合)は大幅に減っている
- 他モデル開発も含めて柔軟かつ混乱の少ないメンバーアサインが実施されている
- 設計部門全体の開発状況をリアルタイムに把握している
- 品質保証部門の管理下で改善活動が継続的に実施されている
この段階で、考えた対策に適した使い方ができるかどうかの観点で、ツールやシステム、手法や技法などを特定します。「評価工数が大幅削減」「充実したプロジェクト管理機能」などのキーワードで判断したり、提供している機能や仕組みの豊富さで判断するものではないことは、いうまでもないと思います。
対策効果は、これも詳細は省略しますが、図25 左グラフに示すように開発効率をほぼ2倍にすることが可能だと試算できました。もし、この段階で開発効率2倍が未達であれば、別の対策を検討する必要があります。また、右グラフは試作から量産までの各段階の工数がどのように減るのかを示しています。目指すべき開発の姿が明確になっています。
この段階では、システムや技法などが特定でき、対策実施のために必要となる費用も概略把握できます。場合によっては、予算との兼ね合いで対策の取捨選択を検討する必要も生じます。その場合は、対策ごとの工数削減効果と必要になる費用とのバランスで取捨選択することになります。そのためには、図24 の詳細データが必要になりますが今回は省略します。