Club-Zコラム第8回

印刷用表示 | テキストサイズ 小 | 中 | 大 |


clubZ_info_renewal.jpg

| HOME | コラム | グローバル化は設計・製造の仕組みを見直すチャンス | 第8回 | P1 |

更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

コラム


グローバル化は設計・製造の仕組みを見直すチャンス

【第8回】現状課題とその原因分析は目標達成のための登山マップとコンパス

株式会社RDPi  代表取締役 石橋 良造


2008.03.27

執筆者プロフィール
九州大学卒業後、日本HP入社(入社当時はYHP)。電子計測器、半導体計 測システムの研究・開発に従事した後、社内の開発製造革新プロジェクトで、 電気・電子設計およびソフトウェア開発のための統合システムを企画,開発。
この間に、日本HPにおけるソフトウェア・プロダクティビティ・マネジャー を兼務。日本HPの会社分割によりアジレント・テクノロジーに移籍した後、 この経験をもとに社外に対してコンサルティングを実施。その後、株式会社 RDPi を設立。 これまでに、家電、通信、電子機器、自動車業界に数十社の実績を持つ。ビジネスコンサル系とは一味違った開発現場やツールにも精通するコンサルタント。
著書(共著)に「デザイン プロセス イノベーション」「ザ・チェンジ」(どちらも日経BP)。また「日経ものづくり」での連載や「ソフトウェア開発環境展」専門セミナーなどのセミナーも多数実施している。

●Email :  ishibashi@rdpi.jp
●株式会社 RDPi : http://www.rdpi.jp/
●著書 : book1.JPG    book2.JPG

前回、設計部門における仕組み構築の道のりは、ゴールに向かう一本道なのではなく、いくつものルートがある山登りと同じであるとお伝えしました。これは、製品、技術、設備、設計者などが設計部門ごとに固有であり、現時点の開発の仕組み(登山のスタート地点)は、どの設計部門をとっても同じものは存在せず、ゴール(頂上)までのルートも設計部門によって違うものになるからです。だからこそ、ルート選択そのものが目標達成のための重要な要素となります。

これは、ツール、システムのメーカーやベンダーが提示するゴールや導入プランにしたがって仕組みを構築することは、大きなリスクを抱えることを意味します。目指すべきゴールが高ければ高いほど、固有の綿密な登山計画を立てる必要があるはずですし、完全には人任せにできないはずです。

それでは、前回の事例(図20)を使って登山計画を立ててみることにしましょう。最初にやることは、スタート地点(設計部門の現状)を正確に特定することです。そのためには、図20 に示すようにプロジェクトの工数分析を行い、課題を整理することが有効です。事例としてあげている設計部門の課題は次のように整理できます。

  1. 繰り返し実施する試作が同時作業となっており、設計の時期に直前の試作の評価を並行実施している。そのため、設計も評価も中途半端になってしまう。
  2. 開発試作は4ヶ月間程度のかなり工数を使う作業であるが、開発試作依頼や顧客対応など、様々な作業を設計部門が請け負っている。そのため、本来の構想設計がおろそかになってしまう。
  3. 2Sという試作期間にもっとも多くの工数がかかっており、設計作業、評価作業ともに最大の工数が必要になっている。一時的な設計者増員は困難であり、そのため、設計者の負担は大きなものになる。
  4. 開発期間を通じて、設計作業、試作関連作業、評価作業が同時に実際されており、開発の状況把握やマネジメントは容易ではない。そのため、完成度の確認は開発の最後になってしまい、修正の際に大きな手戻りが発生する。


ここであげた課題を解決することなしには、目標の開発効率2倍を達成することは考えられません。したがって、この課題を解決する対策を検討することが、目標達成のための登山ルートを検討することになります。