Club-Zコラム第2回

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

コラム


グローバル化は設計・製造の仕組みを見直すチャンス

【第2回】新製品の設計に取りかかることができない技術者

株式会社RDPi  代表取締役 石橋 良造


2007.07.20

執筆者プロフィール
九州大学卒業後、日本HP入社(入社当時はYHP)。電子計測器、半導体計 測システムの研究・開発に従事した後、社内の開発製造革新プロジェクトで、 電気・電子設計およびソフトウェア開発のための統合システムを企画,開発。
この間に、日本HPにおけるソフトウェア・プロダクティビティ・マネジャー を兼務。日本HPの会社分割によりアジレント・テクノロジーに移籍した後、 この経験をもとに社外に対してコンサルティングを実施。その後、株式会社 RDPi を設立。 これまでに、家電、通信、電子機器、自動車業界に数十社の実績を持つ。ビジネスコンサル系とは一味違った開発現場やツールにも精通するコンサルタント。
著書(共著)に「デザイン プロセス イノベーション」「ザ・チェンジ」(どちらも日経BP)。また「日経ものづくり」での連載や「ソフトウェア開発環境展」専門セミナーなどのセミナーも多数実施している。

●Email :  ishibashi@rdpi.jp
●株式会社 RDPi : http://www.rdpi.jp/

製造移管(工場引継)の実情は把握できたでしょうか? 具体的な声を収集すると実に様々な問題が起きていることがわかったと思います。会社や組織によって違いはありますが、典型的な例をご紹介しましょう。

ここでの最多そして最大の問題は、製造移管(工場引継)のタイミングで、その製品が設計部門(技術部門)の手を離れないことです。開発規定上では、設計部門は製造移管のタイミングで次の製品開発に移行できるはずですが、現実は図4のように、工場出荷の直前まで設計部門が関与することになり、なかなか次の製品開発に取りかかることができないのです。

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製造移管後に、特定部品について必要数量を確保できない、ハンダ不良が頻発する、加工バラツキが収束しない、不合格検査項目が続出する、検査のための治具が機能しないなど、様々な問題が顕在化します。そして、問題が起きるたびに設計部門の技術者は工場に呼び出され、問題の把握と分析そして対策に追われます。

実際多くの会社・組織では、設計部門の技術者は製品開発に全責任を持っているのだから、トラブル対応は最優先で実施するようにと指示されます。ただ、設計部門は何よりもまず新製品開発(新製品開発着手)を最優先にするようにともいわれており、「最優先」といってもいくつもの「最優先」が存在することが多いのですが。

原因は製造移管時の設計完成度が低いからです。設計完成度が低くなっている原因は複合的ですが、ここでは試作の問題を指摘しておきたいと思います。

試作とはいえ実物を作るのですから、部品手配、図面作成、製作指示など、いわゆる製造関連作業が数多く発生します。多くの会社・組織では試作に関しては製造部門の協力はなく(製造移管前ですから)、設計部門が自ら交渉、手配、指示、問題対応などを行っています。さらに、顧客(もしくは営業部門)が試作の納期や数量を要求することが多く、その対応や交渉なども設計部門が行うケースが少なくありません。

こうして、技術者は設計完成度を上げることに集中できず、外部とのやりとりに忙殺されてしまいます。試作に伴う作業は実物を作ることに変わりないため、優先順位が高くなってしまうのです。そして皮肉なことに、設計完成度確保は優先順位が下がってしまいます。