Club-Zコラム第46回

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

コラム


同時にやるシクミづくりとヒトづくり。
やっと気づいた改革の本質

【第46回】一人ひとりのやる気の素を見つける

株式会社RDPi  代表取締役 石橋 良造

2015.05.21

今回は、製品開発にかかわる技術者のモチベーション向上の取り組みとして行ったコーチング事例を紹介したいと思います。

第42回より解説を続けているレジリエンスは、モチベーションとは強い関係があります。技術者は新しいことに挑戦する機会を与えてもらうとモチベーションは高くなる傾向がありますが、いつでも、誰にでもそのような機会を提供できるとは限りません。

技術者一人ひとりにとって大切なのは、どのような状況であっても、与えられた機会がどのようなものであっても、自分の成長につながるようにとモチベーションを維持しながら仕事に取り組むことであり、たとえ、苦境にあったとしても耐え抜くことです。技術者にはレジリエンスが必要とされているといえるでしょう。


技術者コーチングの特徴

今回紹介するのは、あるメーカーの技術者 20 人に対して、モチベーション向上を目的に個別にコーチングを実施した事例です。この組織では、マネジャーによる面談を実施したり、シニアマネジャーによる小グループの懇親会を開催したり、職場を明るくするための挨拶運動を行ったりしていたのですが、効果はあまり出ていませんでした。

技術者全員にとっているアンケートでも、 前年よりもモチベーションが低下したという割合が 30% もあり、さらに、70% の人が指示待ちでかまわないと答えていました。

この組織に限らず多くのメーカーで技術者のモチベーション向上は課題であり、マネジャーが技術者一人ひとりと面談し、仕事内容や成長のための取り組みなどを話し合うことも行われています。一人ひとりと個別に話をするのはとても良いことなのですが、上司と部下では利害関係があることや、コミットメントを求められること、そして、組織としての方針や目標を押しつけることなどの傾向があり、技術者の本音を引き出すのは難しく、モチベーション向上につなげることも容易ではありません。

この組織で実施した技術者コーチングは、技術の話ができる利害関係のない、コーチングの技術と経験を持つ第三者による、技術者一人ひとりの価値観や気づきを大切にした面談だという特徴があります。

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実はこの会社では、マネジャーに対して傾聴などのコーチング技術の教育なども行っているのですが、実践できるまでの経験を積むことや、利害関係がある中でマネジャー自身の意志や価値観の押しつけを避けるのは難しく、次に紹介する成果につなげることはできていませんでした。



技術者コーチングの効果

そこで、従来とは違う一人ひとりのモチベーション向上の取り組みとして、20 人のリーダーやリーダー候補を対象に、個別にコーチングを実施することになりました。運用ルールは原則、1人1時間のコーチング・セッションを3回実施すること、個別のセッション内容は上司を含め誰に対しても秘密とすること、毎回セッション終了時に簡単なアンケートをとることなどです。3回のセッションは次のような考え方で実施し、技術者自身が自分を変えるための行動を自ら起こすことが狙いです。

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ひとり3回の実施が基本でしたが、本人の希望により1回しか実施できなかった人もいれば、最高6回実施した人もいます。結果的に実施したセッションののべ回数は 71 セッションです。

セッション終了時のアンケートはこの取り組みの効果を分析するためのもので、モチベーションがどの程度向上したか、セッション自体の満足度はどのくらいだったのかなどを答えてもらいました。モチベーション向上の度合いは、まったく向上しなかったを「1」,非常に大きく向上したのを「10」として 10 段階で答えてもらいました。コーチング・セッションの評価も同様に、最低点1から最高点 10 までの 10 段階で答えてもらいました。

次に示すグラフは、モチベーション向上の度合いの割合とセッションの評価の割合です。「6」以上を十分にモチベーションが向上したと定義したのですが、その割合は全体の約 65 % になり、大きく向上したと定義した「9」以上も全体の約 30 % あり、技術者コーチングは一人ひとりのモチベーション向上に高い効果がありました。また、セッションの評価も非常に高く、一人ひとりの満足度は高かったといえるでしょう。

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